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新iPadだけじゃない Appleが教育現場でGoogleと大きく違うこと本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

Appleはコンピュータシステムを用いたハードウェア製品の企業であり、Googleは検索エンジンをスタート地点にした広告事業の企業といえる。スマートフォンやテレビ向け端末などでも、そうした立ち位置の違いが垣間見えることが少なくないが、教育市場においては、さらに違いが明確になっている。

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高めてきたiPadの生産性・創造性を教育現場へ

 こうした違いは、そのまま「iWork」(あるいは「Microsoft Office」でもいい)と「G Suite」などの生産性アプリの関係に近い体験や機能面の差(良い悪いではなく特徴の違い)を産んでいるが、さらに突き詰めると両社が目指す方向の明確な違いに行き着く。

 Appleはここ数年、iOSや自社製アプリの改良を通して、iPadを「クラウドサービス時代の情報に接する窓」という位置付けから「クラウドを中心としつつも、端末機能の強化やユーザーインタフェースの改良で生産性や創造性を高める道具」へと変貌させようとしてきた。その方向が明確になったのが、iPad Proシリーズといえる。

 これまで積み重ねてきたiPadの生産性、創造性の向上を背景に、Apple Pencil対応をベーシックなiPadに盛り込むことで、端末自身の性能と改良を進めてきたアプリが持つ価値、体験を教育現場に生かそうと作り込んできたのが今回の発表である。

 Appleは教育機関向けに授業の進行管理を行う「Classroom」というアプリを提供していたが、今回はiPadに加えてmacOS向けにもClassroomを提供した。そして、目玉となるのが「Schoolwork」というアプリの追加だ。

 Schoolworkでは、授業の際に用いるクラスルームに対して、各種連絡事項を伝える文書の配布、課題・宿題を生徒個別、あるいはクラスメンバー全員に与え、それぞれの進捗状況を管理するなど、授業中以外に必要となる機能が提供されている。

 これら教育機関向けの教師用アプリと連携する機能は、「ClassKit」というAPIにまとめられており、「Schoology」などiPad向けの代表的な教育アプリやApple製の各種アプリが対応する。

Classroom
macOS向けにも「Classroom」を提供(6月からβ版提供)
Schoolwork
生徒1人1人の進捗状況を把握できる「Schoolwork」

 iWorkに含まれる文書作成、表計算、プレゼンテーションといったアプリに加え、音楽制作の「GarageBand」、アニメーション制作の「Clips」などの機能を強化し、教育向けにも扱いやすくした上でClassKitに対応する。iWorkの各種アプリは「iBook」データの制作機能が統合され、本形式の教材として配布も容易に行える。

 また、紙時代からの教材や学習スタイルの電子化だけでなく、電子端末ならではの教育プログラム開発を促すため「Everyone Can Create(誰でも創造できる)」という、教師向けの取り組みをスタートさせる。写真、動画、音楽、描画といったデジタルメディアを通じた教材、教育プログラムの事例や教材を提供し、教師自身がそれらを学ぶ機会をApple Storeに設ける。

 Appleはプログラミングを容易に教育現場へと導入できるよう、「Swift Playground」の無償提供とともにプログラミング学習教材や手法を「Everyone Can Code」の名の元に展開しているが、その切り口を“クリエイティビティを刺激する”方向へと切り替えたものだ。

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