あの“コトコト音”がさらに進化した65%キーボード「ZEN65」の極上キータッチを試す 真ちゅう製内部構造と約1.5kgの重厚ボディー(4/4 ページ)
Rainy75やCrush80で話題を呼んだWOBKEYの最新作「ZEN65」をレビューする。約1.5kgのアルミボディーに真ちゅう製サウンドキャビティや可変マウント機構を秘め、究極のタイピング音とキータッチを追求した注目の1台だ。
大事なキーがない! ……と思ったけれど
ハードウェアだけでなく、ソフトウェア側のカスタマイズ性も非常に手厚い。自作キーボード界隈(かいわい)のスタンダードともいえるVIA/QMKに完全対応しており、ブラウザからVIAサイトにアクセスするだけで、キーリマップやマクロ、ライティング設定を即座に変更できる。専用ユーティリティーのインストールを省ける点は、VIA対応キーボードならではの大きな利点だ。
ここで特に注目したいのが、デフォルトキーマップにおけるEscキーの扱いだ。ZEN65にはファンクションキー列がないため、本来F1の左隣にあるEscキーは一段下がって1キーの隣、元来「`」キーのポジションに配置されている。「`」キー自体は存在しない。
これは英語配列の日本語ユーザーにとっては非常に困った問題だ。なぜなら、半角/全角キーのない英語配列では、通常IMEのオン/オフをAlt+「`」で行うからだ。ちなみにHHKBの場合は右上、「=」の外側に「\」「`」キーが並び、単体のBackspaceは存在しない(下段のDeleteキーを設定でBackspaceに変更する機能はある)。Altキーが両側に配置されているので、右手親指+中指等で入力することで左手で担っていた操作をそのまま右手で行うことができた。
では、ZEN65ではどう対処すればよいのか。デフォルトでは「`」が「Fn」+「Esc」に割り当てられているため、「Fn」+「Alt」+「Esc」を同時に押せばIMEを切り替えることは可能だ。しかし、この運指は両手を使わざるを得ず、決して操作性が良いとはいえない。
実は、ZEN65のEsc位置に割り当てられているのは純粋なEscキーではなく、QMK特有の「KC_GESC(Grave Escape)」と呼ばれる特殊な挙動である。これは単押しでEsc、Win(GUI)同時押しで「`」、Shiftと同時押しで「~」が出力される。つまり、Alt+「`」を入力したい場合はWin+Alt+Escを押せばよい。キーは3つだが、Fn+Alt+Escと異なり、WinキーはAltキーの隣にある。親指でWinキーとAltキーを同時押しすれば十分片手で操作できる。
さらに一歩踏み込み、VIAのマクロ機能を使って特定のキーの組み合わせを好みのキーに割り当て直すことも可能だ。ただし、マクロを単一のキーに割り当てると本来のキー機能が上書きされてしまう。
そこで、キーを押している間だけ別レイヤーを呼び出す「MO(Momentary turn layer On)」機能と組み合わせるのが効果的だ。例えば、Fnキーで呼び出せるレイヤーのBackspace位置に「Alt」+「`」を出力するマクロを配置すれば、「Fn」+「Backspace」で手軽にIMEを切り替えられるようになる。この設定にすれば、HHKBに近い快適な操作感が得られるはずだ。
この音色であのレイアウトを
実際にメイン機をCrush80からZEN65へと切り替えてみると、WOBKEY製品としての確かな連続性と、ZEN65ならではの革新性の両方が、想像以上に明確に感じられた。
デフォルト状態(ソックスガスケットマウント+Kailh Lunaスイッチ+FR4プレート)でのキータッチは、Crush80のしっとりとした感触を見事に受け継ぎつつ、タイピング音をさらにもう一段階低い音域へとシフトさせた印象を受ける。
真ちゅう製サウンドキャビティの恩恵は間違いなく大きく、底打ち時の余韻がCrush80よりもやや短く収束するため、その分だけ音の輪郭がきれいにそろって聞こえる。「ころころ」と軽快に鳴るCrush80から1/4音ほどチューニングが下がり、楽しげな音色から大人の落ち着きへと昇華した感覚だ。
タイピング時に手のひらへ伝わる振動も、約1.5kgという圧倒的な質量がしっかりと受け止めてくれるため、ぐらつきによる雑味が皆無であり、純粋にタイピングそのものへ没頭できる。
こうして解き明かしていくと、WOBKEYが第3弾の製品で目指したのは、単なる「小型化」ではなく、「より洗練された音を」「より自由なカスタマイズで」提供することだったのではないかと思えてくる。Crush80の極上のコトコト音をさらに深化させ、ユーザー自身が理想のフィーリングを探求できるよう、WOBKEYは一切の妥協なく新技術を投入してきた。
コンパクト化に伴うキータッチや音の劣化は一切見られない。それどころか、「この究極の音と構造を突き詰めるためには、このサイズ感が必要不可欠だったのかもしれない」とすら錯覚させられる完成度だ。
仮にこの内部構造のままテンキーレスや75%サイズを作れば、必要となるアルミ合金や真ちゅうの量は跳ね上がってしまう。ZEN65の65%というコンパクト化は、レイアウトバリエーションの拡大という目的に加え、現実的な販売価格に抑えるための必然的な選択だったと推測できる。だからこそ、サイズは小さくしても「決して軽くする気はない」という確固たる意志を感じる。
とはいえ、キーボード選びにおいてレイアウトは死活問題であり、音色にも個人の明確な好みがある。新モデルの音色が、必ずしも旧モデルの完全上位互換になるとは限らない。「テンキーレスレイアウトでZEN65の深い音色を楽しみたい」「Crush80の軽快な音色で65%レイアウトを使いたい」と願うユーザーも決して少なくないはずだ。今後のWOBKEYには、ぜひ同一モデル内でのレイアウトバリエーション拡充を期待したい。
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