プロ絵師が「iPad Pro 2022」をレビュー! 「ホバー以外に得るものがなく、ホバーのために得る価値がある」という境地に至った理由:ある日のペン・ボード・ガジェット(3/4 ページ)
イラストレーター refeiaさんの連載第5弾は、Appleのハイエンドタブレット「12.9インチiPad Pro」です。ようやく実装されたホバー機能はイラスト作成に寄与するのでしょうか?
広く提供してほしい機能だが差別化の香りが……
Apple Pencilのホバー機能は無いよりはあった方が絶対に良いです。そのため願わくば全てのモデルに採用されてほしいところですが、そこには不安があります。どうもiPad Pro限定といった差別化機能の香りがするのです。
「ホバー機能ごときが」とは言いたくないですが、高価でないモデルにも昔からありますし、いまどき実装が難しく、特別高コストな機能な気はあまりしません。それでもどうしても、Appleがホバーを上位機の差別化機能として訴求しようとしているように見えてしまいます。他社より高度な仕様になっていますし、もしかしたら高い処理能力や、製造に追加のコストが必要なのかもしれません。もしそうならなおさら心配です。
Appleデバイスの魅力は多くの機種で同様に、豊富な機能が使えることにあると思います。優れた機能だったのに、ハイコストな実装と上位機のみの採用が重なって最後には消えていった「3D Touch」(iPhoneの圧力検知機能。iPhone 6s〜Xの間に廉価機以外に採用された)のようにならないことを祈りたいですね。
最新モデルをカジュアルに買えない時代のiPad選び
ところで、iPad Proは高いですよね。最小ストレージ容量の128GBはProとしてはアンバランスなので避けるとして、アクセサリーも含めるとすると、11インチは15万円〜、12.9インチは20万円〜の予算を用意しないといけません。
性能も品質も極めて高いデバイスゆえ、お財布に余裕があったり、業務でゴリゴリ使ったりするなら、買って損したとはならないと思いますが、楽しくお絵描きをしたりエンタメや軽い作業をしたりするのが目的ならば、「そうまでしろとは言ってないんだが…」と言いたくもなるオーバースペックです。
一方で、「ホバーはひとまず無しでもいい」「中古でもいい」という条件をつけると急に視界が広がります。タブレットはスマホほど日々の使用が激しくないですし、iPadは売値も安定しているので大事にされやすいため、状態の良い中古が手に入りやすいです。
そこで、比較的最近のモデルに絞りながら、目的別に注目したいスペックと、おすすめしやすい1台をピックアップしてみました。
まず「予算を抑えながら機能を覚えたり練習をしたりしたい人」は、買えるものを買えばOKです。モデルごとにアプリの機能が大きく変わったりはしないので、良いものを買うより早く学び始めることを重視してください。
次に「リーズナブルで、古くさくなくて、楽しくやりたい」人は、iPad Pro風の見た目になってApple Pencilの第2世代が使える「iPad Air 4」あたりがおすすめです。自分も持っています。メインメモリが大きくないので大規模な絵には向かないですが、気軽にお絵描きを楽しむにも日常的に便利に使うにもちょうど良いです。
「仕事の依頼を受けたり、大きなサイズやがっつり描きたい時にも対応できる余力がほしい」人は、メインメモリが大きい「iPad Air 5」か、最近のProモデルがおすすめです。メインメモリが大きくても速度は上がりませんが、大規模な作業で不規則に遅くなったり動作が不安定になったりするリスクを減らすことができます。
「画面が大きい方がいい」人は、12.9インチモデルがあるiPad Proしか選択肢がないですね。「大規模な絵が描きたいわけではないけれど伸び伸び描きたい」ならば、2018年モデルも全然良いです。iPhoneのように、スタンダードで大型の「iPad Plus」を出してほしいものですね。
また、ProMotionの有無はイラスト用途に限って言えばそれほど気にしなくて良いです。ProMotion対応機種は、ペン先に線が現れる様子が少し滑らかだったり、ペン先に線がよくついてきたりする感触は確かにあります。アプリによっては差が大きくなることもありますが、iPadシリーズはもともとペンの追従性が良いデバイスです。60Hzのせいで作業や上達が遅くなったり、気になって集中が切れたりすることはほとんどないでしょう。
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