SSDの容量、性能、耐久性、電力効率を高める「3D V-NAND」とは何か?:NANDフラッシュは1Tビット時代へ(4/4 ページ)
SSDに使われるNANDフラッシュメモリは記録密度向上のスピードが鈍化し、プロセスルールの微細化も限界が見えてきた。Samsungは3次元構造のNANDフラッシュメモリ「3D V-NAND」により、こうした問題を解消する。
データセンター向けの最新SSDも発表
キーヒュン・キョン氏が3D V-NANDの解説を行った後、再びジム・エリオット氏が登壇し、「Samsung SSD Leadership」と題した講演を行なった。文字通りSSD業界における同社のリーダーシップをアピールする内容だ。
SSD市場は、今後も成長を続けていき、容量需要は2018年には2014年の5.7倍になると予測した。中でも上昇が見込まれるのが、データセンター向けだ。設置スペースのコストと冷却コストを低減できるメリットから、TCO削減効果の高さが注目を集めている。また、仮想化トレンドがパフォーマンスと大容量ストレージスペースの要求を高めていることも紹介した。
Samsungはこれまで、SSDのリーディングカンパニーとして、大容量化、高速化、低コスト化といったPCマーケットのニーズに応えるソリューションとして、TLC NAND搭載SSD、PCI Express対応SSD、NVM Express(NVMe)対応SSDなどを世界に先駆けて投入し続けてきた。データセンター向けも同様であり、今後も3D V-NAND技術とともに業界をリードしていくとした。

SSDの需要は2018年までに容量ベースで5.7倍に成長し、中でもデータセンター向けの需要拡大が見込まれている(写真=左)。4K対応テレビや高画素デジタルカメラの普及など、コンテンツのリッチ化が進むことにより、容量の需要は今後も伸びていく(写真=右)
世界で初めてTLC NAND(3ビットMLC)を搭載したSSDとして、「Samsung SSD 840」を発表(写真=左)。続く第2世代の「Samsung SSD 840 EVO」は世界で1000万台を出荷し、SSDの普及に大きく貢献したという。世界初のクライアントPC向けPCI Express SSDとして「XP941」を投入(写真=右)。続く第2世代ではPCI Express 3.0 x4、NVM Expressに対応している
第2世代の「XP941」は、Serial ATA 6GbpsのSSD 840 EVOに比べて、最大帯域は7倍に、レイテンシは1/3に改善されているという(写真=左)。「SM951」は近いうちに発表される初のNVM Express対応PCに搭載される予定の最新PCI Express SSDだ(写真=右)。シーケンシャルリードは1600Mバイト/秒、シーケンシャルライト1000Mバイト/秒、ランダムリード130000IOPSなど、相当なスペックが掲載されている
各種クラウドサービスのストレージとしてSSDが採用されてきている(写真=左)。2014年にはGoogleがテンポラリストレージではなく、永続的なストレージとしても採用している。データセンターの管理コストのうち31%は電力管理コストであり、ストレージは17%を占めている(写真=右)。省電力で低発熱なSSDの採用が、TCO削減のアプローチとして注目されている
SSDはTCOの削減をもたらす(写真=左)。同社のTLC SSDならば、HDDサーバと同じコストで同時アクセス処理数は60%向上、電力は12%削減、サーバー数は22%削減できる。「XS1715」は世界初のデータセンター向けNVM Express対応SSD(写真=右)。デルが発表した世界初のNVM Express SSD搭載サーバーに搭載されている
SSD 845 DC EVO、およびPM853Tは、世界初のTLC NANDフラッシュ搭載のデータセンター向けSSD(写真=左)。TCO削減ニーズに最適な製品である。3D V-NANDの大容量、高性能、高耐久性、高電力効率といったメリットを改めて紹介(写真=右)。クライアントPC、データセンターのニーズに高いレベルで応えることができる
同社は世界No.1のSSDサプライヤーであり、今後も3D V-NANDとともに業界をリードしていくと強調(写真=左)。続いて、データセンター向けSSDの新モデルである「SSD 845 DC EVO」「SSD 845 DC PRO」の発表へ(写真=右)なお、データセンター向けSSDについては、SSD 850 PROの製品発表に続いて、データセンター向けSSDとして、「Samsung SSD 845 DC EVO」と「Samsung SSD 845 DC PRO」の2製品が新たにお披露目された。
SSD 845 DC EVOは、コンテンツ配信サーバなどリード中心用途向けの廉価モデルで、データセンター向けとしては初のTLC NAND搭載SSDだ。不意の電源断の際にライトキャッシュ中のデータが消失することを防ぐためのタンタルコンデンサを実装している。
一方、SSD 845 DC PROはアプリケーションサーバやデータベース向けのSSDだ。ライトが集中する用途を想定してファームウェアのアルゴリズムを最適化しており、パフォーマンスの持続性が優れている。こちらは第1世代の3D V-NANDを採用しており、サーバ向けSSDの耐久性の目安であるDWPD(Drive Writes Per Day=1日あたりの全ドライブ書き換え可能回数)も10DWPDと高い。

SSD 845 DC EVOはコンテンツ配信などリード中心の用途向け、SSD 845 DC PROはデータベース、アプリケーションサーバーなどライト集中用途向けだ(写真=左)。SSD 840 DC PROはきわめて高いパフォーマンスの持続性を誇り、書き込みを長時間続けても性能が落ちない(写真=右)
SSD 845 DC EVOとSSD 845 DC PROの性能比較。ランダムライト性能で大きな差がある(写真=左)。SSD 845 DC EVOはリード用途に特化したSSDであることがよく分かる。SSD 845 DC EVOとSSD 845 DC PROの耐久性、保証期間の比較(写真=右)。3D V-NANDを搭載しているSSD 845 DC PROは、14600TBW(800Gバイトモデル)、10DWPDと頻繁な書き換えに耐える
会場に展示されていたSSD 845 DC EVOは、コンシューマー向けSSDにある下部のワンポイントがない(写真=左)。会場に展示されていたSSD 845 DC PROの見た目は、SSD 845 DC EVOとほとんど変わらない(写真=右)Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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