「Google Workspace」は小学校でどう使われている? 3人の先生が解説(2/3 ページ)
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」によって、小中学校では2020年度内に「1人1台」の学習用端末配備がおおむね完了した。しかし、端末配備後の様子は自治体や学校によってマチマチのようだ。うまく行っている小学校ではどのような取り組みをしているのだろうか?
自宅でもシームレスな学習には“持ち帰り”も重要
続いて登壇した静岡市立南部小学校の浅井公太教諭は、2020年度に受け持ったクラスで行った「端末の持ち帰り」に関する取り組みを紹介した。
南部小学校には、2020年8月26日に学習用端末としてChromebookが配備された。「いきなりChromebook(利用に関する)実践が始まった」状況で、それまでに児童側において特別な準備はしていなかったようだ。
端末の持ち帰りは、配備から約1カ月後の2020年9月24日から実施した。前例のない取り組みだったので、校長や管理職と相談した上で、保護者懇談会で持ち帰りを実施するメリットとデメリットを全て説明し、同意書の提出を求めたという。保護者の関心は意外と高く、全家庭が同意書を提出したという。
端末の持ち帰りが始まってからは、それを前提とした家庭学習課題も出しているという。例えば体育の「跳び箱」の単元では、動画教材を見て「技のポイント」をまとめてくる宿題を出したという。その後の授業では、それを踏まえて跳び箱の練習を行い、試技を動画で撮影した。そして試技を振り返るスライドを作成するという宿題として課した。振り返りのスライドには、ベストな試技の動画を添付してもらったという。
ベストな試技の動画を振り返りのスライドに添付することになるせいか、児童は手を置く位置や膝の伸ばし具合を動画を見返して確認し、よりキレイに跳べるように取り組むようになったという。
浅井教諭は、学校と家庭がクラウドでつながることで授業が充実するようになったと実感しているという。技ポイントのまとめや振り返りを自宅に“持ち帰る”宿題とすることで、授業では運動量や練習量をより多く確保できたのだ。端末の持ち帰りは、授業における本質追究と児童間の交流の活性化に大きく役立ったともいう。
ただ、学習用端末を持ち帰ることには、解決すべき課題もある。
1つは児童が持ち運ぶ荷物が増えてしまうということだ。児童は、その日の時間割に合わせて紙の教科書、ノート、体操着、給食セット……などを毎日持ち歩かなければならない。そこに学習用端末を加えるとなると、身体面の負担が過大となってしまう。そもそも、サイズ面の都合で学習用端末がランドセルに入れられないものもある。
そこで南部小学校では一部の教科書を学校に置いていけるようにしたという。いわゆる「置き勉」を公認したのだ。
置き勉の実現に当たっては、学校に置いても問題ない教科書を厳選し、児童1人1人の置き場も確保したという。結果、理科と社会の教科書と、音読課題のない日の国語の教科書は学校に置いて帰れるようになった。
また、学習用端末はあくまでも“学習用”であることを児童に認識させることも重要である。
浅井教諭によると、受け持ったクラスのチャットにおいて、学習に関係のない内容を投稿したり、長時間入り浸ったり、変な言葉で書き込んだりする児童が出てきたという。いずれも、家庭にいる時間帯での出来事だったようだ。
そこで、浅井教諭はこの事象をクラス全員に授業で共有した上で、チャットのルール作りを行ったという。頭ごなしに「チャット禁止」とするのではなく、児童と話し合いながらルールを決めていったことがポイントだ。
加えて、家庭でのルール作りも欠かせない。
南部小学校の場合、学校側から「家庭での利用時間は21時まで」「家で充電する場所を決めること」「適切な使用について指導すること」をお願いしたという。「教師の休日感覚が薄れる」ことへの対策として、担任(学校)の投稿は平日のみとすることも伝えたという。
家庭ごとのルールは、学校側が提示したルールをたたき台として作ってもらったそうだ。結果、「習い事のある日は(利用時間は)20時まで」「土日は1時間まで」というように、家庭ごとのルールが定まっていった。中には「(児童が使う)パスワードを共有する」というルールを作った家庭もあった。
家庭内のルールは、Googleドキュメントで提出を求めた。浅井教諭も家庭のルールを把握することで、トラブルがあった際に対応しやすくするためだ。
教員側の立場では、基礎/基本につながる宿題とのバランスも重要だ。
先述の通り、浅井教諭のクラスでは学習用端末を使った宿題を出している。一方で、国語における「漢字の読み書き」や算数における「計算練習」といった基礎/基本につながる日々の宿題も欠かせない。
端末を使う宿題を単純に日々の宿題に“上乗せ”してしまうと、児童への負担が増えてしまうだけだ。かといって、日々の宿題を削りすぎてしまうと、基礎/基本の習得に影響が出かねない。
そこで、浅井教諭は日々の宿題の一部を、学習用端末を使う課題に振り替えることで対応したという。例えば、ある日は計算ドリルの代わりに学習用端末を使った2つの課題を課している。
学習用端末の持ち帰りを促進したことで、児童は自主的に学習活動に取り組むことが増えたという。とりわけ、特別学習に関する活動は顕著に増えた。合わせて、予習や復習の習慣が身に付き、授業へと主体的に参加する児童も増えたとのことだ。児童同士の「(目に)見えにくいトラブル」は、対面での観察を細かくすることで対処しているという。
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