ブーストクロック“微増”の効果はいかに? 「Ryzen 3000XT」実力をベンチマークで検証!(3/3 ページ)
6月16日に突如発表された「Ryzen 3000XTシリーズ」。その実力はいかほどのものか、ベンチマークテストを通して検証していく。
3DMark(Time Spy/Fire Strike)
続いて、3D描画性能を計測するベンチマークアプリ「3DMark」の結果を見てみよう。今回は、DirectX 12 API使ったテスト「Time Spy」シリーズと、DirectX 11 APIを使ったテスト「Fire Strike」シリーズをそれぞれ実行している。
まず、Time Spyシリーズのテスト2種類の結果から見ていこう。Time Spyシリーズのテストで用いるDirectX 12 APIは、CPUの並列化がパフォーマンスを大きく左右する。そのこともあって、総合スコアにはCPUの性能差が如実に表れた。
標準テストの「Time Spy」でトップに立ったのはCore i9-10900Kで、それに150ポイントほどの差で続くのRyzen 9 3900XTだ。そこから400ポイントほど離れてRyzen 7 3800XTが続き、さらに900ポイントほど離れてRyzen 5 3600XTが来るという結果となった。
描画解像度の高い「Time Spy Extreme」ではRyzen 9 3900XTとCore i9-10900Kの順位が逆転するものの、スコア差は小さい。
Time Spyシリーズのテストでは、コア数が多く1コア当たりの動作クロックも高いCore i9-10900Kや、コアが最も多いRyzen 9 3900XTが良好な結果を残している。Ryzen 7 3800XTやRyzen 5 3600XTは動作クロックこそ高めではあるものの、コア数の少なさがネックとなったと思われる。
一方、DirectX 11を用いるFire Strikeシリーズのテスト3種では、CPUのコアやスレッドの数の優位性は薄れる。その結果、Ryzen 7 3800XTやRyzen 5 3600XTのスコアが相対的に向上している。
最も軽量なフルHD(1920×1080ピクセル)解像度の「Fire Strike」では、総合スコアに顕著な差が出ている。最も優秀だったのは、Ryzen 7 3800XTで、その後にはCore i9-10900K、Ryzen 9 3900XT、Ryzen 5 3600XTが続いた。
総じて、DirectX 12を使うゲームを楽しむのであればRyzen 9 3900XTが魅力的だが、コストパフォーマンスを考慮に入れると、4万円台半ばで購入できるRyzen 7 3800XTのバランスの良さも光る。
FF14ベンチ/FF15ベンチ
負荷が軽いゲームについて、もう少し検証してみよう。
実際のゲームを元にしたベンチマークソフトである「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(FF14ベンチ)で、「最高品質」「フルスクリーン」の設定を適用し、フルHD、WQHD(2560×1440ピクセル)、4K(3840×2160ピクセル)の3パターンの解像度で計測してみた。
結果としては、基本的には最高クロックの差がスコア差として現われた。全ての解像度においてCore i9-10900Kはトップに立ったが、解像度が高くなるほどスコア差は小さくなる。コア数と動作クロックのバランスが良いRyzen 7 3800XTも健闘はしているが、Ryzen 5 3600XTとの差はあまり出ていない。
その観点に立つと、Ryzen 9 3900XTはコア数の優位性をほとんど発揮できておらず、特に解像度が低くなるほど不利になりがちだ。
主にDirectX 11を用いるゲームタイトルをプレイする場合は、Ryzen 9 3900XTの価格に見合うメリットを見いだしづらいかもしれない。
より負荷の高い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチ)」のスコアも確認しよう。「高品質」「フルスクリーン」の設定で、フルHD、WQHD、4Kの3解像度でテストを実施した。
こちらはDirectX 12ベースで、テスト自体のグラフィックス負荷も大きい。そのこともあり、スコアはかなりの混戦となった。
いずれの解像度でも、わずかではあるがCore i9-10900Kのスコアが優勢だ。Ryzen 3000XTシリーズはスコアが拮抗(きっこう)しており、明確な差は見られない。ただ、Core i9-10900Kと比べると極端にスコアが悪いというわけでもなく、価格を考えればどの製品を選ぶかは悩ましい。
「Ryzenはゲームが苦手」というイメージのユーザーも多いかもしれないが、第3世代に入ってからはそのような側面は大きく改善された。少なくとも、選択肢として積極的に検討できるポテンシャルは備えている。
消費電力テスト
最後に、システム全体の消費電力をチェックしよう。
起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Extremeテストを動作させた際の最高値を「高負荷時」としてワットチェッカーで計測した。
Intel CPUと比較すると、Ryzen 3000XTシリーズは高負荷時の消費電力がやや高い。とはいえ、Time Spy Extremeのような高負荷テストでは、最大消費電力の違いはわずか20〜30W程度だ。ハイエンドGPUと組み合わせた場合でも、それほど容量の大きな電源ユニットは必要ないだろう。
まとめ:“買い”かどうかはその時点の実売価格次第
繰り返しだが、Ryzen 3000XTシリーズは既存モデルのブーストクロックを100〜200MHz引き上げたマイナーチェンジモデルであり、劇的な性能向上やインパクトのある変更点はない。競合の第10世代Coreプロセッサと比較した場合、コストパフォーマンスの高さは健在ではあるものの、現時点で併売されているRyzen 3000Xシリーズは実売価格がさらに安いため、ちょっと評価が難しい存在、というのが正直な所である。
仮に実売価格が「X」と並んだならば、上位2モデルはCPUクーラーを用意する必要があるものの、それなりのメリットはある。今後の価格推移に注目したい。
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