「iPhone 17 Pro」が仕掛けるAppleの静かな革命――新冷却システム採用で狙う“野望”とは?:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)
デザインの大幅刷新が注目を集めている「iPhone 17 Pro」シリーズだが、その背景にはAppleが「スマートフォンの再定義」を志向していることが見え隠れする。どういうことなのか、解説してみたい。
「iPhone 17 Pro」と「iPhone 17 Pro Max」を手に取った人が最初に気付くのは“軽さ”かもしれない。アルミニウム製のユニボディー構造を採用する新型シャシーは、手にした瞬間にバランスの良さもあって軽さを感じる。
もちろん、スペックが向上した内蔵カメラの画質や望遠カメラの性能が目的という人もいるかもしれない。しかし、この製品の真価は、外観からは分からない部分にある。
ユニボディーに内蔵されたベイパーチャンバーを中心とした冷却システムは、単なる熱対策以上の意味を持つ。これは、Appleがスマートフォンの概念そのものを再定義しようとする意志の表れといえる。
商品企画という観点に立つと、スマートフォンは利益の確保が重要な要素となる。そうなると、コストと設計の複雑さを大幅に引き上げうる冷却システムの刷新(ベイパーチャンバーの採用)が不利なのは間違いない。ベイパーチャンバー自体は、Samsung Electronics(サムスン電子)の「Galaxy S25シリーズ」やASUSTeK Computer(ASUS)の「ROG Phone 9シリーズ」など最新のハイエンドスマホでは定番の装備ではある。恐らくiPhone 17 Proシリーズの出荷数はこれらのシリーズを上回るだろうが、複雑な設計は生産技術や管理面でも難しさがあり、量産コストも上振れさせうる。
利益の確保が重要な製品において、なぜAppleはコストや設計面で“不利”な冷却システムの刷新に踏み切ったのか。理由は明快で、新たに搭載する「A19 Proチップ」が秘める圧倒的な処理能力を十分に発揮させ、Appleが描く「デバイス内AI処理」の未来につなげるためだ。
スマホ用SoCとしては演算能力が非常に高い「A19 Proチップ」
iPhone 17 Proシリーズが採用するA19 Proチップのスペックを“数値”で見ると、その異常さが際立つ。
AppleがアナウンスしているA19 ProチップのCPUコア/GPUコアの数と性能向上ぶりを掛け合わせると、CPUのマルチコア性能はMac向けの「M2チップ」に匹敵し、シングルコア性能では明確に上回ると思われる。M2チップは現在でも十分に高速なSoCだと考えると、もはや「スマートフォン用SoC」の範ちゅうを超える性能に達していると言ってもよいだろう。
さらに今回、AppleはA19 ProチップのGPUコアに「Neural Accelerator(ニューラルアクセラレータ)」を組み込んだ。推論演算を高速化する回路だ。
Appleは従来からiPhone向けSoCに機械学習処理に特化した「Neural Engine」を搭載しており、最近はCPUコアにも機械学習処理を加速させる回路を追加している。ここにGPUコアも“参戦”させることで、CPU/GPU/Neural Engineが協調してAI処理を行う「3レイヤー構造」が構築された。これにより、「スマートフォン内でMacBook Proレベルのできるようになった」とAppleは説明している。
一般的に、スマホ向けの新型SoCは設計から生産(量産体制の確立)までに3年はかかる。つまり、Appleは明確に3年以上前から「デバイス内でのAI処理能力」を最優先に置いた設計を選択していたのだ。
このことは、クラウドサービスへの依存度を下げ、プライバシーを保護しながら、同時にレスポンス性を向上させるという、一見矛盾する要求を同時に満たそうとする試みでもある。
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