前編 妥協なきデザインのUltrabookから富士通を変えていく:「FMV LIFEBOOK UH75/H」完全分解&開発者インタビュー(1/5 ページ)
見た目も中身も徹底的にこだわり抜いた富士通初のUltrabook「FMV LIFEBOOK UH75/H」。その洗練されたデザインから内部の作り込みまで、開発陣に思う存分語ってもらった。
→・後編 MADE IN JAPANの“360度こだわりUltrabook”を解剖する
富士通初のUltrabookを作り上げた開発陣にロングインタビュー
国内外のPCメーカーがこぞって投入するUltrabook。その注目機種の1つに、富士通初のUltrabook「FMV LIFEBOOK UH」シリーズの上位機「UH75/H」が挙げられる。
細部まで配慮が行き届いたボディデザインと、HDD搭載ノートPCで世界最薄※をうたう15.6ミリ厚、約1.44キロの薄型軽量ボディが魅力的な14型Ultrabookだ。島根富士通にて生産される“MADE IN JAPAN”のUltrabookという点も見逃せない。
これまでのFMVシリーズと見た目も中身も大きく異なるUH75/Hは、どのようにして生まれたのか。今回は開発チームに製品化の経緯や各部のこだわりについてうかがいつつ、実機を分解して内部構造を確かめてみた。
インタビューに応じていただいたのは、開発全体を統括した小中陽介氏、構造設計を担当した松下真也氏、デザインを手がけた岡本浩平氏と手嶋隆史氏、FMV全体のデザインを取り仕切る藤田博之氏の5人だ。
※最厚部(突起部除く)の寸法。2012年5月9日現在。富士通調べ
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ライバルに差を付けるために掲げた2つのキーワード
―― 予想以上に細部まで入念に作り込まれたUltrabookが富士通から出てきて正直なところ驚きました。開発はいつ頃から始めたのでしょうか?
小中氏 初期の企画段階では“Ultrabook”という言葉がまだありませんでした。ですが、「今のモバイルPCの次に来るモノはなんだろう?」と考えるプロジェクトを水面下で進めていて、その時点でかなり実際の製品に近いイメージができていました。
そうこうしている間に、2011年の夏前になり、インテルがUltrabookの構想を明らかにしました。その内容が我々の考える次世代PCの姿に合致したため、同年の7月頃にUltrabookとして開発がスタートしたという流れです。
Ultrabookより前に考えていた仕様とは、アクリルトップに近い狭額縁でフルフラットな液晶ディスプレイや、薄くて軽いボディといったものですが、こうしたコンセプトをUltrabookの枠組みの中で固めていき、具体的なスペックを決めたのは10月頃のことでした。Ultrabookを出すのは後発ですが、短い期間でどこまでやれるかという勝負でした。
―― Ultrabookはライバルも多く人気の製品ジャンルに成長しましたが、どのような差異化を目指したのでしょうか?
小中氏 確かに、世間ではすでに第1世代のUltrabook(第2世代Coreベース)が多数販売されており、富士通が参入するのは第2世代のUltarbook(第3世代Coreベース)からになりました。
そこで、どう富士通らしさを打ち出して、差を付けるべきかと考えた場合、FMVブランドが大事にしてきた幅広いユーザーへの安心感に通じる「HDD内蔵のUltrabook」というキーワードと、さらなる挑戦としての「こだわり抜いたデザイン」というキーワードを掲げることにしました。この2つが大きなポイントになっています。
大容量で使いやすいHDDに高速なSSDキャッシュ技術を組み合わせつつ、HDD搭載のノートPCには見えない薄型のデザイン、さらにいうと、これまでの富士通のPCとは一線を画す洗練されたデザイン、ユーザーが持ち歩いて見せたくなるデザイン、といったレベルまで昇華させることを目標に掲げました。
突き抜けるために変更した開発フロー
―― 2つのポイントのうち、まずは外観のデザインからお聞きします。ここまで凝ったボディのデザインはFMVとして初めてだと思いますが、いつもと違う開発手法などを採り入れたのでしょうか?
小中氏 まさに、その開発のやり方を変えたのが、今回の大きな収穫でした。通常はモバイルノートPCを開発する場合、技術者側がHDDやバッテリー、各パーツの大きさを考慮して、「デザインしない状態でのサイズや形はこれくらいになるので、ここからデザインしてくださいね」とデザイナーに依頼するという開発フローがほとんどでした。「LOOX U」のようにデザイナーの意見をかなり採り入れた製品もありましたが、根本のやり方を変えるところまでは行っていませんでした。
こうした開発手法はPCの開発において合理的なのですが、それでは一定の水準を超えた製品が生まれにくいのも事実です。今回の場合、「PC業界で明らかに一線を越えたな」と思えるような薄さを出すのに、技術優位での開発フローでは難しいと感じました。
そこで、今回の場合はそこから1歩進んで、技術者側から「限界の薄さ」を提示しました。これはUltrabookの要件を満たしつつ、7ミリ厚のHDD、液晶パネルの厚さ、長時間駆動を想定した場合のバッテリーの厚さなど、パーツごとに規格などで決められていて「削ることのできない厚さ」を組み合わせたもので、「この時期にPCメーカーが量産する製品だったら、世の中の誰もが超えられない寸法」となる数字です。
デザイナーにこの数字を渡したうえで、どのような使われ方をするのか、というユーセージの議論を繰り返し、まずは最初にベースとなるモックアップを作りました。最厚部の厚さでも15.8ミリしかない薄いUltrabookのモックアップです。
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