「GeForce RTX 5070 Ti」は4K/ウルトラ設定でモンハンワイルズを快適にプレイできる? NVIDIAの新GPUを試す:カードの寸法はよく確かめて(3/3 ページ)
動画のエンコードやAIのパフォーマンスもチェック!
今どきのGPUはゲーミングだけでなく、動画のエンコードやAI(人工知能)の演算処理にも活用されている。今回は、これらパフォーマンスをULの総合ベンチマークテストアプリ「Procyon」に内包されたテストでチェックしてみる。
Procyon Video Editing Benchmark
GeForce RTX 50シリーズには第9世代NVENC(動画エンコーダー)と第6世代NVENC(動画デコーダー)が内蔵されている。先日紹介したGeForce RTX 5080では、NVENC/NVDECが共に2基構成となっていたが、GeForce RTX 5070 TiはNVENCが2基、NVDECが1基という構成だ。5080と比べると、グラフィックスメモリの帯域が約7%狭くなった(毎秒960GB→毎秒896GB)ものの、動画の書き出し(=エンコード)の性能は大きく変わらず、再生(=デコード)で差が出そうな予感はする。
実際はどうなのか、Procyonの「Video Editing Benchmark」を使ってチェックしてみよう。このテストは「Adobe Premiere Pro」を使ってフルHD(H.264コーデック)と4K(H.265コーデック)の動画を2種類ずつ書き出す際のパフォーマンスを点数化する。負荷の大きいテストはエフェクト処理でGPUによるアクセラレーションを有効にできる。
総合スコアではなく、あえて書き出しに掛かった時間をチェックしてみると、以下の通りとなる。
- GeForce RTX 5070 Ti
- フルHD/その1(GPUアクセラレーション):15.6秒
- フルHD/その2:14.7秒
- 4K/その1(GPUアクセラレーション):49.6秒
- 4K/その2:41.1秒
- GeForce RTX 5080
- フルHD/その1(GPUアクセラレーション):14.7秒
- フルHD/その2:13.7秒
- 4K/その1(GPUアクセラレーション):49.6秒
- 4K/その2:42.7秒
- GeForce RTX 4080
- フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.7秒
- フルHD/その2:15.7秒
- 4K/その1(GPUアクセラレーション):54.5秒
- 4K/その2:47.6秒
- GeForce RTX 3080 Ti
- フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.7秒
- フルHD/その2:16.3秒
- 4K/その1(GPUアクセラレーション):55.4秒
- 4K/その2:47.6秒
テストがエンコード特化型ということもあり、5080と5070 Tiは高速で“僅差”という結果となった。解像度やフレームレートの高い動画のプレビューをする場合はNVDECの削減による影響が出る可能性もあるが、エンコードメインでGPU(グラフィックスカード)を選ぶなら、5070 Tiの方がコストパフォーマンスは良さそうだ。
Procyon Computer Vision Benchmark(Windows ML)
一言で「AI」といっても、さまざまなものがある。ProcyonではAIに関するベンチマークテストがあるが、今回は機械学習データを使って物体を検知する「コンピュータビジョン」の処理パフォーマンスを確認する「AI Computer Vision Benchmark」を実行してみよう。
ProcyonのAIベンチマークでは、テストによってはAPIや演算器(CPU/GPU/NPU)を指定して実行可能で、AI Computer Vision BenchmarkでGPUの演算能力を試す場合はAPIとして「Windows ML(Direct ML)」か「NVIDIA TensorRT」を選べる。GeForce RTXシリーズにとっては、TensorRTの方がパフォーマンスを発揮しやすいのだが、まだGeForce RTX 50シリーズには対応していない(対応に向けた修正を準備している)。
そこで今回はWindows MLを使った場合の演算パフォーマンスを比較する。総合スコアは以下の通りだ。
- GeForce RTX 5070 Ti
- INT(整数演算):577ポイント
- Float16(半精度浮動小数点数演算):1977ポイント
- Float32(単精度浮動小数点数演算):1176ポイント
- GeForce RTX 5080
- INT(整数演算):634ポイント
- Float16(半精度浮動小数点数演算):2164ポイント
- Float32(単精度浮動小数点数演算):1267ポイント
- GeForce RTX 4080
- INT(整数演算):539ポイント
- Float16(半精度浮動小数点数演算):1786ポイント
- Float32(単精度浮動小数点数演算):1116ポイント
- GeForce RTX 3080 Ti
- INT(整数演算):415ポイント
- Float16(半精度浮動小数点数演算):1501ポイント
- Float32(単精度浮動小数点数演算):912ポイント
スコアは5080比で約7~9%減、4080比で約5~11%増しとなった。5080よりも低く、4080よりも高いという順当な結果といえる。
電源容量少なめのPCの強化にGood 問題は“サイズ”と“価格”
GeForce RTX 5070 TiはGeForce RTX 5080と比べると、公称の消費電力が60W低く、推奨の電源容量も100W少ない。何らかの理由で電源の交換が難しい(できない)デスクトップゲーミングPCのパワーアップに適するGPUといえる。
3DMarkの「Time Spy Extreme」でシステム全体の消費電力を測ってみた所、以下の通りとなった。やはり、GeForce RTX 5080と比べると消費電力と処理パフォーマンスのバランスは良いように思える。
- GeForce RTX 5070 Ti:アイドル時57W/ピーク時521W
- GeForce RTX 5080:アイドル時57W/ピーク時589W
- GeForce RTX 4080:アイドル時59W/ピーク時494W
- GeForce RTX 3080 Ti:アイドル時62W/ピーク時567W
今回試したGeForce RTX 5070 Ti GamingProは、大きめのボディーに大きめの3連ファンを備えている。今回はパフォーマンス重視のPモードでテストを実施したが、それでもファンの音は静かだった。
ただ、“大きい”ということは場合によってはデメリットとなる。筆者の調査不足が原因だが、Intel NUC 13 Extreme Kitでは本体をほぼ全解体しないとカードを差し込めなかった。ただ、Intel NUC 13 Extreme Kitに組み込める寸法のカードをリリースするパートナー企業もあるので、コンパクトなケースを使った自作PCやベアボーンキットに組み込む場合は、事前にグラフィックスカードのサイズを“念入りに”調べるようにしたい。
GeForce RTX 5080 Founders Edition(下)と比べると、GeForce RTX 5070 Ti GamingProがいかに大きいか分かると思う。逆に、GeForce RTX 5080 Founders Editionがコンパクトすぎるというだけかもしれないが……
価格面も気になるポイントだ。GeForce RTX 5070 Tiを搭載するグラフィックスカードの想定販売価格は14万8800円からで、GeForce RTX 5080を搭載するカードと比べると5万円安いが、この価格で販売されるグラフィックスカードは一瞬でなくなる可能性も否定できない。価格のメインストリームは17万円台~20万円弱となるだろう。
GeForce RTX 30シリーズからの買い換えを考えた場合、特にDLSS 4による超解像/マルチフレーム生成を期待する人にとって、5070 Tiは5080よりも価格/消費電力/性能のバランスは良いと思うのだが、価格は「安い」とは言いきれない。表示する解像度がWQHDメインであれば、10万8800円とさらに4万円安い「GeForce RTX 5070」を待ってもいいかもしれない。GeForce RTX 5070の発売は3月5日の予定だ。こちらのカードも入手でき次第、別途テストを行うつもりでいる。
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