新しい「HomePod」は世界で一番使いやすいスマートスピーカー! 従来の評価軸では測れない実力も:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)
5年の時を経て、Appleのスマートスピーカー「HomePod」が第2世代となった。実際に使ってみると、時間の経過以上の進化を感じられる。とりわけ、音質面では「コンピュテーショナルオーディオ」の成果が大いに発揮できているようである。
再生する音声ソースによって変わる「音のキャラクター」
新しいHomePodで音楽を再生してみると実に優等生である。
もちろん、サイズが大きな本格的なハイファイスピーカーではない。ディフューザーを用いて360度に低音を放出する12cmウーファーは、ストロークを大きくすることで量感を演出しているが、出せる帯域には当然限界がある。
しかし、変に欲張ることなく、音楽全体の表情を変えずに“つつましく”再生してくれる。曲によっては「低音が感じられない(足りてない)」と思う場面もあるだろう。事実、HomePodでは「高音質の低音」は再生しきれない。
だが、それでもHomePodは音楽的表情を失うことなく表現しようとする。結果、バランスを保ちつつ、そして全体域に渡って破綻のない音を出してくれる。これは、先述の通りコンピュテーショナルオーディオの成果である。
新しいHomePodよりも素体の再生能力が低いHomePod miniは、音圧を高くしても音に破綻が出ない。この技術をHomePodにも取り入れた結果でもある(DSPの性能もminiからさらに向上している)。
ところが、これが映像作品の音声を再生すると印象が一変する。セリフのキレが良くなるのだ。少し言い変えると、センター定位の音声が明瞭で聞き取りやすくなるのだ。Dolby Atmos対応のコンテンツでは、再現できる音場も広く感じる。加えて、サブウーファーを用いるLFE(低域エフェクト)の音もきちんと聴かせようとする。
今回、自宅の4KプロジェクターにApple TV 4Kを接続し、120インチスクリーンで「Apple TV+」「Amazon Prime Video」「Netflix」にあるDolby Atmos対応映像作品を楽しんでみたのだが、120インチのスケールに見合うだけの音を再生できた。
推測でしかないが、HomePodは音の出自(音楽なのか映像の音声なのか)を分析したり、サラウンド音声ストリームならセンターチャンネルやLFEの役割を把握したりした上で、どのチャンネルの音をどのように表現すべきかを最適化しているのかもしれない。
同じDolby Atmosフォーマットでも、音楽と映画では音の再現性がかなり違うようだ。
Apple製品と組み合わせるなら“第一”の選択肢に
HomePodはSiriと連動するスマートスピーカーだ。ホームオートメーションのハブとしても機能し、そしてワイヤレスでストリーミング音源を再生できるインテリジェントなパワードスピーカーでもある。
単体でもステレオ再生や空間オーディオの再生が可能で、ステレオペアにすることで、さらに豊かな音場を実現できる。ただし、直接再生できるストリーミングサービスはApple Musicの他には「Deezer」しかなく、Apple TV+を含めて他のコンテンツを再生するにはAirPlay 2に頼るしかない。
……と、このような言い方をすると、途端に色があせてしまうようにも感じる。しかし、Apple製品と組み合わせる場合は、これ以上に良くできた製品もない。まさか5年近くをかけて、主にソフトウェアによる進化でここまでたどり着くとは想像もしていなかった。
オーディオと映像を取り巻く環境が変化したことも大きいが、新しいHomePodは、少なくともApple製品と組み合わせるのであれば、最初の選択肢に入れるべき高品位スピーカーである。Apple TV 4Kで映像サービスを楽しみ、接続するTVがARC/eARCに対応しているのであれば、手持ちの他のデバイスが何であれ、十分にお買い得な製品となるだろう。
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