ChromeOS採用モデルも新たに投入 創業31年目を前に挑戦を続ける小松社長のこだわり:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)
ポストコロナ時代に入り、業界を取り巻く環境の変化スピードが、1段上がった。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。大河原克行氏による経営者インタビュー連載のマウスコンピューター 後編をお届けする。
PCをもっと身近に 人とPCをより結びつけたい
―― 小松社長は「品質」にこだわり続けてきましたが、ここはまさに地道な努力ですね。
小松 AFR(年間平均故障率)や初期不良率などの指標は着実に改善していますが、品質を高めるという取り組みは、まさに終わりのない挑戦ですし、何かをやったからといって、一気に改善できるものでもありません。地道な努力の繰り返しが品質を高めることにつながります。
品質は、自分たちだけでは高めることができません。パートナーを含めた連携も重要ですし、社員一人ひとりが仕事の質を高めることも大切です。PCの品質は、職人のモノ作りにつながるところがあると思っています。いい品質は、いい仕事からしか生まれません。
―― 30年間を振り返る中で、マウスコンピューターを成長させたエポックメイキングな製品を挙げるとすれば、どの製品になりますか。
小松 それぞれに思い入れがありますが、例えば、2002年に発売したキューブ型PCや、2004年のゲーミングPCブランド「G-Tune」のスタートなど、創業直後から新しいセグメントのPCを投入したことに加え、2011年からは、法人向けPCブランドの「MousePro」をスタートし、2016年にはクリエイター向けPCブランドの「DAIV」を開始するなど、着実に製品カテゴリーを広げてきました。
一方で、2003年ころから量販店での販売を開始したり、2004年にはMCJ(マウスコンピューターの親会社)が東証マザーズに上場したりするなど、経営面での強化も図りました(現在は東証スタンダード市場に上場)。
2006年に行ったiiyamaの吸収合併とともに、飯山工場を活用した国内生産の拡充の他、24時間365日のサポート体制を自前で構築し、さらに72時間以内での修理完了の実現体制を構築したことも、当社の歴史の中では大きな出来事だといえます。
―― “マウスコンピューター”の社名に込めた役割は果たすことができていますか。
小松 マウスコンピューターの「マウス」は、PC周辺機器のマウスからきています。マウスは、PCにとって当たり前の存在であり、同時に人とPCを結びつけるために、重要な役割を果たしています。
このような役割を果たす存在になりたいということから、マウスコンピューターという社名にしました。創業した30年前は、まだPCの価格が高く、誰もが購入できるというものではありませんでした。まずは手ごろな価格でPCを購入できるようにするところからスタートし、PCを初めて使う人にとって、特別感がないようにハードルを低くしました。
これが、人とPCを結びつける最初の要素でした。さらに、PCが普及していくに従って買い替え需要が増えてきましたから、買い替える際にも安心して使ってもらえる品質とサービスを提供することに力を注いできました。
時代によって、人とPCを結びつけるための課題や要件が変化していますが、当社が目指していることは変わりません。PCが人のパートナーとして寄り添い続けることができるようにするのが当社の役割であり、社名に込めた意味です。
―― 人とPCをより結びつけることを考えると、次のステップではAIが不可欠になりますね。
小松 ただ、当社が自ら生成AIを開発することは考えていません。そこには役割分担があると思っていますし、さまざまなパートナーと連携しながら、PCおよび周辺デバイスを使うお客さまに、AIをどんな形を提供できるかを考え、私たちはその上でハードウェアをしっかりと提供していくというスタンスになります。
とはいえ当社の事業において、どうしても必要となるソリューションやAIがあり、それを他社がやっていないという部分があれば、そこでは何かしらの手段を用いて取り組んでいかなくてはならないかもしれません。また、MCJグループとして、ソリューション領域で連携を図るといったことも考えられます。
今は、それが具体的な課題となっているわけではありませんが、私はハードウェア企業の中に、ビジネス形態が全く異なるソフトウェア事業を取り込むことはあまり得策だとは思っていません。AIが重要な役割を果たす時代においても、ハードウェア企業として何ができるかということを追求していくことを目指します。
―― AI PCの動きが注目されています。マウスコンピューターとしてどう取り組んでいきますか。
小松 AIに最適な処理ができるプロセッサを搭載したPCは、これからのトレンドになります。そこには積極的に取り組んでいきます。日本マイクロソフトのCopilotについても同様です。AIをしっかりと使えるPCに仕上げ、それを製品として提供することが当社の役割になります。
生成AIの登場によってAIが身近なものになりましたが、クラウドベースで生成AIが提供されている現状では、PCの需要を大きく後押しすることはないと思います。しかし、クライアントだけでAIが利用できる環境が整ったり、クライアントで処理をしてからクラウドにデータを送り込んだりといった用途が増え、それが標準化されればPCの需要を後押しすることになります。
スマホで使うよりもPCで使う方が答えを得る時間が短いとか、より適切な情報が得られるとかいうことになれば、PCの価値がさらに高まると思っています。
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