Appleのティム・クックCEOが「VivaTech 2021」で語った注目する技術と未来の方向性:iPhone 30は? Apple Carは?(3/3 ページ)
フランスのテクノロジーイベント「VivaTech 2021」が6月16日(現地時間)に開幕し、Apple CEOのティム・クック氏が登壇した。そこで語られた内容を林信行氏がレポートする。
iPhone 30が目指す方向性とApple Carの行方
「今のiPhoneはiPhone 12だが、30年後に登場する“iPhone 30”はどんな製品になるのか?」と、ラクロワ氏はインタビューの最後にiPhoneやApple Carなど、未来のApple製品やその方向性に関する質問も行った。
クック氏は笑いながら「まあ、iPhone 12よりは良くなるでしょう。それは期待していてください」と切り出した。その上で、Appleは、人々の生活を豊かにする最高の製品を作ることを使命としていること、その使命を果たすために、自分たちの手に追えないことには手を出さないことなど会社としての姿勢を語った。
「未来は誰にも予想がつかないもの」だからこそ常に「謙虚な気持ちで臨むことが大事」だとも語った。
「iPhone用のチップを開発していたときには、それがiPadの心臓部になるとは知らなかったし、2021年、最終的にMacの心臓部になるとも知りませんでした」。こうした変化をもたらしたのは「緊張感を保ち、発見を続け、試行錯誤が自分たちをどこへ導くのかに心を開くこと」だとクック氏は語る。実際、「それが私たちを信じられないような場所に連れてきてくれました」とここまでのAppleの道のりを振り返った。
その上で、注目している新技術の1つとしてAR(拡張現実)とAI(人工知能)、そしてヘルスケア技術への期待を語った。
ARは生活を向上させる、AIは人々の生活を妨げているものを取り除き、仕事をし、人々の余暇を増やす、そして車の警告灯のように身体の状態を常に監視して、異常を知らせてくれるヘルスケア技術に大きな期待を寄せているという。
ただ、Apple製の自動車、「Apple Car」については「Appleは秘密のある会社。いくつかの秘密は袖の下に隠しておかなければいけません」という聴衆の笑いを誘うジョークで答えを回避した。
ラクロワ氏は「革新を続ける挑戦の中で失敗はあるか」という質問も行った。
「私は毎日何かに失敗しています。顧客を失敗に巻き込むことはしないように心がけています」とし、失敗したものを出荷することはしないが「社内では失敗を続けています」とクック氏。
「失敗することは人生の一部です。誕生したばかりの会社でも長い歴史を持つ会社でも、もし失敗をしていないのだとすれば、それは十分いろいろなことを試していないということになります」との考えを語った。
VivaTechのラクロワ氏との公開インタビューは、ヨーロッパの人々が、メディアで報じられるApple CEOではなく、素顔のティム・クック氏を知る良いきっかけとなった。
Apple本社のVisitor Centerから30分にわたってリラックスした笑顔で質問に答えていたクック氏だが、実は本番直前に主催者と打ち合わせをしている音声がインターネットに中継され、聴講していた人全員が主催者に丁寧なお礼を繰り返すクック氏の声を聞いていた。
5回目となるVivaTechでは、クック氏の直前のメインステージにフランスのマクロン大統領が、テクノロジーの最前線で活躍する5人と対談したセッションや、インドのナレンドラ・モディ首相による講演なども開かれ、今、テクノロジーが形成しようとしている社会のあり方についての議論が行われている。
2日目に当たる17日(現地時間)の公開対談では、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏も登壇予定だ。
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