試して分かった「Core Ultra 200V」の実力! Intelの新型CPUはゲームチェンジャーだと思ったワケ 現行ノートPCとの決定的な違いは?(4/4 ページ)
Intelのモバイル向け最新SoC「Core Ultra 200Vプロセッサ」を搭載するノートPCが、いよいよ発売される。今までのIntel製CPUにはない特徴を多く備えた本製品の実像はいかほどのものか、「ASUS Zenbook S 14(UX5406)」のCore Ultra 258Vモデルを通してチェックしていく。
3DMark
Core Ultra 7 258Vは、GPUとしてIntel Arc Graphics 140Vを統合している。そのパフォーマンスを確認すべく、「3DMark」の主要なテストを実施してみた。総合スコアは以下の通りだ。
- Fire Strike(DirectX 11/フルHD):8433ポイント
- Fire Strike Extreme(DirectX 11/WQHD):4130ポイント
- Fire Strike Ultra(DirectX 11/4K):2213ポイント
- Time Spy(DirectX 12/WQHD):3946ポイント
- Time Spy Extreme(DirectX 12/4K):1955ポイント
- Solar Bay(軽量レイトレーシング):1万4767ポイント
- Port Royal(重量レイトレーシング):1796ポイント
以前、PC USERで掲載した西川氏の記事において、「Core Ultra 200VプロセッサのGPUは、内蔵GPUとしては結構高性能」と触れられていたのだが、ここまで性能が良いとは驚きである。どちらかというとピュアモバイル向けという製品特性を考えると、さらに驚いてしまう。
UL Procyon AI Computer Vision Benchmark
Core Ultra 200Vプロセッサは、推論演算に特化したNPUを搭載している。これを生かしたアプリも、少しずつだが増加傾向にある。
そこでベンチマークテストスイート「UL Procyon」から、オブジェクト認識(コンピュータビジョン)を通して演算性能を確認する「AI Computer Vision Benchmark」を実行してみた。テストでは幾つかのAPIを選択できるが、今回はCPUコア/GPUコア/NPUコアの“全て”を比較する観点から「Intel OpenVINO」を使うバージョンを選択した。スコアは以下の通りだ。
- INT8(8bit整数演算)
- CPU:213ポイント
- GPU:1313ポイント
- NPU:1739ポイント
- FP16(16bit浮動小数点演算)
- CPU:67ポイント
- GPU:886ポイント
- NPU:978ポイント
- FP32(32bit浮動小数点演算)
- CPU:66ポイント
- GPU:291ポイント
- NPU:計測不可(非対応)
基本的にはGPUが一番スコアが高い(≒演算が速い)と思いきや、整数演算と16bit浮動小数点演算ではNPUの方が良いスコアだ。AI処理演算の内容にもよるが、NPUにうまくオフロードできれば高速かつ電力消費を抑えて処理を行えるようになる。
UL Procyon AI Image Generation Benchmark
「NPUを搭載したということは、ローカルでも生成AIを動かせるのでは?」という人もいると思う。そこで、UL Procyonから画像生成AIのパフォーマンステスト「Image Generation Benchmark」を試した。
このテストはStablity AIが開発した「Stable Diffusion」を使って画像生成AIにかかる演算パフォーマンスをチェックする。テストはAIモデル(バージョン)と演算内容が異なる3パターン用意しているが、今回はCore Ultra 200Vプロセッサでも利用できる「Stable Diffusion 1.5」のINT8テストを実行した。結果は以下の通りだ。
- GPU:2267ポイント
- NPU:2659ポイント
先ほどのコンピュータビジョンの整数演算テストと同様に、GPUよりもNPUの方がパフォーマンス面で上回った。整数演算を多用するタイプのAIであれば、NPUを活用することでGPUの負荷をオフロードできる上、消費電力も抑えられる。
PCMark 10 Battery Profile Test(Modern Office)
CPUコア(とスレッド)の数の割に、Core Ultra 258Vの性能はそこそこに良いことが分かった。問題はバッテリーの駆動時間だ。公称値は先述したが、あくまでも“公称値”であって、実環境におけるバッテリー駆動時間はアプリの稼働状況や画面輝度などによって大きく変わりがちだ。
そこで今回はPCMark 10に内包された Battery Profileテストの中から「Modern Office」シナリオを選択してバッテリー駆動時間を計測した。少し“いじわる”をして、画面の輝度は100%としている。
公称でのバッテリー駆動時間があまりに長いため、テストは就寝前に始めた。約7時間30分後、起床してテストの進捗(しんちょく)を確かめてみるとバッテリーが半分も減っていなかった。「ぐっすり寝ても少しは残っているかな」とは思っていたのだが、想像以上の残量だ。
結局、残量100%から3%(強制休止状態)になるまでに掛かった所用時間は18時間19分だった。ACアダプター駆動時と比べて、ベンチマーク上の性能は設定次第で6〜7割程度となるものの、オフィスワークで使うというシナリオでは大して問題にならないだろう。
今回は、画面輝度をあえて100%に引き上げてテストした。画面輝度を50〜60%程度に抑えれば、バッテリー持ちは一層改善するだろう。
いろんな意味で今までの「Intel CPU」の常識を打ち破っている
筆者は今、Core i7-1280P(Pコア6基12スレッド+Eコア8基8スレッド)と32GBメモリを搭載するモバイルノートPCをメインとして使っている。今回のレビューに合わせて、このPCで久しぶりにPCMark 10を完走させたところ、総合スコアは5340ポイントとなった。
それに対して、今回レビューしたZenbook S 14(UX5406)のCore Ultra 7 258Vモデルの総合スコアはスタンダードモードで7142ポイント。バッテリー駆動時でも4887ポイントと、メインのモバイルノートPCと大差がない。
子細にスコアを見てみると、内蔵GPUのパフォーマンスも問われる「Productivity」「Digital Content Creation」において大きく引き離されているようで、日常使いを見る「Essentials」ではそこまで決定的な差はない。
とはいえ、“たった”2年の差、しかも物理的なCPUコアが6基も多いのにここまでコテンパンにやられてしまうと、「自分のノートPCとは一体何なのだろうか……」という思いにどうしても駆られてしまう。
筆者が普段使っているCore i7-1280P搭載ノートPCと、PCMark 10で比較した図。Essentialsはそれほど大差ないものの、他のテストで大きく差を付けたため、総合スコアでもそれなりにスコアに乖離(かいり)が生じている
今回のテストを通して分かったことは、CPUコアにばかり目を向けていてはいけないのだということ。SoCは“バランス”が大切なのだ。そういう意味では、Core Ultra 200VはIntelアーキテクチャのCPUにおける大きな“ゲームチェンジャー”といえるのかもしれない。
これからモバイルノートPCの購入を考えている人は、家電量販店などでCore Ultra 200Vプロセッサ搭載モデルと、従来のCore Ultraプロセッサ(シリーズ1)、あるいはさらに過去世代の同等クラスのCPUを搭載するノートPCとよく比較してから購入しよう。Core Ultra 200Vプロセッサは、それくらいビックリする存在だ。
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