「最初は高いが、かえって安い」顧客満足度1位を支えるモノ作り VAIOの糸岡社長が語る“値上げ”の真意と次なる挑戦:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(3/3 ページ)
法人向けPC市場で支持を集め、顧客満足度1位を獲得するまでに成長したVAIO。その根底には、ソニー時代から受け継がれ、新たに言語化された「カッコイイ、カシコイ、ホンモノ」という商品理念がある。糸岡健社長が描く次なる成長戦略に迫った。
「値上げ」は価値を伝えるチャンス? PCが厳選される時代に
―― 2026年1月に、一部製品において、天板に配置されたVAIOロゴの一部が剥がれる事象があり、無償修理を行うことを発表しました。その時点で不具合が発見されたのは、わずか13台ということでした。むしろ、品質に対するこだわりを感じました。
糸岡 VAIOを利用しているお客さまに驚きや不安、残念な気持ちを抱かせてしまったことは大変申し訳なく思っています。私たちは、「VAIOらしいたたずまいで、気持ちよく使ってほしい」という思いがあります。
天板のVAIOロゴも、PCを気持ちよく使っていただくためには重要な要素です。また、私たちにとっても、日頃より大切にしてきたブランドロゴが、本来の姿でいられない状態となることは、とても心苦しいことです。
実は、お客さまの使用環境や利用方法が多様化しており、どんな使い方をすると、こうした事象が発生してしまうのか、というところまでは突き止められていません。ただ、きれいに使用していただいているお客さまが、天板を拭く際に、繊維がロゴの間に入り込むといったことで、ロゴが剥離してしまうということも要因の1つではないかとも考えています。
しかし原因はともあれ、お客さまの利用現場では、こういったことが実際に起きているわけですから、ロゴが剥がれた場合には、無償で修理対応することにし、さらに、開発および生産現場においても、圧着する時間などを見直し、改善を加えています。
不具合が発生した際のこれまでの動き方は、全ての状況が確認でき、原因が分かって十分な対策ができるという時点になってから、お客さまにお伝えすることが「当たり前」でした。しかし、今回は、原因が分からなくても先に発表し、対策することを優先しました。
悲しい状態のままのVAIOを使い続けてほしくはないですからね。この取り組みを「ロゴ品質保証宣言」とし、ロゴ品質の向上と価値の維持に継続的に取り組み、お客さまに安心して使用していただける製品作りを推進することを改めて徹底しました。
―― VAIOは、2026年4月23日から、PCの価格を値上げしました。値上げはぎりぎりまで引き延ばした印象を受けます。
糸岡 あらゆる角度からコスト削減の取り組みを進めてきましたが、生成AIの普及に伴って、DRAMなどのメモリ関連の半導体需要が世界的に拡大しており、これらの部材の価格上昇に対応するために値上げすることになりました。その点は、ご理解をいただきたいと思います。
一方で、VAIOは、成長戦略を描く過程で、部材価格が高騰する前からサプライヤーと話し合いを行い、年間調達契約を結んでいます。これによって成長に必要な部材を確保することができています。
ただ、市場環境の変化が激しく、何が起こるか分からない状況ですから、これがお願いした通りに供給されるかどうかは、まだ不透明なところもあります。製品の安定供給および品質維持のためにも、今回の価格改定を実施することに決めました。
現時点では、VAIOの供給体制は安定しており、大手企業を中心に既存のお客さまだけでなく、新たなお客さまにもアプローチができています。
PC市場全体を見ると、他の商品の値上がり率に比べてPCの値上がり幅が大きいという指摘もあります。それがPC市場全体に及ぼす影響を懸念しています。見方を変えれば、お客さまがPCを厳選して購入する時代に入ってきたといえます。
VAIOならではの価値を、お客さまに届けることが、これまで以上に重要になると思っていますし、むしろ今こそがVAIOの価値を伝えるチャンスなのかもしれません。
―― VAIOが重視する経営指標はなんですか。
糸岡 売上高や利益、市場シェアといった数字は追いません。しかし、これらの指標の拡大は目指します。一方で、顧客満足度などの数値については、こだわる価値があると思っています。
―― 2026年度は、VAIOにとってどんな1年になりますか。
糸岡 いろいろな意味で、チャレンジの1年になります。ノジマグループとの連携強化により、個人ユーザーとのタッチポイントを増やすことで、個人向けPC市場でも存在感を発揮することも挑戦の1つです。
また、メモリが逼迫(ひっぱく)し、調達の課題や値上げといった動きの中で、VAIOが提供できる価値をしっかりとお伝えすることも重要な取り組みです。さらに工場のモノ作りの強化は、この1年で大きく進化させたいと思っていますし、将来への仕込みにも力を入れます。
社内に向けては、社員一人一人が商品理念や行動理念にのっとってモノ作りを行い、日々の業務に取り組むことを徹底します。人を育てることも、2026年は力を入れる部分です。
仕事の仕方がAIによって大きく変わります。私たちの仕事の中にAIをどう取り込むかといったことも考えていく必要がありますし、その一方で、お客さまに対してもVAIOを通じて、AIの価値をどう届けるかといったことにも取り組みます。チャレンジするテーマはたくさんありますよ。
関連記事
「数字を追い過ぎた失敗」は繰り返さない ノジマ傘下のVAIO 糸岡社長が目指す「新しい理想工場」と再成長
ソニーから独立後、企業再生ファンド(JIP)の下で法人向けビジネスにかじを切り、10年がかりで地盤を築き上げた同社は今、新たな挑戦のフェーズを迎えている。2025年12月に代表取締役社長に就任した糸岡健氏に聞いた。「VAIO Vision+ 14」は異次元の軽さだった! VAIO入魂の新型モバイルディスプレイを試す
モバイルディスプレイの普及が進んでいるが、ついにVAIOからも初の製品が登場した。公称重量約325gの意欲作「VAIO Vision+ 14」を細かく見ていこう。VAIOが再整備PC「Reborn VAIO」の販売を法人向けに開始
VAIOは、同社製PCを再整備して提供するリファービッシュPC「Reborn VAIO」の法人向け販売を開始した。VAIOが現行モデルの「天板ロゴ」無償修理を実施 期間の定めなし
天板のロゴが剥がれたら無償で修理します――VAIOが「ロゴ品質保証宣言」を発表した。PCの機能には直結しない部分だがあ、メーカーとしてブランドを重要視することをアピールする狙いがある。VAIOが個人向け/法人向けPCの値上げを実施 4月23日に改定
VAIOは、国内向けに販売する個人向け/法人向けPCの出荷価格改定を発表した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.