「iPhone 17 Pro」が仕掛けるAppleの静かな革命――新冷却システム採用で狙う“野望”とは?:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)
デザインの大幅刷新が注目を集めている「iPhone 17 Pro」シリーズだが、その背景にはAppleが「スマートフォンの再定義」を志向していることが見え隠れする。どういうことなのか、解説してみたい。
オンデバイス処理に重きを置くことで開かれる「新たな可能性」
Appleがデバイス内でのAI処理にこだわる理由は「プライバシー保護」だけではない。
確かに、Appleは「Private Compute Cloud」の開発を通して、クラウド(オンライン)でも高水準のプライバシー保護を伴うAI処理の実現を目指している。それでも、AppleはAI処理の“主軸”はあくまでもオンデバイス処理だと考えている節がある。
その価値は「iOS 26」搭載のiPhoneと「H2チップ」搭載のAirPodsシリーズで実現される「ライブ翻訳」機能に如実に現れている。この機能は、目の前にいる話者の言語をリアルタイムで音声翻訳するものだが、これはクラウド経由では絶対に実現できない体験だ。ネットワークのレイテンシー(遅延)や安定性、そして処理(応答)の待ち時間を考慮すると、クラウド処理で“ライブ”翻訳は相当に難しい。
この機能は「iPhone 15 Pro」以降で利用可能だが、世代を重ねるごとに明確な性能向上を見せている。これは、SoCのAI処理能力向上が、直接的なユーザー体験の改善につながることを示す好例といえる。
しかし、そもそもの話でいえば、リアルタイム翻訳のようなオンデバイスAI処理は「SoCの性能を100%発揮できる環境」があって初めて成り立つ。熱処理の問題で性能が低下するようでは、肝心な時に役に立たない。薄いボディーの中で高性能なSoCを持続的に動作させるためには、優れた冷却システムが不可欠だ。
iPhone 17 Proシリーズでは、ベイパーチャンバーという個別の技術導入に限らず、今までチタニウム(チタン)を使っていたボディーフレームを、最大20倍の熱拡散が期待できるアルミニウムに“回帰”した。このことも含めて、AI処理におけるシステム負荷が高まるだろう未来の課題に対するAppleの回答といえる。
冷却技術の革新が実現する、体験の質的変化
ベイパーチャンバーは、液体の“相変化”を利用して効率的に熱を拡散する技術だ。よく似た技術に「ヒートパイプ」があるが、ヒートパイプが点から点へと熱を移動させるのに対し、ベイパーチャンバーは点から面へと熱を拡散させるという違いがある。
一般的なスマホは放熱処理に金属やグラフェン(炭素シート)を用いた「ヒートスプレッダー」を使っているが、ベイパーチャンバーは熱伝導効率と速度が格段に高く、特に継続的な高負荷処理における放熱に威力を発揮する。
iPhone 17 Proシリーズではアルミニウム製ユニボディーとベイパーチャンバーを組み合わせることで、ボディー全体が巨大なヒートシンクとして機能し、高負荷で処理が回り続けても性能が落ちにくくなっている。
複雑なAI処理を伴う写真編集、4K動画のリアルタイムエフェクト処理、長時間の生成AI利用といった、従来であれば発熱により性能が低下していた用途で、継続的に最高性能を維持できるようになるだろう。また、充電しながら処理を行う際に、発熱による「充電不能」「性能低下」などに悩まされる機会も少なくなると思われる。
iPhone 17 Pro Maxの「最長39時間」という驚異的なバッテリー駆動時間も、この冷却システムの恩恵によるところが大きいと予想される。効率的な熱管理でSoCが最適な温度範囲で動作し続けることで、性能低下が発生せずより短時間で処理を完了することにより、電力効率が大幅に向上するからだ。
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