インテルが選んだ2007年10大ニュース
恒例行事が目白押しの師走がやってきた。1年を振り返るこの時期、インテルが選んだ2007年のハイライトはちょっと意外な話題だった。
インテルは、12月10日に2007年最後となる定例記者会見を行い、吉田和正代表取締役共同社長が、2007年の総括と2008年の展望を述べた。
2007年の総括で吉田氏が最初に示したのは「インテル10大ニュース」と題するスライド。その中で、1位となったのが11月に発表された45ナノメートルプロセスルールCPUの発表だ。しかし、インテルが訴求するのは「Penryn」「Yorkfield」「Core 2 Extreme QX9650」という、PCユーザーが興味を持つ固有名ではなく、「鉛およびハロゲンフリー」という環境に関する特徴と「Hi-k」(High-k)という技術だ。
High-kは、「トランジスタ開発における最も大きな革新」とインテルが機会あるごとにアピールしていたので「なるほど」と思えるが、「鉛およびハロゲンフリー」については、(確かにこちらも発表会などで必ず紹介されているが)いささか地味な印象を受けるユーザーも多いだろう。
しかし、吉田氏は、High-Kがもたらす「トランジスタ集積度が約2倍に」「トランジスタスイッチング速度が20%以上向上」「トランジスタスイッチング電力が30%削減」「リーク電力が10分の1に」というメリットも、「消費電力が少なくなることで“エコプロセッサ”が実現した」に結びつけるなど、こちらも環境に対する貢献度をアピールした。
2008年の展望として吉田氏がまず紹介したのは、モバイルプラットフォームに関する話題だ。「2008年前半に」(吉田氏)登場する予定という「Santa Rosa Refresh」では、45ナノプロセスルールを導入したノートPC向けCPUが登場し、第5世代Centrinoとなる「Montevina」(開発コード名)もリリースされる予定になっている。また、「B5、A5サイズ、ディスプレイは10インチ以下となる」(吉田氏)UMPCでは「Menlow」(開発コード名)も控えているなど、2008年に登場する予定の新しいプラットフォームを説明した。
一方、モバイルコンピューティングのネットワークインフラとして大いに期待され、現在、事業者の選定作業が進んでいるWiMAXに関しては、2007年におけるインテルの活動(WiMAXフォーラム、ワイヤレスブロードバンド企画企業それぞれへの貢献)を紹介するにとどまった。
吉田氏が、2008年の展望として多くの時間を割いたのが、デジタルヘルスに関わる活動だ。インテルは、2005年からデジタルヘルス事業を立ち上げているが、その活動について、具体的な活用例などを交えながら説明。「2008年は“パーソナル・テレへルス”を進めていく年になる」と吉田氏が述べた「パーソナル・テレへルス」とは、個人が自分で健康状態を把握し、そのデータを医師や医療機関と共有するために、IT技術を用いるシステムとプラットフォームのことで、米国の退役軍人省ではすでに導入されて大幅な医療費削減を実現していると吉田氏は説明した。
吉田氏は、現在の医療機関で使われている情報ネットワークシステムについて「標準が少ない」と述べ、さまざまな機器を連携させてデータを共有するための共通インタフェースに関する標準規格の必要性を訴えた。インテルが考えるパーソナル・テレへルス構想では、接続のハブとなる「パーソナル・テレへルスプラットフォーム」が用意される。これは、操作が容易なタッチパネルやTV電話を搭載したデバイスとなる予定で、現在インテルで開発が進められていると吉田氏は説明している。
「インテルのプレゼンスが大いに発揮された年」と吉田氏が振り返る2007年は、クアッドコアの「Kentsfield」の発表に始まり45ナノプロセスルールとHigh-kという技術革新を導入したCPUの登場で締めくくられようとしている。2008年はモバイルプラットフォームと新世代アーキテクチャを導入する「Nehalem」の登場が予定されているが、それにも増して、多くのユーザーに「安定して、安価に、便利に」(吉田氏)IT技術を利用してもらえる環境とサービスを提供できるかが、インテルが本当に目指すところであると、吉田氏は訴えている。
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