中国をよく知る中国メーカーが作った電子ブックリーダーを買っちゃった:山谷剛史のアジアン・アイティー(2/2 ページ)
どうやら中国でも電子ブックリーダーが流行しているとのこと。「え、Kindle? iPad? それとも?」と思いきや、意外とまじめなブツらしい。コンテンツ以外は。
なるほど! Wi-Fiはいらないね。
F30に用意されたメニューは「最近読んだファイル」「電子書庫」「中英辞典」「音声付き読み物」「画像閲覧」「メモ」「設定」で構成される。画面描画の速度はKindleと同じように「もっさり」しているので、せっかく用意されたメモ機能も入力スピードに画面表示が追いつかないほどに反応が遅くて、どうにもこうにも使えない。
F30は、利用できる言語として英語か簡体字中国語、繁体字中国語を設定画面で選択できる。表示フォントも中国語フォントの中から選択が可能だ。音声読み上げ機能もサポートしていて、男女の音声を選べるほか、北京語か広東語かを選択できるあたり、中国の事情をよく反映している。日本語もPDFファイルやMicrosoft Wordで作成したdocファイルなら問題なく表示できる。なお、Microsoft Wordのファイルが利用できたので、Microsoft Excelで作成したファイルやPowerPointで作成したpptファイルも利用できるかと思ったが、こちらは、対応しておらずメニュー画面でも表示されない。
と、ここまで確認したところで、本体のカードスロットに4GバイトのmicroSDを発見した。新品を購入して開封したばかりだから、「誰かの忘れもの」ではない。ということは、標準付属品ということになる。先ほど説明したように、コンテンツはPCでダウンロードして、USB経由かmicroSD経由でF30に持ってくるしかないので、標準で付属するのは当然だろう、と、microSDにアクセスしたら、「ぬあああおおおーっ!」と叫ぶほどに驚いた。なんと、新品のF30に差さっていたmicroSDに最新の単行本から杜甫の漢詩、果ては、“カンフーパンダ”の英文や中文といった音声付読み物などなど、“2Gバイトを超える”コンテンツが収録されていたのだ。
そういえば、パッケージには2枚のDVDも付属していたな、とそちらの1枚をチェックすると、「のええええぇぇぇぇ!!」と叫ぶほどに驚いた。textファイルだけで、なんと1万3000以上ものファイルが収録されていたのだ。もちろん、テキストファイル1つが書籍1冊に相当する。本体価格が1880元で1万冊以上の書籍データが付属するわけで、それだけの書籍を購入することを考えたら、余裕で元が取れる計算となる。電子書庫が収録されたフォルダの中に「外国著作」フォルダも見つけてしまい「ちゃんと外国まで行って許可取っているのかな?」とか心配もしてしまうほどに、収録コンテンツは充実している。
なお、もう1枚のDVDには、“漢王が独自に策定したPDFファイル”にコンバートするユーティリティや“漢王が独自に策定したPDFファイル”を作成するアプリケーションが収録されていた。「漢王書城」というWebサービスもオープンしており、1冊2元(約27円)から高くても15元(約200円)で、“漢王が独自に策定したPDF”の電子書籍が購入できる。
ちなみに、中国では、ネット小説が大変な人気になっている。その読者のうち、3分の1はPCで、3分の1が携帯電話で、そして、残りの3分の1が両方で利用している。この夏、中国を旅行するならば、地下鉄やバスの車内で携帯電話を片手にネット小説を読む人をよく見かけるだろう。
AppleやAmazon.comのように特定のショップからコンテンツを購入するのではなく、microSDという汎用な手段でコンテンツを取り入れ、そもそも、読みきれないほどのコンテンツを標準で付属する、中国で最も普及している漢王の電子ブックリーダー。「中国の事情と嗜好を上手に取り入れた、実に巧みな製品企画だなあ」と、意外にも感心してしまったりする。
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