異国で80台のThinkPadを2週間ごとに接続する
10月4日に本戦が行われたF1日本グランプリで、レノボが支援するマクラーレン・メルセデスが3位に入賞した。彼らを支えるレノボのシステムと“苦労”に迫る。
グローバルでレノボの知名度を向上させる
レノボはスポーツチームへのスポンサードを積極的に取り組んでいる企業だ。日本でも、2007年のシーズンで東京ヤクルトスワローズのヘルメットにレノボのロゴが張られていたのを、熱心なファンは覚えているだろう(このときの詳細は2007年のスワローズは「インテル貼ってる」を参照のこと)。
当時の記者会見で「誕生して日が浅く、認知度にまだまだ向上の余地がある」とレノボ・ジャパンは述べていたが、この考えはグローバル市場でも同様で、この数年で開かれた全世界的なスポーツイベントに、レノボは積極的にスポンサード活動を行っている。2008年の北京五輪でも、システムの援助という裏方支援だけでなく、なにかと話題になった聖火リレーにレノボデザインのトーチを提供するなど、その知名度はグローバル規模で認知されつつある(レノボの北京五輪における活動は2008北京オリンピックはLenovo抜きに語れないを参照のこと)。
グローバル規模で展開されているスポーツイベントの1つが、フォーミュラ・ワン(F1)だ。レノボもこのイベントに積極的に取り組んでいる。熱心なF1ファンの中には、2007〜2008年シーズンでAT&Tウィリアムズの車体とリアウイングに張られた「Lenovo」「ThinkPad」のロゴを記憶しているかもしれない。
Lenovoは、2009年のシーズンでそれまでのAT&Tウィリアムズからボーダフォン・マクラーレン・メルセデスにスポンサードコンストラクターを変更した。残念ながらF1の車体からLenovo、ThinkPadのロゴはなくなってしまったが、それでも、Lenovoのハードウェアはボーダフォン・マクラーレン・メルセデスの活動を支えている。
123台のThinkStation S20と80台のThinkPad W500
F1の活動でレノボのハードウェアが関わるのは、マシンの設計部門という根幹部分からレースのピットワークまで多岐にわたる。パイロットのバイタルステータスにいたるすべてのデータが勝利に影響する現代のモーターレースにおいて、チームのあらゆるデジタルデータを管理するハードウェアを提供するレノボの役割は大きい。
英国にあるマクラーレンの車体設計オフィスには、レノボのThinkStation S20が123台稼働して、CADデータの管理やシミュレーションを行っている。マクラーレンの技術者によると、シミュレーションの演算時間がそれまで使っていたサンマイクロシステムズのUltra 45で要した時間の7割で済むようになったほか、設計図の変更をA0版7枚にも及ぶCADデータファイルに反映する処理時間が従来の25%に短縮されたという。また、テスト走行やレース本番では、当然オフィスから出てサーキットなどでチームのサポートを行うことになるが、レノボでは、そのために使うThinkPad W500を80台提供している。
10月4日に鈴鹿サーキットで本戦が行われた2009 F1 日本グランプリでも、ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのピットには80台のThinkPad W500(それと、ピットクルーが私的に利用している複数のThinkPadなど)が、雨の鈴鹿サーキットをフリー走行するマシンのチューニングにフル稼働していた。マシンの状態からパーツのメンテナンス情報の管理だけでなく、サーキットを周回して得られたドライビングログとパイロットの意見を反映して行われるセッティングチューニングなど、ThinkPad W500はあらゆるシーンで活躍していた。
2週間おきにネットワーク環境を立ち上げる苦労
ビットで使われている80台のThinkPad W500やマクラレーンのオフィスで稼働している123台のThinkStation S20は、ネットワークで接続されて情報が共通できるようになっている。現代のオフィスでは当たり前のように思えるかもしれないが、F1のコンストラクターは、これだけの規模のネットワーク環境を、転戦する世界各地で2週間ごとに立ち上げなければらならい。情報システム管理者なら、その苦労は胃が痛くなるほど分かるのではないだろうか。
ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのスタッフによると、ピット内のネットワークインフラは自分達で用意した無線LANで構築するが、外に向けたネットワークはサーキットに用意されたインフラやその国、地域のネットワークインフラに影響されるという。
ピットの立ち上げはフリー走行が始まる2日前から作業に入るが、その前にスタッフが調査に入ることも少なくない。F1が行われる国の中にはネットワークインフラが十分でないところもあって、いろいろと苦労があるそうだ。どうしてもネットワークが構築できないときには、ボーダフォンのワイヤレスWANで外部とのネットワークを確保したときもあったと、ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのスタッフは語っている。
絶好調だった2008年(コンストラクターズチャンピオンシップはフェラーリに次いで2位)から一転して、2009年のシーズンは苦戦続きだったボーダフォン・マクラーレン・メルセデスだが、日本グランプリ終了時点でコンストラクターズチャンピオンシップの順位で4位まで上げてきた。鈴鹿でルイス・ハミルトンは3位に入賞し、ヘイキ・コバライネンもフリー走行のタイムアタックで1位を取るなど、復調の兆しが見える。2009年のシーズンはわずか2戦を残すのみだが、サンパウロとアブダビで勝利を目指すボーダフォン・マクラーレン・メルセデスを、レノボのハードウェアは確実に支えていくだろう。
(掲載画像提供:レノボ・ジャパン)
関連記事
- 「なにもかもが“はやく”“最高”が望まれる」──F1チームを支えるテクノロジー
BMW Williams F1 Teamのテクニカルスポンサー、HP。チームへの技術提供として実践投入されるそのテクノロジーはどのようなものなのか、そして一般ユーザーにはどのような影響・効果があるのだろうか。 - 2008北京オリンピックはLenovo抜きに語れない
2006年のトリノ冬季オリンピックに続き、2008年夏の北京オリンピックでもハードウェアの提供を行っているLenovo。その舞台裏を紹介しよう。 - 2007年のスワローズは「インテル貼ってる」
レノボとインテルのロゴがヤクルトスワローズのユニフォームに入る。「監督」「選手」のマルチタスクで苦労する古田さんもこれでパワーアップ間違いなし。 - ThinkPad T400sの「歴代最高」なキーボードを“ガシガシ”たたいてみた
標準電圧タイプのCPUとチップセットを搭載しながら薄型軽量ボディを実現したThinkPad T400s。しかし、このマシンの価値はキーボードにあるという。その真実に迫ってみた。 - “Think”のノウハウをワークステーションに凝縮──「ThinkStation S20」の内部に迫る
レノボの「ThinkStation」は、HPCで求められる高い信頼性とメンテナンス性はもちろん、ワークスペースで必要な「もう1つ」の特徴を備えていたのだ。 - サブディスプレイはどう使う?──レノボ「ThinkPad W700ds」“ながら見”レビュー
そのサイズに驚いた“ds”なThinkPadの速報はCESリポートで紹介しているが、今回はその実用性を検証。プロユースだけでなく“遊び”モードでもチェックした。 - IBMの伝統を守る「ThinkPad X200 Tablet」は何が変わったのか
ThinkPadシリーズで異色の存在となる「ThinkPad X200 Tablet」。しかし、本機にはIBMからの連綿たる歴史が刻まれている。その最新モデルを試した。 - ワイド液晶を搭載して生まれ変わった「ThinkPad X200」の実力を探る
ビジネスツールとして人気の高いレノボのThinkPadで、携帯性に優れたXシリーズ。今回はThinkPad X200をチェックした。 - これならプロも使えるワークステーションノート──レノボ「ThinkPad W700」
ThinkPadラインアップに加わった最大級のThinkPadは17型ワイド液晶にクアッドコアCPUだけじゃない。デジタイザにカラーキャリブレータと、これまでにない機能を満載する。 - 注目機能を搭載したパフォーマンスモバイル──レノボ「ThinkPad T500」
Centrino 2の導入をきっかけに、ラインアップを一新したThinkPadシリーズ。ハイエンドスリムノートの「T」シリーズもその性格を変えたのだろうか。 - 薄く、軽く、そして頑丈なモバイルノート――写真で解説する「ThinkPad X300」
13.3インチワイド液晶と光学ドライブを搭載し、厚さ18.6〜23.4ミリ、重量約1.42キロを実現した「ThinkPad X300」。そのボディをじっくりチェックした。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.