“ハイブリッドモーションPC”はアリなのか?――「FMV LIFEBOOK TH40/D」実力診断:普通のタブレットに飽き足らない人へ(4/4 ページ)
キーボード付きのタブレット、といってもAndroidではありません。Windows 7のフル機能とキーボードを薄型軽量タブレットに詰め込んだ「TH40/D」、果たしてその実力は!?
薄型軽量と低価格を重視した半面、パフォーマンスは控えめ
それでは、各種ベンチマークテストの結果を見てみよう。参考までにAtom Z520(1.33GHz)を搭載したミニノートPCとして、「Eee PC T91MT」(メモリ2Gバイト、SSD 32Gバイト、GMA 500、32ビット版Windows 7 Home Premium)と、「Viliv N5」(メモリ1Gバイト、SSD 32Gバイト、GMA 500、Windows 7 Starter)の結果も併記した。
まずはWindows 7標準の性能評価機能であるWindowsエクスペリエンスインデックスからだ。Atom Z670(1.5GHz)搭載のTH40/Dは、Atom Z520(1.33GHz)搭載機に比べると、ゲーム用グラフィックスのサブスコアに若干進歩が見られるものの、そのほかは同レベルだった。プロセッサのサブスコアは「2」と低調だ。
総合ベンチマークテストのPCMark05のスコアは、Graphicsのみ少しよい傾向があるが、CPUでは負けている。PCMark 7については、低スペックPC向けの「Lightweight」テストのみ実行したが、スコアは「435」だった。通常電圧版のCore i5(Sandy Bridge)を搭載したノートPC(HDDモデル)では1700前後のスコアが出るが、当然ながらそれには遠く及ばない。なお、3DMark06などの3Dグラフィックス系ベンチマークテストはエラーが出てしまい実行できなかったため、割愛した。
パフォーマンステストは全体的に振るわなかったが、実際の体感的な印象もやはり遅く感じる。CPUのAtom Z670もそうだが、メモリ容量が1Gバイトしかなく、データストレージに低速な1.8インチのHDDを搭載していることも要因だ。
Windows 7上で何をするにもワンテンポかツーテンポ待たされる感があり、昨今はサクサク操作できるiPadやAndroidタブレッドが多数出回っているため、数年前のAtom搭載ミニノートPC全盛時代のときよりも体感速度が遅く感じてしまう。
テスト結果の比較対象として掲載した2機種はデータストレージにSSDを選択していたため、せめてSSDは採用してほしかったところだ。
バッテリー駆動時間、静音性、放熱性でプラットフォームの強みを発揮
バッテリー駆動時間のテストは、BBench1.01(海人氏・作)で行った。BBenchの設定は「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」だ。無線LANで常時接続し、WebブラウザはInternet Explorer 9を指定している。Windows 7の電源プランは「バランス」(ディスプレイの輝度40%)を利用した。この設定でテストしたところ、バッテリー残量4%で休止状態へ移行するまで、約239分(3時間59分)だった。
公称値の約6時間よりは短いが、モバイルPCとして最低限の水準を満たしているといえる。薄型軽量ボディのため、バッテリー容量が23ワットアワーしかないことを考えると、やはりプラットフォームの省電力性能は優秀だ。
ファンレス構造なので動作音は当然ながら静粛で、静かな部屋でもHDDの動作音がたまに聞こえる程度だった。ファンレス構造ながら、ボディの発熱がほとんど気にならないのも好印象だ。システムに高い負荷をかけると底面の右側が少し熱を持つが、それも暖かいと感じる程度にとどまっていた。室温27度の環境でPCMark 7(Lightweight)終了直後の温度を放射温度計で計測したところ、キーボード表面が29.5度、底面の左側が35度、底面の右側が37度だった。
パフォーマンス面に課題はあるが、可能性を感じるモバイルPC
TH40/Dの価格は、富士通直販の「WEB MART」で7万9800円となっており、家電量販店では7万円を切るところも見られる(2011年8月15日現在)。32ビット版Windows 7 Home PremiumとOffice Personal 2010のプリインストールを考えると、価格は健闘しているといえるだろう。
ただし、低価格に配慮したスペック構成によるパフォーマンスの低さは惜しまれる。データストレージをSSDにするだけでも体感的な印象は変わるはずだが、直販モデルでもカスタマイズの選択肢が用意されていないのは残念だ。ミニノートPC代わりに最近勢いが増しているタブレットを検討しているようなユーザー層にまでアピールするため、せっかくこのような意欲的な製品を企画するならば、最初からSSDを導入するくらいの思い切った判断がほしかった。
その一方で、ハイブリッドモーションの採用による薄型軽量のボディ、小型PCマニアでなくても無理なく使えるサイズのキーボードやポインティングデバイスは「タブレットでも長めの文章の入力にはキーボードを使いたい」というユーザーのニーズにしっかり応えられるものと感じる。こうした要望のあるユーザーにとっては、タブレットとキーボードを一緒に携帯するよりもスマートだろう。
また遅いとはいえ、Windows 7ならではの高い汎用性やセキュリティ対策のしやすさ、オフィススイート完備によるビジネスへの導入の容易さ、そして充実して使いやすい端子類といった利点は見逃せない。バッテリー駆動時間も実用的な水準を保っており、ファンレス構造ならではの静音性、発熱の低さなどには大いに可能性を感じる。
新シリーズの第1弾ということもあってか、長所と短所がはっきりしたモデルになったが、ハイブリッドモーションの薄型軽量ボディはよくできており、今後の進化に期待したい。
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