Windows 10Xの戦略変更と2画面デバイス「Surface Neo」の投入延期:Windowsフロントライン(2/2 ページ)
Microsoftが2020年末の投入に向けて開発中の2画面デバイス「Surface Neo」だが、搭載OS「Windows 10X」の戦略変更に伴って、2022年への延期がうわさされている。最新事情を見ていこう。
「クラウドOS」とは?
ここで問題となるのは、Microsoftのいう「クラウドOS」の定義だ。Windows 10Xがかつて「Santorini」や「Windows Lite」などと呼ばれていたころ、OSのコンセプトは「Microsoftがクラウド利用に特化したOSを開発している」などといわれていた。
Win32サポートの消えた現状においてさえ、Windows 10Xはスタンドアロンでの動作が可能なフルスペックOSであり、Web処理の一部をローカルに落とし込むChrome OSとは考え方が異なる。では、Microsoft自身の考える「クラウドOS」とは何だろうか。
鍵を握るキーワードは、Microsoft Azure上で動作する「Windows Virtual Desktop(WVD)」だ。Microsoft 365 E3/E5やWindows 10 Enterprise E3/E5を契約するユーザーなどを対象に提供されている「仮想デスクトップ」サービスで、Azure上に構築されたWVDにリモートアクセスして仮想デスクトップ環境を利用できる。
基本的なインフラや、ハードウェアにまつわる部分の制御は全てMicrosoftが行っており、ユーザーはデスクトップ環境やアプリケーションの利用に集中しつつ、管理者はグループポリシーなどを通じて配下にあるユーザーの仮想デスクトップ環境の面倒を見るだけでいい。
WVDのメリットの1つとして、2020年1月14日に延長サポートの終了したWindows 7であっても、“有償”で2023年1月までのセキュリティアップデートの受け取れる「ESU(Extended Security Updates)」が、WVDユーザーには“無償”で提供される(正確にいうと、サブスクリプション料金を支払っているので“無償”ではないのだが……)。
これは、Windows 7がセキュリティ対策なしでローカルに放置されるのを防ぐ措置であり、「Windows 10では動作しない(あるいは動作保証されない)アプリケーションを継続利用したい」というユーザーには、WVDを活用するようにという特別対応と考えていい。
話題が少々脱線したが、この仕組みをクラウドOSとして活用しようとMicrosoftは考えている。前述のメアリー・ジョー・フォリー氏によれば、「Cloud PC」の名称でWVDのインフラ上で動作する、より汎用(はんよう)向けの仮想デスクトップサービスの提供を計画しているという。
同氏の記事でも触れられているが、MicrosoftはCloud PCというチーム向けのプログラムマネージャを募集していたことが分かっており、最終的にWVDを「Desktop as a Service」のような形でサービス化していくことを狙っているようだ。より具体的には、Microsoft製品の再販業者でもあるPCメーカーやソリューションプロバイダーが、このCloud PCへの接続サービスをユーザーに「オプション」として提供できるものと考えられる。
ジョー・フォリー氏の考えでは「既存のローカルで動作するデスクトップ環境をすぐに置き換えるものではない」としているが、多くのユーザーがMicrosoft 365などのサービスサブスクリプションを通じてCloud PCのデスクトップ環境も触れるようになれば、いろいろ柔軟性が広がるだろう。
多くが知るように、Microsoft 365(Office 365)は既にMicrosoftやWindowsの環境に閉じた製品ではなく、さまざまなデバイスやユーザー環境を通じてアクセス可能なクラウド製品になっている。モバイル分野でいえば、AndroidやiOSのようなプラットフォームでも構わないため、ユーザーによっては「iPadでWindowsのフルデスクトップ環境を操作したい」という人もいるかもしれない。
さらに、その作業内容や途中経過を自宅にあるWindowsデスクトップPCに引き継ぐことも容易なため、作業の柔軟性は非常に高い。同様に、このデバイスに「Win32が動作しないWindows 10Xを搭載したクラムシェルノートPC」が参加することも可能だ。
この場合、安価に販売されるWindows 10X搭載ノートPCを“シンクライアント”的に利用することも可能なわけで、かつてSun Microsystems(現オラクル)がMicrosoft対抗のためにシンクライアント「SunRay」を引き下げて挑戦し、そのまま(パフォーマンスとアプリケーション互換性の問題で)消えていった歴史を考えれば、Microsoft自身が同じアイデアをもり立てていこうという流れになっているのは非常に感慨深い。
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