iPhone 15 Proの新体験をもたらす「A17 Proチップ」から将来の「M3チップ(仮)」を想像する:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)
例年通り、Appleが新型iPhoneを発表した。上位モデルの「iPhone 15 Proシリーズ」は、初めての3nmプロセスSoC「A17 Proチップ」が搭載されているが、その特徴を確認しつつ、MacやiPad Proなどに搭載されるであろう「M3チップ(仮)」を少し想像してみようと思う。
2023年も、新しいiPhoneとApple Watchが発表された。が、そのラインアップはまさに'“盤石”といえるものだった。
従来のiPhone Pro/Pro Maxシリーズのステンレスフレームは、高級感にあふれる一方で、重さの面では不利だった。それに対して今回のiPhone 15 Pro/Pro Maxで最高級グレードのチタン合金を外装部に、内部フレームをアルミ合金とし、それを電磁溶接で高精度に統合したハイブリッド構造にすることで、腕時計クラスの高い質感と軽量さを両立させた。
iPhoneについてはカメラ機能も全体的に向上し、iPhone 15 Pro Maxだけに取り入れられた、ユニークな120mm相当の望遠カメラや、7本の単焦点を切り替えながら撮影できて、シームレスかつ自動的に切り替わるペット対応のポートレートモードなど、実機で試したくなる機能は多い。
それだけ、今回のiPhone(とりわけProシリーズ)は、“体験の質”にフォーカスしたモノ作りがされているということだ。
発表された製品の紹介については別記事を参照いただくとして、このコラムでは、主にテクノロジーの視点から、いくつかの注目できる切り口について書き進めていきたい。
1つはiPhone 15 Pro/Pro Maxが搭載する「A17 Proチップ」についてで、増加したトランジスタをどのような用途に割り付けているのか。もう1つは買い替えサイクルが長くなっている中での「iPhoneの製品戦略の変化」について、そして、今後予想される「A17 Proチップを出発点とした『M3チップ(仮)』への展望」だ。
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3nmプロセス初採用の「A17 Proチップ」 意外と“攻めてる”面も
2023年のiPhone 14 Proシリーズに搭載されたSoC「A16 Bionicチップ」は、ざっくりいうと「A15 Bionicチップ」の小改良(マイナーチェンジ)版といってもよいものだった。基本的な処理パフォーマンスに変化はなく、新要素の「Dynamic Island(ダイナミックアイランド)」など、ハードウェア的な新機能を実現するための回路を追加したような作りとなっているからだ。
今回の新製品のうち、メインストリームを担うiPhone 15とiPhone 15 Plusには、このA16 Bionicが搭載される。望遠カメラがないことと、ディスプレイの常時点灯機能(Always On Display)に対応しないことを除けば、iPhone 14 Pro/14 Pro Maxと同じ体験ができる。2020年モデル(iPhone 13世代)まで、Appleは「Pro」と「無印(メインストリーム)」に同じSoCを採用していた(ただし、無印は動作速度がやや遅い)。
どうやら、今後は無印とProでSoCの世代をずらす戦略を取るようである。

メインストリームのiPhone 15/15 Plusには、2022年のiPhone 14 Pro/14 Pro Maxと同じ「A16 Bionicチップ」が搭載される。CPU/GPUコアやNeural Engineの構成に変化はない
そしてA17 Proチップの注目点は、何といっても3nmプロセスを用いた初めての量産SoCということだ。トランジスタの数も、A16 Bionicの約160億個から約190億個と約30億個増えている。
しかし、トランジスタの数はやみくもに増やしているわけではない。「たった30億個しか増えてないじゃないか」と思うかもしれないが、初めての3nmプロセス製品としてはかなり“攻めて”いる
A16 Bionicは、5nmでも成熟した最新世代のプロセスで生産されている。それに対して、A17 Proは繰り返しだが初めて3nmプロセスで生産される製品だ。
集積度は組み込むトランジスタの種類にもよるが、A17 Proのような複雑なSoCの場合、単純に5nmから3nmにプロセスを縮小すると、ダイの面積を20%程度削減できると言われている。単純にA17 Proのトランジスタ数をA16 Bionicのそれで割ると、増加率は18.7%。「SoCのフットプリント(設置面積)を変えずに設計する」と考えたなら、妥当な増加量だ。
ちなみに、A17 Proの製造を担当する台湾TSMCが見積もるところでは、5nmプロセスから3nmプロセスに切り替えると、同一クロックなら最大で30%の消費電力の抑制効果があり、同一消費電力ならクロックは最大15%向上できるという。恐らく、A17 Proは“その間”ののバランスを取ったSoCだと思われる。

TSMCの3nmプロセスに関する説明によると、同じ機能のSoCなら、5nmプロセスから3nmプロセスに切り替えることで同一クロックなら最大で30%の消費電力の抑制効果があり、同一消費電力ならクロックは最大15%向上できるという
こうした半導体技術の進歩は、主にNeural Engine(推論プロセッサ)とGPUの強化に割り当てられている。
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