試して分かった「Core Ultra 200V」の実力! Intelの新型CPUはゲームチェンジャーだと思ったワケ 現行ノートPCとの決定的な違いは?(3/4 ページ)
Intelのモバイル向け最新SoC「Core Ultra 200Vプロセッサ」を搭載するノートPCが、いよいよ発売される。今までのIntel製CPUにはない特徴を多く備えた本製品の実像はいかほどのものか、「ASUS Zenbook S 14(UX5406)」のCore Ultra 258Vモデルを通してチェックしていく。
SoC(CPU)の性能は「メーカー次第」
ここ最近、Intelのモバイル向けCPU/SoCは「標準消費電力(PBP:Processor Base Power)」と消費電力の「上限値」「下限値」を定めた上で、実際の消費電力設定はPCメーカーに“お任せ”している。つまり、同じCPU/SoCを搭載していても、メーカーやモデルによってパフォーマンスに差が生じうるということだ。
この点はレビュー機が搭載しているCore Ultra 258Vも例外ではなく、Intelが定める消費電力設定は以下の通りとなっている。
- 標準:17W
- 下限:8W
- 上限:37W
今回レビューしているZenbook S 14(UX5406)では、ユーティリティーアプリ「MyASUS」で冷却ファンの回転モードを設定できるが、ファン回転モードに応じてSoCの消費電力の下限/上限設定が変わるようになっている。具体的には以下の通りだ。
- ウィスパーモード(最大ノイズ:25dBA)
- 最小:12W
- 最大:17W(純正標準値)
- スタンダードモード(最大ノイズ:32dBA)
- 最小:17W(純正標準値)
- 最大:22W
- パフォーマンスモード(最大ノイズ:44dBA)
- 最小:24W
- 最大:28W
- フルスピードモード(最大ノイズ:47dBA)
- 最小:28W
- 最大:33W
当たり前かもしれないが、より大きな騒音(≒ファン回転数)を許容するほど、消費電力(≒パフォーマンス)は向上する。ただ、一般的なユーザーはファンの回転数設定を行う機会は少ないと思われるため、今回のレビューでは特記のない限り「スタンダードモード」に固定してテストを行う。
ベンチマークテストで実力をチェック!
それでは、Zenbook S 14(UX5406)を通してCore Ultra 258Vの実力をチェックしていこう。
先述の通り、MyASUSでのファン回転設定は特記のない限り「スタンダードモード」とした上で、AC駆動の状態でテストを行う。Windowsの電源モードも原則として標準設定の「バランス」とした。あくまでも“素で”どこまで使えるのかを見るためだ。
CINEBENCH R23
まず、CPUコアの性能を確認すべく「CINEBENCH R23」を実行した。このテストは、Windowsの電源設定を「バランス」「トップクラスの電力効率(省電力重視)」「最適なパフォーマンス(性能重視)」を切り替えつつ実行した。以下の通りの結果だ。
- マルチコア
- トップクラスの電力効率:7883ポイント
- バランス:8108ポイント
- 最適なパフォーマンス:8087ポイント
- シングルコア
- トップクラスの電力効率:1877ポイント
- バランス:1875ポイント
- 最適なパフォーマンス:1842ポイント
バランスと最適なパフォーマンスは、誤差といえる範囲内に収まった。一方で、トップクラスの電力効率を選ぶと、ポイントはそれなりに下がる。
CINEBENCH 2024
続けて、CINEBENCHシリーズの最新版「CINEBENCH 2024」を使って、バランス設定時のAC駆動時とバッテリー駆動時のCPUパフォーマンスをチェックした。結果は以下の通りだ。
- マルチコア
- ACアダプター駆動:492ポイント
- バッテリー駆動:389ポイント
- シングルコア
- ACアダプター駆動:119ポイント
- バッテリー駆動:70ポイント
バッテリー駆動ではACアダプター駆動の6~7割程度のスコアとなっている。デフォルトでは、バッテリーの駆動時間を重視する電源チューニングになっているようだ。
PCMark 10の結果
CPUに特化したテストを終えた後は、総合的なベンチマークテスト「PCMark 10」を実行してみよう。
こちらはACアダプター駆動とバッテリー駆動のそれぞれで、MyASUSのファン回転設定を「ウィスパー」「スタンダード」「パフォーマンス」「フルスピード」の4つを切り替えつつテストを行った。Windows側の省電力設定は「バランス」で固定している。総合スコアは以下の通りだ。
- ACアダプター駆動
- ウィスパー:7090ポイント
- スタンダード:7142ポイント
- パフォーマンス:7162ポイント
- フルスピード:7294ポイント
- バッテリー駆動
- ウィスパー:4557ポイント
- スタンダード:4887ポイント
- パフォーマンス:4940ポイント
- フルスピード:6794ポイント
基本的には、ファンの風切り音が大きくなるほどスコアが伸びるという感じだ。名前通り、フルスピードだとファンがかなり高速に回るため、静かな場所での利用には向かない。普段はスタンダードで使うのが吉である。
Core Ultra 200Vプロセッサは、全モデルがパフォーマンスコア(Pコア)4基+高効率コア(Eコア)4基の計8コア構成だ。しかも、Pコアではマルチスレッド機構を廃止している。しかし、PCMark 10のスコアを見る限り、競合の8コアCPUと比べてもAC駆動時の性能面では遜色ない。
ただ、先ほどのCINEBENCH 2024のスコアと同様に、バッテリー駆動になるとAC駆動の6~7割程度の性能となってしまう。とはいえ、MyASUSでファン速度をフルスピードに設定するとACアダプター駆動時の9割程度の速度は出るようになる。
本製品の場合、バッテリー駆動時でもパフォーマンスを引き出したいなら「ファン設定をフルスピードに」を忘れないようにしたい。
関連記事
ASUS、Core Ultra(シリーズ2)を搭載したCopilot+ PC対応の14型ノートPC
ASUS JAPANは、Copilot+ PCに準拠した14型ノートPC「ASUS Zenbook S 14 UX5406SA」の発表を行った。インテルが「Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)」搭載ノートPCを国内初披露 どんなモデルがある?
日本時間の深夜、Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)が発表された。それを受けて、インテルがイベントの基調講演において同プロセッサを国内で初めてお披露目した。併せて、展示会場では一部メーカーの搭載PCの展示も行われた。「Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)」は驚きの内蔵GPU性能に メモリ帯域が当初発表から“倍増”
IntelがLuna Lakeこと「Core Ultra 200Vプロセッサ」を発表した。Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)のモバイル向けモデルという位置付けだが、どのような特徴があるのだろうか。ドイツ・ベルリンで開催された発表会で得られた情報をもとにまとめた。大きな転換点を迎えるPCプラットフォーム Core Ultra(シリーズ2)とApple M4チップの「類似性」と決定的な「差異」
IntelがモバイルPC向けの新型SoC「Core Ultra 200Vプロセッサ」を発表した。本SoCは、Appleが自社製品のために開発している「Apple Silicon」との類似点が多く見られる一方で、決定的に異なるポイントがある。デルの「XPS 13」にCore Ultra(シリーズ2)搭載モデル登場! 全構成がEvo Edition準拠
デル・テクノロジーズが、13.4型モバイルノートPC「XPS 13」にCore Ultra(シリーズ2)搭載モデルを追加する。9月27日から同社のWebサイトでカスタマイズ(CTO)モデルの受注を開始し、11月下旬をめどに家電量販店での販売も行う予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.