iPhone 15 Proの新体験をもたらす「A17 Proチップ」から将来の「M3チップ(仮)」を想像する:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/4 ページ)
例年通り、Appleが新型iPhoneを発表した。上位モデルの「iPhone 15 Proシリーズ」は、初めての3nmプロセスSoC「A17 Proチップ」が搭載されているが、その特徴を確認しつつ、MacやiPad Proなどに搭載されるであろう「M3チップ(仮)」を少し想像してみようと思う。
Neural Engineはスループット2倍に GPUはレイトレーシングに対応
A17 ProのNeural Engineは、コア数こそ16基でA16 Bionicと同じだ。しかし、設計を一新したことで、スループット(実効処理速度)は最大2倍となった。GPUも、コアの設計を一新した上で、その数を5基から6基に増加させている。
GPUは「最大20%のパフォーマンス向上」とされているが、これは単純にコアが増えた分と考えてよいだろう。ただし、省電力制御を改良したことで、ゲームを動かした際の体感パフォーマンスの向上はより大きいという。限られたiPhoneの実装スペースの中で、GPUコアを強化できたのは、プロセスの微細化の恩恵といえる。
加えて、新しいGPUコアはハードウェアベースのレイトレーシング(RT)処理に対応している。従来のソフトウェアベースのRT処理と比べて、ハードウェアベースの処理は最大4倍のフレームレート改善につながるという。グラフィックスの品質やリアリティーの大きな向上により、ゲーム専用機並みの高品位な映像を実現できるようになった。
一方で、CPUは高性能コア(Pコア)が「最大10%の性能向上」、高効率コア(Eコア)が「最大4倍の電力効率」という表現をしている。動作クロックが分からないので単純比較はできないが、今回は性能よりも効率の改善を狙ったアップデートが施されたと思われる。
トランジスタの増分は、主に「GPUコアの改良と増加」「Neural Engineの一新」「USB 3.2 Gen 2(※1)への対応を含むインタフェース改良」に割り当てられ、全体の省電力化を図っているとみられる。中でも注目されるのは、Neural Engineの一新だ。
(※1)Appleは「USB 3」と呼称しているが、伝送速度が最大10Gbpsであることから本来は「USB 3.2 Gen 2」と呼ぶべきところである
半導体の仕様決めにおいて、Appleは明確に意思を持ってリソースを割り当てる。今回、Neural Engineをリニューアルし、スループットを“2倍”に引き上げたということは、ここ数年で進めてきた推論エンジンを用いた端末体験の向上を、引き続き進めていく意思を示したといえるだろう。
iPhone 15 Proシリーズでいえば、ポートレート機能の改善やペットの認識など、新しいカメラ機能に活用されているはずだが、さらに先のiOSで実現しようとしている新しいアイデアがあるのかもしれない。
ただ、Appleは自社の半導体のパフォーマンスを上げること“だけ”に注力しているわけではない。
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