最新プラットフォームで面目一新のUMPC──工人舎「KOHJINSHA SH6」シリーズ(3/3 ページ)
2006年にリーズナブルなミニノートPC「SAF1」を登場させた工人舎から、Intel Ultra Mobile Platform 2007を採用した新シリーズが投入される。そのファーストインプレッションをお届けしよう。
実売10万円前後クラスの「買える」「使える」ミニノートPC
先行した「SA」シリーズと同じように、「SH」の最も大きな特徴もその「価格」だろう。「SA」シリーズのフォームファクタを継承して機能面のグレードアップを果たし、さらにワンセグTVチューナーを備えて最もベーシックなモデルで9万9800円と10万円を切る価格を実現している。「SA」シリーズと比べた機能面の向上を考慮すれば、この価格は魅力的だ。
今回は試用機、とくに性能に影響を与えるBIOSがチューニング段階なので、ベンチマークなどの性能評価の結果は明らかにできない。しかしプリインストールされたWindows Vista Home Basicの動きはスペックから想像するよりずっと軽快で十分に実用レベルといえる。本機はおそらくコストダウンのためにフォームファクタからすると不釣合いな2.5インチHDDを採用しているが、結果的にはこれもパフォーマンスに貢献しているだろう。
筆者はメディアプレイヤーとしての資質が気になったので簡単にチェックしてみたが、ビットレート9MbpsのMPEG-2、同じく平均ビットレート2MbpsのDivx、平均約1.6MbpsのWMVなどのすべての動画ファイルがCPU使用率に余裕をもった状態でWindows Media Playerでの再生が可能であった。比較的CPU使用率の高かったWMVファイルはバッテリー動作でも再生してみたが(バッテリー動作設定は「バランス」にした)、CPU使用率に大きな変化はなく問題なく再生できた。
「SA」シリーズではBluetoothヘッドフォンを利用すると2MbpsのMPEG-2ですらCPU使用率が100%に達してときおりコマ落ちが発生していたが、「SH6」シリーズでは余裕だ。さすがにアナログRGB出力を使って大型液晶TVに接続してHD映像を楽しむ、という使いかたには無理があるが、メディアプレイヤーとしての資質はかなり高そうだ。
試作機ゆえ、具体的な値は示せないが、評価作業では、平均ビットレート1.6Mbpsで29.97fpsのWMVファイルを再生した場合、AC動作時でもバッテリー動作時でもコマ落ちなく再生できたのに加えて、BluetoothヘッドフォンをA2DPで接続して平均ビットレート1.6MbpsのWMVファイルを再生した場合のCPU使用率は一瞬100%に達することがあったが、まったく問題なく再生できた。
本機は「SA」シリーズとの比較という視点を抜きにしても十分に魅力的だ。Intel UMP 2007を採用しつつ、サイズ的にUMPCではない点を否定的にとらえるユーザーがいるかもしれないが、これは技術的な問題ではなくコンセプトの問題だ。主要キーが15.9ミリピッチ(1部は12ミリピッチ)というキーボードは(慣れが必要なのは事実だが)通常スタイルでのタイピングが可能だ。拡張性まで含めて通常のノートPCに匹敵する実用性が「SH6」シリーズの存在価値として評価できるだろう。
「現在のノートPCラインアップにおいてサイズと重さのバランスが中途半端」という意見もあるかもしれないが、それゆえに多様な利用場面に耐えられるという見方もできる。「SA」シリーズが登場したときに「もう少し処理能力が高ければ」「スレートスタイルになるならタッチパネルになっていれば」と購入を躊躇したユーザーも本機なら踏み切れるはずだ。
何より(ベーシックモデルとはいえ)9万9800円で購入できるのは、モバイル専用のセカンドPCとして買うユーザーの背中を力強く後押しするのは間違いない。ただ、メモリスロットが1つで後から増設ができないことを考慮すると、メモリ1Gバイト、HDD100Gバイトのモデルを選んでおきたい。それでも価格は11万8000円で、さらにOSもHome Premiumにアップグレードされることを考慮すれば価格競争力は十分にある。OSにWindows XPが選択できないのを残念と思うユーザーもいると思うが、ハードウェアの拡張を行うことはさほどないであろうミニノートPCでは、Windows Vistaでも周辺機器のドライバで困ることは少なそうだ。
「小さいと高い」「安いと大きい」という問題がついて回るノートPCの購入事情たが、UMPCとIntel UMP 2007の登場によって「小さくて安い」製品が登場したことは、ミニノートPCの普及に大きな影響を与えると思われる。その選択肢の1つに“小さすぎず使いやすい”工人舎の「SH6」シリーズが加わったことで、「財布を家族に握られています」というちょっと気の毒なミニノートPCフリークもその多くが救われることになるだろう。
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