新型SoC「M3ファミリー」でAppleが示した“進化と成熟”:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
AppleがMac向けに投入した「Apple M3チップファミリー」は、過去2世代と比べると変わった点が多い。現時点で分かっている情報をもとに、その変更点がもたらす影響を掘り下げて見ていきたい。【訂正】
新設計のGPUコアが生み出す“違い”
先にCPUの話をしてしまったが、M3チップファミリーの設計において、最も多くの開発リソースとトランジスタ数を費やしたのは新設計となったGPUコアである。このGPUコアの設計は、機能面を見るとA17 ProチップのGPUコアと共通点が多いものと思われるが、機能を見てみると差異もある。
新GPUで見るべきポイントは「Dynamic Caching(ダイナミックキャッシング)」「メッシュシェーダー」「レイトレーシング」の3つだが、後二者については3Dグラフィックスの品質向上(より正確いうと品質向上につながる処理を支援する機能)で、Dynamic CachingはGPUの性能を余す所なく引き出すための仕掛けとなる。
Dynamic Cachingを使うと、3Dレンダリングを行う際に走る数千のプロセスに対してユニファイドメモリを“動的に”割り当てて、不要になったら解放して別のタスクに割り振るという一連の手続きを、ハードウェアベースで行われるようになる。
これにより、グラフィックス関連のプロセスがユニファイドメモリを過剰に確保してしまい、そのことでシステム全体のパフォーマンスが悪化してしまう事象を避けられるようになる。
この機能は、使えるメモリ容量が少ない状況で高い効果を得られる。例えば、M3チップ搭載の8GBメモリのMacなら、複雑な3Dシーンをレンダリングする場合などに、処理がストールすることなく最大スループットが出るようになるという。最低限の構成でも、3Dのリアルタイムアニメーションがスムーズに動くようになる工夫だと考えればいいだろう。

3Dグラフィックスのレンダリングでは、GPUのグラフィックスメモリをピーク時に合わせて確保する傾向にある。システムメモリとグラフィックスメモリを共有するApple Siliconでは従来、これがシステム全体のパフォーマンス悪化の一因となっていたが、M3チップファミリーではグラフィックスメモリの確保/解放をハードウェアが動的に行うので、特にメモリ容量の少ない構成での3Dグラフィックスのパフォーマンスが改善している
もちろん、パフォーマンスの改善効果が得られるのはゲームだけにとどまらない。
メッシュシェーダーは、複雑な映画制作に使われるような「メッシュシェーディング」の処理を高速化するのに寄与する。シーン全体をメッシュシェーディングで構築する場合は、GPUコアが増えるほどに恩恵にあずかりやすくなる。
「Lies of P」など一部のゲームタイトルでは、レイトレーシングの処理が高速化して、より美麗なグラフィックスを楽しめるようになるはずだ。
実際のアプリ上でのGPU機能のチェックは、さらに実機での検証をお待ちいただきたい。
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