ワコムの新開発ペンはWindowsタブの救世主? 絵師目線で「FMV LOOX」をレビュー:ある日のペン・ボード・ガジェット(6/6 ページ)
イラストレーター refeiaさんの連載第2弾は、Windows搭載タブレットの新モデル「FMV LOOX」です。富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、約11年ぶりに発売したFMV LOOXシリーズの出来栄えは?
まとめ
では、まとめていきましょう。
気に入った点
- 薄くて美しく軽量なボディー
- 有機ELの美しい画面
- 実用的なスピーカー音質
- ファンレスで実用的なパフォーマンス
- 打ちやすいキーボード
- 多くの面で性能向上や弱点の克服が見られる新型ペン
- 背面の保護と描きやすい角度を同時に得られる付属のスタンド
- 描画レスポンスに貢献するフルHDの画面
難点になり得る点
- ディスプレイのカラープロファイルが設定されていない
- ボディーが熱くなりやすい
- 座標ズレの問題
- 高品質タブレットとしては解像度が物足りないフルHDの画面
FMV LOOXは、モバイルOS搭載タブレットのような薄型ファンレスボディーでありながら、高い性能とWindowsの多彩な使い勝手を両立するデバイスです。ファンレスは遅いという印象に反して、今までのファン付きノートPCに劣らない使用感でサクサク作業をこなすことができます。キーボード面の発熱や冷却ファンの音から解放された作業は集中しやすく、非常に快適です。
また、スタンドが扱いやすく、ディスプレイやスピーカーの品質も手を抜いていないので、従来はモバイルOSタブレットの得意分野だった「つまんで運べるエンタメ端末」の役割もこなすことができるでしょう。
一方で、イラスト用途では2つの大きな問題を抱えています。
1つが本体の発熱です。よく食べてよく働く第12世代Coreプロセッサをファンレスでまとめるにはボディーの表面温度を上げる必要があります。これは、ボディーに触れている時間が長く、継続的に負荷が発生しやすいイラスト作業とは根本的に相性が悪い気がしてなりません。
もう1つが座標ズレの問題です。自分としては進んで絵を描く気にはなれない、座標ズレが評価機に発生していました。一時的な問題とはいえ、発売から2カ月近く経った現時点でどうなるか分からない状態というのは、クリエイティブ用途も訴求している製品としては小さくないつまずきです。
――といったところで。
何かもう、悔しいぐらい書きづらいのですが、本機は「多彩な使い方ができる高品質なノートPC/タブレットPCとしては非常に魅力的だが、イラスト用途を見込んで積極的に検討したいモデルではない」という結論になります。座標ズレが直った後は、熱の問題を自分で緩和できるならば選んでもよい製品になるでしょう。
ともあれ、座標ズレは解決するでしょうし、熱の問題も将来のモデルで解決することです。ペンも実際に良くなってきているため、「動作が速くて良いペンが使えるWindowsタブレット」の夢はずっとハッキリ見えてきました。それらが現実になる日を、貯金もしながら楽しみに待ちたいと思います。
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