第13世代Coreプロセッサ(Raptor Lake)はなぜ速い? コア数とキャッシュ容量増加が意味すること(3/3 ページ)
Intelがついに発表した「第13世代Coreプロセッサ(Raptor Lake)」は、先代と同じくイスラエルの研究開発拠点が主導して開発された製品だ。同社はイスラエルの拠点を紹介するツアーにおいて第13世代Coreプロセッサの詳細を解説する説明会を開催したので、その模様をかいつまんでお伝えする。
性能向上を裏で支える「キャッシュ」
こうした前情報を補完すべく、今回の説明会では技術的視点からの第13世代Coreプロセッサの解説も行われている。
同プロセッサのパフォーマンスアップは、搭載できるEコアの数を増やしたことや最大クロックを引き上げたことも大きく貢献しているが、L2キャッシュとL3キャッシュも非常に重要な役割を果たしているという。
まず、L2キャッシュはPコアとEコア共に容量を増やしつつ、動的プリフェッチャーのアルゴリズムを改善してスループット(実効アクセス速度)を改善している。Pコアは1コア当たり最大2MB(従来は最大1MB)、Eコアは1ユニット(4コア)当たり最大4MB(従来は最大2MB)の容量を備えている。一方、Pコア、Eコアと内蔵GPUが共用するL3キャッシュ(Intel Smart Cache)の容量は、最大で36MBとなった(従来は最大30MB)。
Pコア、Eコア、内蔵GPUが共有するL3キャッシュはCompute Farbric内にあり、容量を最大36MBとした。Compte Farbricでは、DDR5メモリにおけるアクセス速度の改善も図られている
ただし、L2/L3キャッシュの増量と改善がパフォーマンス向上につながるかどうかはアプリの特性(設計)次第の面もある。裏返していえば、アプリによっては高速化の効果が薄くなるということでもある。
ゲーミング部門を担当するマーカス・ケネディ氏(ジェネラルマネージャ)にそのあたりの話を聞いてみた所、「さまざまなゲームデベロッパーと意見を交換しているが、ゲームのパフォーマンスを向上させる大きなポイントとして最近はCPUのキャッシュメモリの容量を挙げられることが多い」という。処理すべきデータが大容量かつ複雑になる中で、L2/L3キャッシュの利用状況(容量)がゲームのパフォーマンスを左右するケースが増えているのだ。
CPUの開発に当たって、Intelではゲームデベロッパーやクリエイターなどからさまざまな要求を聞き、バランスを考慮しつつ製品に落とし込んでいると思われるが、今回の第13世代Coreプロセッサでは「Eコア倍増」と「キャッシュの容量増加と改良」を選んだことは、近年のアプリにおける“重要な要素”が何なのかを示唆しているということである。
実際、マルチスレッド処理でのパフォーマンス向上に寄与した要素を紹介したスライドにもあるように、高速化に貢献した要素としてコア(スレッド)数とキャッシュ容量が7割近くを占めている。「クロック数も大切だが、コアの数とキャッシュの容量はもっと重要である」という、第13世代Coreプロセッサの設計の“裏”にある思想を物語っている。
決して万人の要求を満たすものではないと思うが、少なくともIntelが示した用途での効果が非常に大きいのは確かだろう。
各種の改良により、Core i9-13900Kは65W稼働時でもCore i9-12900Kのフルパワー(241W)稼働時とほぼ同じパフォーマンスを実現できるという。同じ消費電力なら最大37%のパフォーマンスアップとのことだ
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