なぜPCに「AI」が必要なのか? HPのキーマン2人に聞く:HP Imagine 2024(1/4 ページ)
「AI PC」がマーケティング上の流行語になって1年少々。AIの処理を効率良く行えるNPUを搭載するCPUもバリエーションがそろってきた。AI PCを選ぶメリットはどこにあるのか、HPのエグゼクティブ2人に話を聞いた。
2024年に入ってから、推論演算に特化したNPU(ニューラルプロセッサ)を搭載する「AI PC」が相次いで市場投入されるようになり、コロナ禍以降は停滞気味だったPC市場をにぎわせている。
一方で、Microsoftの提唱する「Copilot+ PC」のように、現状のWindows PCの最低要件をはるかに上回る動作スペックを要求するものが登場するなど、ユーザーとして「どのPCを買うべきか?」と迷う要素が増えている。「現状そこそこの性能で、無難な価格のPC」を選ぶのか、あるいは「将来を見越して現状ではハイスペックと思われるPC」を導入すべきなのか。本当に悩ましい。
そんな中、9月24日(米国太平洋夏時間)に米カリフォルニア州パロアルトで開催された「HP Imagine 2024」を取材した折に、HPのエグゼクティブ2人にインタビューする機会を得た。昨今のAI PC事情やトレンド、強力な「NPU」などのスペックを満載したPCが今後どういった進化を遂げていくのか、あれこれ聞いてみた。当面のPC購買行動の一助にしてもらえると幸いだ。
AIによってPCが“優れたPC”になる
初めにインタビューに応じてくれたのは、HPのサミュエル・チャン氏(PCコンシューマーシステム部門担当プレジデント兼シニアバイスプレジデント)だ。同氏には約2カ月前にもインタビューをしている。
NPUが大幅に強化された「Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)」を搭載するモデルが登場したことで、HPでは「Intel」「AMD」そして「Qualcomm」の3社のシリコンパートナーのCPU/SoCを備えるAI PCを取りそろえることになった。今回は、HPにおけるAI PCの“全体戦略”を中心に話を聞いた。
―― 現状、HPのAI分野における戦略は、ビジネス向けの「生産性ツール」を主軸にしているように見受けられる。コンシューマー市場におけるAI戦略をどう捉えているのか?
チャン氏 生成AIについて考えた時、最も一般的に使用されるアプリは生産性の向上(に資するもの)であり、とりわけコマーシャル(ビジネス)分野で非常に多用されている。一方でコンシューマー(個人)に目を向けると、私のようなビジネスパーソンのみならず、学生やフリーランサーなど、多様なポジションの人間がいる。
例えば高校生や大学生などの中等~高等教育課程の学生の場合、(文章などの)要約やデータ分析を必要とする機会が多いため、生産性アプリケーションも非常によく利用される。しかしもう1つ、AIができることとして、画像の生成や動画に対するリアルタイムエフェクト、音楽編集といった多様なクリエイティブ作業が挙げられる。ユーザーが「趣味で上達したい」「自分にもできると思わなかった」といった活動に、より多くのパワーを与えられる。
ここで重要なポイントが、使うPCが“優れたPC”であるということだ。NPUやGPUを有効に活用すると、パフォーマンスが向上するだけでなく、バッテリー駆動時間のバランスも改善される。例えば私が7月に紹介した「OmniBook Ultra 14」は、単純なビデオ再生は最長26時間可能な一方で、仮に全ての機能をオンにした状態でビデオ会議を8~10時間行ったとしても、問題なくバッテリー駆動で動作する。
これはAIの恩恵によるもので、“優れたPC”であることの証明でもあると考える。
オンデバイスでAIを実行できるメリットを生かした「AI Companion」
―― 今回HPは「AI Companion」を発表した。これは、Microsoftの「Copilot」とは何が違うのか?
チャン氏 Microsoftの提唱するCopilotは「Copilotキー」からのアクセスが可能であり、主にクラウドから提供される多くの「Copilot機能」を通して、ハイブリッドなAIエクスペリエンスを提供することになると考えている。
それに対して、当社のAI Companionはローカル(オンデバイス)でのAIエクスペリエンスの実現に重点を置いており、Copilotとは違った注目すべき機能を提供できる。
1つ目が「パフォーマンス」に関する機能だ。PCの統計情報を全て取得し、全てのデバイスドライバと設定が最適化されていることを確認しつつ、AIのインテリジェンスを利用して、最高のパフォーマンスを常に提供できるようになる。
もう1つが「分析」機能で、ドキュメントをクラウドに保存することなく「ChatGPT」のような機能を提供できる「RAG」(※1)という手法を用いている。RAGを使うメリットとしては、クラウドに保存したくない文書をローカルで処理できること、レイテンシー(処理の遅延)が少ないこと、そして追加のコストを払うことなく、無制限にクエリーを実行できることにある。
以上の2つが、私たちが現在AI Companionで注力しているポイントだが、ISV(ソフトウェアベンダー)と協力して、このアプリ経由でサードパーティーによる追加のエクスペリエンスも得られるようにしていく。
Retrieval-Augmented Generation:応答可能なLLM(大規模言語モデル)に対して、信頼できる特定の情報源を接続することで専門性の高い回答や意図した応答を得られるようにする仕組み
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