新「FMV」に込めた不退転の決意 学生から「パソコンはいらないよ」と言われても王道を行く理由 FCCLの大隈社長に聞く:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(4/4 ページ)
不安定な世界情勢が続く中で、物価高や継続する円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載の第18回は、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の大隈健史代表取締役社長だ。
王道であることにこだわる理由
―― 今回のFMVのリニューアルによって、変わるものは何ですか。
大隈 お客さまの裾野を広げていきたいと思っています。日本の個人向けPC市場は、長期的視点で見ると規模が縮小し続けています。
これは使う人が減少していることや、買い替えサイクルが長期化していることなどが理由ですが、その状況を作ったのは、私たちが魅力をアップデートし続けることできていなかったということに尽きると思っています。
FMVがトップシェアメーカーであるからには、市場全体を広げるための提案をする必要がありますし、お客さまに手に取っていただけるようなパソコンを提案できるブランドにならなくてはいけません。「パソコンは必要ないから」と言われないように、FMVが日本のパソコン市場をリードする役割を担っていきいですね。
―― その一方で、FMVがブランドリニューアルをしても、変わらないものとは何でしょうか。
大隈 変わらない点は、FMVは、これからも王道であるという点です。奇抜なことをやったり、目を引くようなことをやったりということでなく、正攻法でやっていきます。これはトップシェアメーカーとしての責務だと思っています。
一部のユーザーに刺さるような尖った製品ではなく、広く、あまねく、より多くのお客さまに手に取っていただけるような王道の製品を作り続けていきます。
FCCL(2015年までは富士通)が1993年から投入してきた主なPC。バラエティーに富んでいるが、2018年に「ふくまろ」や電子ペーパー端末「QUADERNO」が含まれているのは同社のポートフォリオ拡充をにらんだものなのだろう
―― これまでの歴史を振り返ると、1989年のFM TOWNSによって、世界初のCD-ROMドライブ搭載PCを発売したのは富士通ですし、LOOXに代表されるポケットサイズの小型パソコンや、世界最軽量モデルノートPCもFCCLから登場しています。むしろ、奇抜なものを出すPCメーカーという認識があります(笑)。
大隈 当時はチャレンジャーの立場ですし、市場も黎明(れいめい)期でしたから、挑戦的なモノ作りをしていた部分はあったと思います。その結果、大きな空振りをしたものもありました。
ただし今は、パソコン市場が成熟しており、FMVの立ち位置も変わっています。そうした環境の変化と、その中での役割をしっかりと捉えながら、既に実績がある世界最軽量モバイルノートPCなど、技術的に挑戦できるところには挑んでいきます。
―― FMVには“奇抜なもの”を投入し続けて欲しいという気持ちがあります。
大隈 そうですね。何年かに一度ぐらいのペースで、単発で挑戦するといったことはやりたいですね。お客さまに対して、ポジティブなサプライズを提供することは必要だと思っていますし、エンジニアもそうした挑戦がないと、燃えないところありますからね(笑)。
とはいえ、それをビジネスの中心に捉えることはしません。メインのビジネスをしっかりとやりながら、半歩や一歩進んだ提案型の製品にはチャレンジしていきます。その点では、期待していてください。
※近日公開予定の後編に続く。
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