新「MacBook Air」を検証して分かった“8年ぶり刷新”の成果:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)
やっと投入された新しい「MacBook Air」の実機をいち早くレビュー。12型「MacBook」、13.3型「MacBook Pro」との比較も交えつつ、多角的にこの新モデルの実力を探る。
意外にも良好な「シングルコア」の性能
「新しいMacBook Airはプロセッサのパフォーマンスが心配」という声は、最新の第8世代Core i5搭載とはいえ、それが「Yシリーズ」といわれる最も低消費電力なプロセッサカテゴリーに属するものだからだろう。
従来のMacBook Airは、一貫して熱設計電力(TDP)が15W枠の「Uシリーズ」に属するCore iプロセッサを搭載してきた。これはYシリーズに比べて、発熱や消費電力の面で不利だが、その分パフォーマンスが有利だ。
一方、今回のMacBook Airが搭載する第8世代Core i5(Amber Lake Y、デュアルコア)は、TDPが7Wという他に例のない仕様だ。YシリーズのTDPは通常5Wだが、それより少しだけ高い。それでもUシリーズの15Wに比べて半分以下だが、これはどういった意味を持つのだろうか。
ご存じの通り、Intelのプロセッサには「Turbo Boost」という機能がある。プロセッサの動作限界値を超えない範囲で、高負荷時に自動で動作クロック周波数を高める技術だ。MacBook Airが採用する第8世代Core i5-8210Yの場合、定格の動作周波数は1.6GHzだが、Turbo Boost時は最高で3.6GHzまで加速する。
どのぐらいこの機能を使えるかは、搭載したパソコンの冷却システムとも強い関連性があるが、ベンチマークテストのGeekbench 4.0を実行した結果、MacBook Airのシングルコアスコアは4091だった。薄型ノートパソコンとしてはなかなか良好なスコアだ。
例えば、Uシリーズに属する第8世代Core i7-8650U(Kaby Lake R、クアッドコア、動作クロック2.1GHz、TurboBoost時4.2GHz)を搭載したMicrosoftの「Surface Laptop 2」で同じGeekbench 4.0を実行すると、シングルコアのスコアは4078と出てくる。
両プロセッサが搭載するコアはクロック周波数以外、ほとんど同じであるため、実稼働時のクロック周波数に違いが出ているのだろう。細かくベンチマークテストの結果を見ていくと、最初の2つのテストはSurface Laptop 2の方が高速だが、それ以降はMacBook Airが逆転することも多くなり、トータルでほぼ同等となった。
なお、搭載するコア数に2個と4個という違いがあるため、マルチコアのスコアは当然ながらSurface Laptop 2が圧勝となる。内蔵GPUの実行ユニット数なども違うため、MacBook Airの方が総合性能で上回ることはない。上記はあくまでシングルコアでのスコア比較だ。
では、実際の利用シーンでのパフォーマンスはどうなのか。試しに「Canon Digital Photo Professional」でEOS Rで撮影したRAWファイルを10枚連続で現像する処理を行ってみたが、MacBook Airは約10分30秒、Surface Laptop 2は5分40秒で処理を終えた。
マルチコアが生きるシーンでの不利はある。しかし、こうしたシングルコアでの意外な成績のよさは、搭載プロセッサと本体の熱設計の関係をみたとき、かなり余裕を持った作りにすることで、Turbo Boostの稼働率を上げているのかもしれない。
すなわち、マルチコアでの処理能力が生きてくる写真のRAW現像、動画編集、音楽制作などメディア制作ツール一般では歯が立たない一方で、一般的なJPEGの写真や音楽データの管理、Webへのアクセスやメールなどコミュニケーションツール、オフィス向けツールなどを使っている分には不足がないともいえる。
熱設計枠で半分以下の省電力性がもたらす快適性(通常時はほぼファンが動かない)、バッテリー駆動時間の長さ(公称で最大12時間のワイヤレスインターネット閲覧、最大13時間のiTunesムービー再生)を評価すれば、あえてTDPが15WのUシリーズではなく7WのYシリーズを採用したAppleの意図も見えてくるだろう。
なお、室温25度の環境で動作中の温度も計測してみた。ボディーの最も熱くなる中央奥は、作業中に最大で41度ぐらいまで上昇した。画面に向かって左のヒンジ脇、見えにくい場所に吸気口があり、そこは39度。右側のヒンジ脇は排気口のようで34度ぐらいだった。キーボードは上端の中央が38度、ホームポジションが37度、トラックパッドは32度と低温だ。
前述したEOS RのRAWファイル現像テスト時にも温度を計測したが、熱源に近い部分が45度まで上昇したものの、それ以上にはならなかった。こうした高負荷時はフルに冷却ファンが動作するため、左右のヒンジ部はいずれも37度程度で安定する。キーボードなどの操作に関連する部分の温度はほとんど変わらず、快適なままだった。
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