新型MacBook Airの魅力をデザインと性能で読み解く:M2搭載新モデルをチェック(3/3 ページ)
Apple M2を搭載した新型MacBook Airが、ついに発売となる。実機に触れた林信行氏が新モデルを読み解いた。
M1対M2/Air対Pro 分かりやすいパフォーマンスのグラデーション
Geekbench 5とCINEBENCH R23、シングルコアとマルチコアでのパフォーマンスの比較。CINEBENCHには長時間の動作耐久テストの側面があり、それがマルチコア性能のパフォーマンスの差に出てきたと思われる
さて、気になる新型MacBook Air(10コアGPU)のパフォーマンスはどうだろうか。最近のPCは本体の温度だったり、利用するアプリの種類だったりで処理を行うプロセッサの役割が変わることもあり、体感的な性能差はユーザーごとに異なる。一応、定番の性能検証用ソフトを使って検証をしてみたところ、非常に説明のしやすい結果を得ることができた。
まずは、Geekbench 5というアプリの実行結果だ。シングルコア、つまりコア1個あたりの性能を見てみると、M2プロセッサは従来のMacBook Airが搭載していたM1と比べて13%ほど高速だった。同じシングルコアのテストでも、別アプリのCINEBENCH R23ではそこまでの性能差が出ず、M2の方が8%ほど高速という結果だった。
続いてマルチコアでのテストでの性能を比較してみると、Geekbench 5のテストでM1 MacBook Airと比べて約15%高速、CINEBENCHではM2の方が9%高速という結果だった。ここで面白いのが、CINEBENCHではM2の13インチMacBook Proが、M2のMacBook Airと比べてもさらに17%ほど高速という結果が出たことだ。
なぜ、このような差が出たのかだろうか。Geekbenchというアプリは、プロセッサの最高性能を一気に発揮させ短時間で性能検証が終わる。これに対してCINEBENCHは、設定にもよるがプロセッサは複雑に透過や反射をする光の計算を繰り返し続ける。
1個のコアにしか負荷をかけないシングルコアのテストでは、そこまでの差は出ないが、搭載した全コアをフル稼働させ続けると、次第に本体が熱を帯びてくる。
Apple Silicon搭載Macでは、このように本体が熱くなってくると、プログラムの実行をパフォーマンスコアと呼ばれる高性能コアの動作クロックを抑えたりする。
M2 MacBook Proは、本体がある程度熱くなってくると、内蔵ファンを回して冷却を開始するため、高いクロックを維持したまま処理を続けられるが、ファンを内蔵せず静的な冷却機構に頼っているMacBook Airでは、処理速度を高いまま維持できない。
つまり、M2 MacBook AirとM2 MacBook Proの性能差は、まさにこのファンによる冷却の有無によって生み出された差であり、長時間連続でのビデオ編集作業などクリエイティブプロフェッショナルの仕事をするのには、MacBook AirよりもMacBook Proの方が向いているという証左でもある。
今回、時間と機材の関係で新旧MacBook Airの本体温度の変化は計測できなかったが、主観的な体感温度の比較では本体の左奥の辺りが熱くなるのは新旧どちらのモデルも同じだが、パームレストの温度は新型MacBook Airの方が低い状態を維持できていた印象がある。本体手前側が薄い旧モデルと異なり、しっかりと厚みがある分、うまく熱を拡散できたのではないかと推測している。
ビデオ編集メインではメモリ容量がものをいう
Geekbench 5/OpenCL性能の検証ではM1プロセッサとM2プロセッサの圧倒的な差が浮き彫りになった。画像処理系や一部のAI処理などではM2は大きなパフォーマンスの向上を発揮するかもしれない
ProResビデオの編集では、M1 MacBook AirとM2 MacBook Airの性能差と同時に、搭載メモリ量の差も浮き彫りになった。検証したモデルが搭載していたメモリは旧MacBook Airが16GB(LPDDR4X)、新型MacBook Airが16GB(LPDDR5)に対して、MacBook Proのみ8GB(LPDDR5)だった
続いて、Geekbench 5でのOpenCLの結果も比較しよう。OpenCLはAppleが生み出し、今では外部の団体が標準化を進めている並列コンピューティングのための技術で、科学技術計算や画像処理などの高度なコンピュータ処理に用いられるが、このOpenCLを用いた処理の性能はM2搭載のMacBook Airの方が48%近くも高速という圧倒的な性能向上を示した。
もう1つ、性能検証を行った。動画版のRAWファイルと呼ばれるProResと呼ばれる高画質ビデオ映像の処理だ。最近のiPhoneでは、この4K画質でこのProResフォーマットの動画を撮影することができる。ファイルサイズが非常に大きく、編集作業などでプロセッサにかかる負荷も大きいが、画像を加工した際でも破綻が少ないというメリットがある。
iPhone 13 Pro Maxで撮影したProResの動画をFinal Cut Pro Xで編集し、ProRes形式で書き出すという簡単なテストを行ったが、その結果は驚くべきもので、M2搭載MacBook Airの方がM1版に対して3.92倍も高速だった。Appleによる公式なテストでは3倍とうたっているので、たまたま筆者の編集データが、M2の性能を発揮しやすい形になっただけかもしれないが、それでも圧倒的な差だ。
なお、このテストで興味深かったのは、M2のMacBook AirがM2のMacBook Proよりも短時間で処理が終わっていることだ。遅いといっても、M1のMacBook Airよりははるかに高速(2.5倍)だが、なんでこんなことが起きるのだろうか。
いろいろと原因を探った結果、貸し出しを受けていた13インチMacBook Proが下位モデルでメモリを8GBしか搭載していなかったこと、それに対してMacBook Airは16GBのメモリを搭載した上位モデルだった。ビデオ編集では、やはりメモリ容量が大きいほど有利なのだ。
つまり、もし、ビデオ編集が目当てでノート型Macを選ぶのだとしたら、プロセッサも重要だが、それと同じくらいメモリの容量も大事で、メモリ8GBのMacBook Proよりは、メモリ16GBのMacBook Airの方が有利だということを図らずも証明できた(最も、これも長時間作業をし続けるとどうなるかは分からない)。
M2を搭載した新MacBook Airと新MacBook Pro、筆者の結論は、業務として大量のビデオ編集やプログラミング、3Dデータの加工などをするならMacBook Proシリーズ、そうではなく個人のマシンとして日々持ち歩き、幅広い用途をこなすのであればMacBook Airだ。製品名の「Pro」の文字の有無が示す通りの判断が、一番間違わないと思う。
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