最も華やかで最もモヤモヤする Apple M1搭載「iPad Pro」レビュー(3/5 ページ)
Apple M1やLiquid Retina XDRディスプレイ搭載、そして5G対応と盛りだくさんの新型iPad Proだが、実際のところはどうなのか。旧モデルとの比較を含めて検証する。
ミニLED採用による副作用
アーティファクトは「ブルーミング」という現象が話題になりましたね。エリア駆動のバックライトが散光しながら液晶面を照らすので、明るい部分の回りにも光が届いてぼんやりと明るく見える現象です。これは通常の使用で気になることはほぼないと言って良いです(従来モデルで黒浮きが気になることがほぼ無いのと同じことです)が、目立つ画像と目立つ視聴条件に動きが加わると、自然現象やCG表現では見かけないような、違和感のある効果になる場合もあります。
これはエリア駆動対応の液晶では避けられない現象です。そういった製品の中ではiPad Proはずっとずっと高品位の部類なのは確かで、制作などで究極の画面の均一性が必要な場合でもなければ、気にしなくていいです。ただ、個人的にブルーミングより気になるのは、画面端の謎の影です。
この記事が表示される画面の中では、気にならないかもしれません。おそらくブルーミングと同様に「画面は多少ぼやけることがある」と感覚が慣れているんだと思います。
ただ現物を、物体としてベゼル/画面/その境目と見ると、自分には違和感があります。それに、ブルーミングや黒浮きは気になるシーンが少ないですが、これはどちらかというと目につくシーンが常です。
Apple製品の“偏執的”とも言える仕上げ品質を楽しむ上では不満になり得るので、購入を検討している人は、自分が気にするタイプか、もしくはOSの更新で直っていないかを、展示品などでチェックしておくのが良いでしょう。
また、発色が良くなった、高まったという評価がありますが、写真を見比べたり測色機で調べたりする限りは、厳密に同じとは言えなくとも通常使う色域の範囲では気になる差異はありませんでした。デバイス間で色がばらつきづらいのもAppleの機材の特徴なので、急に鮮やかで高コントラストになられていたら逆に困ります。
メインメモリの利用は今後に期待
よっしゃ……! 既に読み疲れてきた人もいると思いますが、僕も疲れてきたので気合を入れてイラスト用途について見ていきましょう。
2021年のiPad Proは、ストレージ容量が128GB〜512GBだとメインメモリが8GBなのに対し、1TBと2TBモデルについては16GBを搭載しています。2018年モデルが基本的に4GB、2020年モデルが6GBだったことを考えると飛び上がるような大増量で、今まで大きめのイラスト制作で速度低下やフリーズに苦労していた人には夢のような改善点です。
まずは実用テストの前に、実際にどれくらいメモリが使えるようになったのかを、ProcreateとCLIP STUDIO PAINTで見ていきましょう。今回評価機にお借りできたのは16GBモデル、比較対象としては、iPad Air 2020年モデルと、iPad Pro 2020年モデル、搭載メモリ16GB相当に調整したWindowsノートPCを用意しました。
……ちょっと不穏な結果です。Procreateの使用可能レイヤー数はメモリ搭載量と比例していませんし、CLIP STUDIO PAINTはメインメモリの容量に比例しているものの、メインメモリの半分ちょっと、PCと比べると3分の2ほどしか使えないことになっています。
これがアプリの実装の問題なのか、iPadOSの制限なのかは分かりませんが、大枚をはたいて8GB版ではなく16GB版を買って手に入るのが4GBそこそこというのはかなりうれしくない状況で、PCオタクの自分は4GBのDDR4メモリの市価を想像してしまって、同一視できないとは分かっていながらも心が痛みます。将来の改善を望みたいところですね。
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