2021年のWindows 10を改めて見渡す:Windowsフロントライン(2/2 ページ)
2020年は控えめなアップデートが続いたWindows 10だが、2021年は大きなトピックが控えている。まずは直近のバージョン別シェアから2021年のWindows 10を見ていこう。
「M1 Mac」で「Arm版Windowsアプリ」が動作しない謎
11月にリリースされ好評を博しているAppleの「M1 MacBook」の各製品だが、プロセッサがIntelからArmベースの「Apple M1」に変更されたことで、仮想化ソフトウェアや既存の一部ツールが動作しないなどの問題も発生している。
システムの移行期間なので当然といえば当然なのだが、省電力とパフォーマンス改善幅が大きい点とのトレードオフとなる部分だ。M1導入効果が大きいと判断している声が大きいことから、以前に比べてもスムーズにM1などAppleが開発するSoCへの移行が進むのではないかと考えられる。
さてM1搭載Macだが、Microsoftでは早速Microsoft 365のUniversalアプリ版をリリースしており、Office MacアプリケーションのApple Silicon対応が進んでいる。Apple Silicon版Mac環境であれば自動アップデートを有効化しているか、あるいはMac App Store上にアップデートが登録されているので、M1版アプリケーションへと移行できる。
現状で対応するのはOutlook、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteの5製品だが、Teamsについても現在鋭意M1対応を進めているとのことで、そう遠くないタイミングでリリースされるだろう。実際に使っていると分かるが、Teamsのビデオ会議の負荷は特に高い。おそらくM1対応のUniversalアプリがリリースされることで、最適化が進むと考えられる。M1 MacBookをバッテリー利用しながら作業するユーザーには朗報だろう。
また、プラットフォームがx86から外れてしまったことで、動作に支障をきたしているのが仮想化ソフトウェアだ。MacではParallelsが代表的だが、“Windows”の動作が可能なParallels 16のテクニカルプレビュー版が配布されている。
9to5Macによれば、現状のテクニカルプレビュー版ではx86(x64)版Windowsのインストールは不可能とのことで、Arm版を導入する必要がある。ただ多くが知るようにArm版WindowsはOEM以外でのライセンシングが行われておらず、一般ユーザーが直接入手する手段がない。そこで前段でも登場したWindows Insider Programの登場となり、何らかの形でInsider PreviewのISOを入手してインストールする形となる。
前述の記事で気になるのが「ARM32 applications do not work in a virtual machine.」という表現だ。現状でArm32をターゲットにしたUWPアプリのバイナリがどれだけ存在するのか不明だが、M1 Macでは64bit版は動作しても32bit版は動作しない。
理由が不明だったが、興味深い投稿がTwitter上にあった。つまり、M1自体がArm32ビットバイナリの動作を許容していないため、Arm版Windows 10においてもArm32バイナリのアプリは動作しないという話だ。
デバイスが手元にないので現状は検証できないが、64bit移行の強制が割とスムーズに実施できるAppleに比べ、レガシーアプリケーションが多数残るMicrosoftでは対応バイナリの幅が広く、その差がM1 Mac上でのWindows 10動作で差を生んでいるという。このあたり、改めて検証機会があったら試してみたい。
「Windows Feature Experience Pack」とは何か
今回の話題の最後は「Windows Feature Experience Pack」だ。2020年11月30日に「Windows Feature Experience Pack 120.2212.1070.0」というものがWindows Insider ProgramのBeta Channel向けに突然配信されたが、唐突すぎて疑問を感じた方もいるかもしれない(筆者もその1人だ)。
Windows Feature Experience Packというキーワード自体は長らく存在しており、本連載でも2020年1月に紹介しており、話題自体も2019年には何度か聞いていた。当初は「Windows 10へのサブスクリプションモデル導入の伏線か?」のように考えていたこの機能だが、現状はまだ実験的段階にあると考えられる。
Blog上での説明によれば、今回のタイミングで提供されるのは「スクリーン上での切り抜きツール(取り込んだ画面をファイルエクスプローラ上の指定場所に直接保存できる)」と、「2-in-1デバイスのポートレートモードにおける分離(ソフトウェア)キーボード」などだ。
基本的には、Windows 10の大型アップデート(機能アップデート)とは無関係のタイミングで機能追加を行うためのもので、現状で追加機能が限られているのも、配信テストという位置付けによるものだ。
実際、大型アップデートの一般向け配信が始まった直後のBeta Channelは、ターゲットビルドがまだ既存のもので、次の大型アップデート(今回のケースでいえば21H1)には移っていない。そうした配信チャネルに突然機能追加アップデートだけが降ってきたという流れで、ある意味で不可思議だ。
既に、最近のWindows 10のバージョンには何らかの形でWindows Feature Experience Packが含まれているとのことで、「あえてなぜこのタイミングで?」と意図するところは不明だ。
推測としては、Windows 10の標準機能を一部切り離し、それを望むユーザーは適時追加導入可能な仕組みを導入するという考えだ。先ほどの「サブスクリプション制導入の布石」という考えと合わせ、2021年以降にウォッチすべき事案の1つなのは間違いない。
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