「ムーアの法則」をさらに加速! Intelが2020年代後半に「ガラス基板」のCPUを実用化 1兆個のトランジスタの集積を目指して
Intelが、有機素材の代わりにガラス素材を使った基板を用いたCPU(半導体)の製造を2020年代後半に開始することを表明した。ガラス基板を用いることで回路の集積度や電力効率のさらなる向上、ゆがみの減少による歩どまりの改善が期待される。
Intelは9月18日、CPU製品の基板について、2020年代後半から有機素材に代わってガラス素材を採用することを発表した。「(半導体)業界が2030年以降も『ムーアの法則』を推進するため」の取り組みで、より高密度かつ高性能な半導体の実現につながるものと考えられる。
有機基板の限界
Intelでは、最長で15年おきにCPU基板の技術革新を進めている。現在製品では、EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)を適用した有機素材の基板を採用している。
しかし最近は、CPUコアから独立した半導体類(GPUコアやAIプロセッサ)の実装/機能強化、1枚の基板に複数の半導体をまとめて実装する「チップレット技術」の採用など、CPU基板の内部接続(インターコネクト)の高速化がより一層求められるようになってきた。信号速度、電力供給、物理的な安定性を考えると、従来の有機基板は“限界”を迎えつつある。
IntelのCPUパッケージは、最長で15年周期で革新が行われており、1995年頃からセラミック基板から有機パッケージへの移行を開始し、ハロゲン/鉛フリーを実現した。ガラス基板の採用は、EMIBを適用した有機基板以来の革新となる
ガラスコアのメリットは?
Intelは、有機基板の後継候補として、10年以上に渡ってガラス基板の研究/評価を続けてきたという。
有機基板は、容易に低コストで作れることが何よりのメリットだ。これをガラス基板に切り替えると、以下のような電気的/機械的な特性の改善を期待できるという。
- より高い温度に耐えられるようになる
- 回路パターンのゆがみを最大で半減できる
- 光相互接続をシームレスに統合できるようになる
- インダクタ/コンデンサをガラス内に埋め込めるようになる
- 光相互接続の統合やインダクタ/コンデンサの埋め込みによって、電力効率を高めやすくなる
- 基板をより平坦に作れる
- リソグラフィーの焦点深度を高めやすい
- 回路の積層実装がやりやすくなる
- 基板上での相互接続密度を10倍まで高められる
- 結果的に内部通信の速度を高めやすくなる
- 「歩どまり」も改善できる
- 大きなフォームファクターであるほど効果は高い
Intelでは、2025年初頭に製造を開始する予定の「Intel 18A」プロセスの“先”において、このガラス基板の実製品への適用を目指している。既に米アリゾナ州チャンドラーに10億ドル(約1476億円)を超える投資を行ってガラス基板の研究開発用の製造ラインを設けた他、製造や資材供給に関わるパートナー企業との協業を進めているという。ガラス基板の実現に必要な開発も600以上行ったとのことだ。
同社は、2030年までにガラス基板を使うことで1兆個のトランジスタを搭載する半導体を実現する見通しだ。なお、同社はガラス基板と並行して有機素材の基板も使い続けるという。
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