ニュース

ノジマ傘下入りが決まった「VAIO」の物作りはどうなる? 安曇野の本社工場を見学して分かったこと(5/6 ページ)

2025年1月からノジマグループに参画することが決まったVAIO。ノジマの傘下に入ることで、VAIOの“物作り”はどうなるのだろうか。ノジマグループ入りが発表された直後のVAIO本社を訪れ、工場を見学した感想を交えて考察する。

高い品質を担保する「環境試験室」

 VAIO PCの高い品質を実現するために重要な役割を担っているのが「環境試験室」だ。同社では、開発段階において試作機を用いつつ約50項目の環境試験を実施した上で、2回に渡る信頼性試験を経て出荷可否を判定し、製品を市場に投入している。

 これらの試験は、ユーザーのさまざまな使用環境を想定したものだ。PCを机から落としてしまった場合や、想定外の振動や圧力がかかった場合でも、安心して利用できる強度を確保した設計をするためには欠かせない。


環境試験室の様子。VAIO独自開発のものを含めて、約50項目の試験を行えるようになっている

落下試験機。MIL-STD-810H(MIL規格)では「高さ125cmから落下させても正常に動作する」という基準の所、VAIOでは独自に5cm高い「127cm」からの落下試験を実施している
最新のVAIO SX14-Rを、実際に127cmの高さから落下させてみた

落下した後も、しっかりと起動した

脇に挟んだ状態から落とすことを想定した、高さ90cmからの落下試験で使う試験機。落下は「6面」に当たるように実施している。同じ試験機では机の上から落とすことを想定した76cmの落下試験も行うが、こちらでは角落下を含めて計20面で試験を実施する。床は衝撃がより大きく伝わる鉄板だ

机の上に放り投げて置いたりする環境を想定した「角衝撃試験機」では、片手持ちした際の内部基板や部品へのストレスも検証する。これはVAIO独自の試験であり、試験機も独自に開発したという
VAIO SX14-Rでは、機種個別の試験としてヒンジが立った状態で角衝撃試験を実施している。5cmの高さからそれぞれの角を5000回ずつ落としていったという

 製品の出荷後も、想定外の利用によって発生する不具合など、東京都に拠点を構える技術営業部門を経由して市場から得られた情報をもとに、試験内容を改善/変更/追加することを繰り返している。これにより、ユーザーの利用環境の変化に合わせて試験も進化を続けている。VAIOとして独立してから、試験項目は約10個増えたそうで、主に法人ユーザーや学生ユーザーを想定した新試験が追加されたという。

advertisement

 安曇野の本社内には、設計部門や品質保証部門も同居している。そのため、試験内容を迅速に変えられるのも強みだという。


振動試験機はVAIOとして独立してから導入したもので、メキシコの悪路を走破した際のデータを用いているという。加振機は周波数を変えることでさまざまな振動を再現可能で、縦方向だけでなく横方向にも対応可能だ
振動試験は、PCの上に500gの重りを置いて行う。PC単体での試験だけでなく、かばんの中に一緒に入れたACアダプターやペットボトルが振動で本体に当たることを想定した試験も行っている(動画はペットボトルが当たる想定で行っている様子)

これは、自転車のかごにノートPCを入れて持ち運ぶことを想定した試験で用いる機具。本体をあえて固定せずに振動を与えることで、自転車のかごの中を再現している。2024年に入ってから追加された試験だ

恒温室を使った温度/湿度試験も行っている。この恒温室は「気温40度/湿度90%」という厳しめの環境で試験を行っていた。なお、恒温室は他にも4台用意されている

恒温室ではキーボードの操作やUSBポートなどでの機器の抜き差しが正常に行えるかどうかもチェックできる

横から見ると分かるのだが、この出窓部分は後から改造して追加している。ある意味で、VAIO独自の試験機器ともいえる

粉じん試験機も用意されている。動物成分も含まれた独自の粉じんを用意した上で、その中で2時間稼働させてもファンが稼働し、本体の温度上昇がないことを確認する

正面から見ると分かりづらいのだが、この粉じん試験は思っている以上に過酷だ。写真の通り、粉塵は各ポートを埋めてしまうレベルでまかれる

粉じん試験を終えた本体内部の様子。あちこちがホコリまみれになっても、ファンの部分にはホコリが入り込んでいないことに注目したい

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.