FinderとExplorerに見るMac OSとWindowsの共通点と相違点:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
Leopardではユーザーインタフェースの基幹となるFinderに大幅に手が加えられた。WindowsでFinderに相当するExplorerとの違いを見ていく。
Cover Flowで検索性が大幅に強化
オブジェクトの表示は、このアイコン表示以外に加え、リスト表示(画面7)、カラム表示(画面8)、そしてCover Flow(画面9)の計4種類から選択することが可能だ。その選択はウィンドウ上部のツールバー領域のアイコンで行う。リスト表示は、オブジェクトを一覧するもので、Vistaの詳細表示に相当する。カラム表示は、カラムごとにフォルダの階層を表示するもので、操作性としてはVistaでナビゲーションペインを表示した状態に近い。
残ったCover FlowがLeopardで追加された表示モードで、iTunesのCover Flow表示をFinderに持ち込んだ格好だ。したがってマウスのスクロールホイールなどで、フォルダ内のオブジェクトを高速にスクロールしながら閲覧することができる。もしオブジェクトが、OS側で把握したものであれば、その中身をプレビューしながらスクロールすることが可能だ。実際の動く画面はこちらのムービーを参照してほしい。
問題はOS側でどれくらいのファイルフォーマットを理解しているのか、ということだが、テキストやPDF、JPGやQuickTime関連のフォーマットに加え、一般的なOffice文書(Office 97〜2003)のプレビューができる(PPT、DOC、XLSなど)。ただ、Windows用Microsoft Officeの最新版であるOffice 2007で採用されたXML形式(拡張子の末尾にXがつく)には対応していない。もっとも、Windows Vistaであっても、何のアドオンもインストールしていない状態ではOffice 2007形式のドキュメントをプレビューすることはできないし、Offce 2003形式であってもPPT以外のプレビューはほとんどできないに等しいことを考えれば、Leopardのプレビュー機能は充実している。
Leopardのプレビュー機能がさらに優れているのは、PDFやQuickTime形式の動画であれば、Cover Flow表示のままページ操作をしたり、再生できたりする(画面10)ことだろう。トップページを見ただけでは、目的のファイルかどうかの確認ができない時など、ちょっとした時に役立つ機能だ。
アプリケーションを起動せずにファイルの中身を確認できるQuick Look
この充実したプレビュー機能を実現しているのが、Leopardから導入されたQuick Lookと呼ばれる機能だ。Quick Lookは、Leopard上のアプリケーションから呼び出すことができる、汎用のビューワとでもいうべきものである。Cover Flowのプレビューに使われているだけでなく、エンドユーザー向けのバックアップソフトであるTimeMachineなど、さまざまなところでQuick Lookは利用されている(動作サンプルはこちら)。
Quick Lookは、システムにインストールされているアプリケーションソフトとは独立した存在であるため、特定のデータを作成可能なアプリケーション(特定データに対する既定のアプリケーション)がインストールされていなくても、Quick Lookだけでファイルを開いて、中身を見ることができる(画面11と画面12)。先のPPTの例でいうと、Microsoft Office for Macがインストールされていなくても、Quick Lookでプレゼンテーションの中身を見ることが可能だ(ただしデータの再現性がPower Pointと100%互換にならない場合がある)。
Quick Lookでファイルの中身を見たり、再生を行うには、ツールバーにある瞳のボタンまたはスペースバーを押すか、コマンド+Yキーのショートカットを利用する。呼び出す表示モードはCover Flowに限らず、アイコン表示やカラム表示からでもQuick Lookで表示することが可能だ。プレビューといってもQuick Lookだけでフルスクリーン表示までできるから、かなり使えるものであることは間違いない。すでにQuick Lookは多彩なファイルフォーマットに対応しているが、新たなファイルフォーマットに対応したプラグインを追加することが可能なアーキテクチャになっており、今後、さらに対応するフォーマットが増えることが期待される。
Mac OS Xならではの利点とは?
このように機能拡張が行われたFinderだが、Windowsユーザーから見て、Finderが使いやすいと感じるのは、もっと基本的な部分にもある。例えば、Windowsでフォルダの階層をたどって行く場合、開くフォルダごとに表示が変わってしまうことがよくある。一番上位のフォルダの表示が詳細表示になっていたのに、フォルダを掘り下げていくと突然大きなアイコン表示に切り替わる、といった現象だ。上位フォルダの表示モードと異なるだけでなく、そのフォルダを前回開いた時の表示モードとも異なるため戸惑ってしまう。
さらにこのフォルダのコンテンツが動画であった場合、アイコンに中身を縮小表示するため、その動画に応じたCODECを用いたデコードが行われる。Windows XPでは、1つのフォルダに一定以上の数の動画があると、このデコードによりExplorerが落ちるという問題があり、これを回避するには縮小表示を無効にする必要があった(さすがにWindows Vistaではそのようなことはなくなった)。
Finderでは、表示モードはウィンドウ毎に設定可能だが、次に開く場合の表示モードは常に最後に利用した表示モードが用いられるため一貫している。もちろん、動画がたくさんあるフォルダを開いたからといって、Finderが落ちることはない(少なくとも、まだ筆者は経験したことがない)。また、Mac miniなど、CPUとGPUともに比較的非力なシステムであっても、Finderの表示はCover Flowモードも含めて結構軽い。これも汎用性が強く求められるWindowsに対して、一定の範囲のハードウェアへの対応だけを前提にすればよいMac OS Xの利点かもしれない。
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