自動販売機にCore i5を載せる理由:組み込みだけどAtomじゃない
「Embedded Technology 2011」に合わせて来日したインテルの“組み込み事業”幹部”が、同社の考える“組み込みに必要なもの”を説明した。
組み込みデバイスの付加価値は自己増殖する
インテルで、PCなどの“汎用利用”CPUではなく、主に“特定目的”に使うデバイスに搭載する“組み込み”向けCPUの事業を行う、インテリジェント・システム事業部のトップである、インテルアーキテクチャー事業本部 副社長 兼 インテリジェント・システム事業部長のトン・スティーンマン氏が、同社の組み込み市場に対する取り組みを紹介した。
スティーンマン氏は、現在のようにネットワークインフラが普及した環境ではデバイスを接続するだけでは十分でなく、取得するデータをどのように使うのかであり、これらの接続で入手できるデータでどのような価値を生み出すのかが重要だとする。
その価値には2種類あって、1つは、データを知識に変換することで、これは、さまざまなシステムやクラウドで共有するのかまで考えなければならない。もう1つは、各デバイスを接続するシステムをユーザーにどのように提供していくかで、例えば、救急車と病院の連動や、情報デバイスを搭載した車両と、道路に設置したライブカメラ、ITSなどの交通情報の連動のケースでは、それぞれのシステムを接続する方法とソリューションをどのように提供するかが重要になるという。
現在では、インテリジェント・システムが家電の分野にも採用するようになり、スマートディスプレイなどが登場することで、インテリジェント・システムと呼ぶ業界カテゴリーが登場している。調査会社のIDCでは、インテリジェント・システムのカテゴリーを組み込み機器分野の一部として扱っているが、すでに、出荷数で18億台と、その市場は、PC、サーバを合わせた規模より大きく、2015年には40億台になるとIDCは予想している。加えて、IDCではインテリジェント・システムのカテゴリーがこれから急速に拡大すると予測しており、そのペースは組み込み製品市場の3〜4倍のスピードという。
以前の組み込みデバイスでは、ネットワークに接続することなく単体ごとに独立して処理を行っていた。しかし、ネットワークに接続できるようになったことで、搭載したデバイスだけでなく、ほかの場所にあるインテリジェント・システムやクラウドから情報を取得し、その取得した情報を分析して予測される状況に合わせた対応をユーザーに提案、もしくは、システム自身が適切な処理を行うなど、新しい利用方法を生み出すことになると、スティーンマン氏は語る。
その具体的な例として、インテリジェント・システムを導入した“自動販売機”に搭載した監視カメラの映像から火災の発生を検知、さらに、クラウドでデータを共有しているほかのインテリジェント・システムから取得した周辺情報を基に、適切と判断した避難経路を自動販売機のディスプレイに表示、そして、消防署への通報まで行うことが(アイデアとしては)可能になる。スティーンマン氏は、これが、自動販売機として想定されている機能以上のことが、インテリジェント・システムの導入によって可能になって、ユーザーに付加価値を適用できることを示していると説明する。
あとのことを考えて自動販売機にCore i5
このように、インテリジェント・システムでは、開発段階で想定していた以上の機能を追加できるだけでなく、システム自身が学習して自分で実行するという、正のスパイラルが形成できる。
機能が追加できることで、追加した機能を実行するために、より高い処理能力が必要になる。そのため、組み込み機器の設計では、最初から高い処理能力を持たせる必要があるとスティーンマン氏は主張する。さらに、性能向上によって、ユーザーはより高度な機能を求めるようになる。こうして、処理能力に対する要求は際限なく高くなっていくという。
こうして、単体でも高機能になったインテリジェント・システムを相互に接続して、全体的に効率の高いシステムを構築して提供することで、生産性を改善できる。複数のデバイスを連動させて、全体としてより高い付加価値をユーザーに提供することが真の価値とスティーマン氏は述べる。
スティーンマン氏は、その例として病院のシステムを取り上げ、ベッドサイドのデバイスが、ナースセンターや医療システム、集中治療室の機器と接続するだけでなく、病院の外にあるヘルスケアの施設と連動することで、病院だけでは実現できない高度なサービスを利用者に提供できるアイデアを紹介した。
関連記事
- Intelが必要とするのはソフトウェアの力だ
Intelは、9月8日(現地時間)、米国において報道関係者向けカンファレンス「Intel Software Media Day」を開催し、ソフトウェアに対する取り組みを説明した。 - インテル、“Oak Trail”と“その先”を訴求
インテルは、4月27日に2011年の1〜4月における主な活動に関する報告と、IDF 2011 北京で発表した“Oak Trail”世代のAtomプラットフォームの説明を行った。 - インテル、組み込み機器向けAtomにFPGAを統合
インテルは、AtomのパッケージにFPGAを統合した「Atom E600C」シリーズを発表した。組み込み機器用として構成を柔軟にカスタマイズできるのが特徴だ。 - 袂を分かつインテルのモバイルアーキテクチャ
Intelのモバイル/携帯デバイス分野の次世代プラットフォームについて、いくつか進展があったので、その動きを整理しよう。 - AtomとARMは競合しない
“PC USER”的には「Netbook、Nettop、MIDのためのCPU」で十分なAtomだが、その守備範囲はもっと広い。その「Atomの別な顔」をインテルが説明した。 - ARMはAtomを撃退できるのか
インテルが何度となく挑んできた組み込み向け市場に君臨するARM。「AtomはARMより優れている」と喧伝する“挑戦者”インテルに“王者”ARMが反論した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.