あらゆる障害に希望を与える「Access コントローラー」のカスタマイズ性――テクノロジーの発展を加速してきたインクルーシブな試み【SIE編】:林信行の「テクノロジーが変える未来への歩み」(4/4 ページ)
テクノロジーが困っている人を助け、そして新たな発展へと結びつく――SIEが投入したPlayStation 5向けの「Access コントローラー」を林信行氏が試した。
“障害”とは、病気そのものが障害なのではない
アクセシビリティー機能は、1990年代にPC上で提供され障害を持つ多くの人々が「自由」を獲得していったが、2020年代に入ってXboxのアクセシビリティー対応などを皮切りに、急速にゲームの世界で広がってきたことには正直驚いている。
ゲームによってはリアルタイムでの素早い操作が求められるなど、ただ文章を書いたり、絵を描いたりといったPCでの操作よりもはるかにハードルが高いからだ。しかし、だからこそ日常生活においてもチャレンジを強いられる障害者の方々には挑戦のしがいがあるのかなと思ったが、どうやらそれだけではないようだ。
先述のePARA 畠山駿也さんは障害があるために、小さい頃から外で遊ぶことなどができなかったという。
「不自由なことを理由に、いつかどうせ出来なくなるからと色んな事に対して諦めがちで、どんなことも自己選択のできない無責任な人間」と言う畠山さん。そんな彼を変えたのが「格闘ゲーム」との出会いだったという。
実際、格闘ゲーム「ストリートファイター6」のプレイ画面の中では、畠山さんは敵を殴ったり蹴ったり攻撃をかわしたりと画面を自在に動き回り、障害を持つことを一切感じさせることがなかった。
肢体不自由のある人たちの「本当の可能性」にアクセスできる社会を目指して、アシスティブ・テクノロジーの普及に努めるテクノツールの田代洋章さんは、ゲームが持つ可能性について、こんな話を披露してくれた。
左がePARAの畠山駿也さん。より多くの人がeスポーツに参加できるようにと活動をしている。右はテクノツールの田代洋章さんで、肢体不自由のある人たちの「本当の可能性」にアクセスできる社会を目指してアシスティブ・テクノロジー」(支援技術)の普及に努める
障害が重い人の中には1人ではプレイすることができず、家族と一緒に操作してゲームをプレイする人たちもいる。「そうすると何が起きるかというと家族内でコミュニケーションがすごく盛り上がるようになる。それまでは障害を持つお子さんがこんなことができたと言うものをたまに見せて褒めるだけのコミュニケーションだったのが、その子がプレーヤーになることで、そのプレイに関するコミュニケーションが生まれて、それがすごく盛り上がる。これはゲームが持つ何かだと思う」と語る。
田代さんは、何とかジョイスティックを駆使してゲームがプレイできるようになった小学2年生が、そのジョイスティックをタブレットに繋いで文字の入力などにも活用し始めたエピソードも紹介してくれた。
ePARAの畠山さんは、そんな田代さんの「“障害”とは、病気そのものが障害なのではなく、障害を感じさせる環境によって生じる物で、環境によって障害を感じない状態にすることもある」と言う言葉に、感銘を受けたことを自身のnoteにつづっている。
そんな畠山さんは現在、eスポーツ大会への参加を目指している。身体的な制限がある方や特別なニーズを持つ方が、よりeスポーツ大会に参加しやすい社会を目指してAccess コントローラーの使用がレギュレーションで認められるなどを求める発信を続けている。
今回、お話を伺ったみなさん。後列左から、SIEグローバル商品企画部の堀越朝さん、池ノ谷優一郎さん、一般社団法人日本支援技術協会理事の田代洋章さん、前列左からePARAの畠山さん、テクノツールの干場慎也さん
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