連載
年間1万件の追悼に使われる「@葬儀」とは何か?:古田雄介のデステック探訪(2/2 ページ)
コロナ禍でにわかに注目を集めた「オンライン葬儀」だが、軌道に乗ったものは少ない。その中で、年間1万件を超える施工を続けているのが「@葬儀」だ。同サービスは「葬儀のライブ配信サービスではありません」という。
顧客からニーズを引き出して素早く機能を実装
施工件数は、改良を重ねていく中で右肩上がりしていった。その好循環を支えているのは機能開発のスピードとサポート力にあると自負する。
「弊社は元が開発会社なので、お客さまの声をすぐに機能に反映することができます。供花や供物の注文機能や、訃報の一斉送信機能などもお客さまの声を反映して実装しました。サポートの体制を強化することでお客さまの声を取り入れやすくもなっており、よい循環が回っています」(八木さん)
サポートを手厚くすることは、クライアントである葬儀社に@葬儀を使うモチベーションを高める効果もあり、そこが“葬儀DX”を促進する要になっているともいう。
「いきなり@葬儀の全機能を使いこなすのはハードルが高いので、まずはオンライン会場の設置と訃報案内の方法を覚えていただくところから始めています。焦らず二人三脚で根幹の部分で便利さを実感してもらうことが大切だと思っています」(ソーシャルイノベーション事業部 営業推進グループ 志賀勇輔さん)
そういったサイクルの中で、供花の仕入れを仲介する「供花卸しサービス」や喪家に相続の専門家を紹介する「相続相談サービス」なども提供するようになった。
今後は、葬儀の枠を超えてエンディング産業を包括するサービスに拡大することも視野に入れているという。そこにオンライン葬儀サービスに求められる、新たな形があるのかもしれない。
関連記事
- 脳腫瘍から始まったデジタル終活ツール「まもーれe」
自分の身に何が起きてもデジタルの持ち物を託すべき人に託し、隠したいものは隠しきる。実体験からそのためのWindowsツール「まもーれe」を開発したMONET代表の前野泰章さんが重視したのは、徹底したローカル化だった。 - 「デジタル遺言」の可能性――遺言書を作成できるアプリの開発元に聞く
チャットで質問に答えていくだけで、遺言書につづる文言が自動で作成されるアプリがある。世界的にデジタル×遺言の動きが進む中で、どんなニーズをつかんでいるのか。遺言書自動作成アプリ「らくつぐ」を開発した司法書士事務所を尋ねた。 - なぜ象印は20年前から見守りサービスを続けているのか
不測のデス(death)をテクノロジーで防ぐのもデステックだ。2001年から通信技術を使った見守りサービス「みまもりほっとライン」を提供している象印マホービンに、その狙いを尋ねた。20年以上続けるのはだてじゃない。 - 死後に困らない&困らせないアレコレをスマートに託せる「lastmessage」
自分が死んでしまった際にメッセージを発信したり、抹消したいIDを消したりといったことを託せるサービスが増えている。しかし、利用者との約束を果たさないまま姿を消すサービスも多い。2020年3月に提供を始めた「lastmessage」はどうなのだろうか? - フリーソフト「死後の世界」が19年以上も現役であり続ける理由
前回のログインから一定時間が過ぎたら、あるいは期日指定で特定のフォルダーが削除できる「死後の世界」。Version 1.00が完成して以来、19年以上も提供を続けている。息の長いこのフリーソフトはどのように作られ、管理されてきたのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.