「GPD G1」はドッキングステーションとしても使える外付けGPUボックスだ! Thunderbolt 4(USB4)対応モバイルPCでゲームや写真/動画編集は快適になる?(3/4 ページ)
中国GPDが販売している「GPD G1」は、Radeon RX 7600M XTを内蔵するコンパクトな「GPUボックス」だ。モバイルノートPCにつなぐと、グラフィックスの性能や写真/動画の編集速度が上がるらしいのだが、果たしてどのくらいの効果があるものか、試してみよう。【訂正】
GPD G1をつないだ「ThinkPad X13 Gen1」はどれほど強いのか?
GPD G1というデバイスを一通り説明したところで、GPUボックスがモバイルノートPCにもたらす“プラス”の効果をベンチマークテストを通して探っていこう。
検証上の都合で、今回は動作確認をしたノートPCのうち、ThinkPad X13 Gen 3(Intel)を使って本機の有無がパフォーマンスに与える影響をチェックする……のだが、本機に外部ディスプレイをつなぐかどうかで悩んだ。というのも、GPUボックスを使う場合、外部GPUから直接映像を出力した方が、描画結果をノートPC(内蔵GPU)に戻す必要がないため、パフォーマンス面でプラスとなるのだ。一方で、ノートPCにGPUボックス“だけ”をつないだ場合、見た目はスッキリとするが、描画結果をノートPCに戻すという“余計な処理”が発生する分、パフォーマンスが下がる。
いろいろ考えた結果、今回は見た目のスッキリさを優先して本機とノートPCのみの構成でテストしてみることにした。
テストで使うThinkPad X13 Gen 3(Intel)の主な仕様は以下の通り。2024年1月19日現在でも、モバイルノートPCとしてはハイスペック寄りな構成だ。
- CPU:Core i7-1280P(Pコア6基12スレッド+Eコア8基8スレッド、vPro対応)
- GPU:CPU内蔵(Intel Iris Xe Graphics、実行ユニット96基)
- メモリ:32GB LPDDR5x(増設/換装不可)
- ストレージ:1TB SSD(PCI Express 4.0接続)
- ディスプレイ:13.3型IPS液晶(1920×1200ピクセル、タッチ非対応、最大300ニト)
- OS:Windows 11 Pro(バージョン23H2 英語版)
少し前置きが長くなったが、テストを始めよう。
3DMark
やはりGPUのパフォーマンスを比べるなら3Dグラフィックス――ということで、最初に3Dグラフィックスのベンチマークテストアプリ「3DMark」を使い、実装されている主要なテストを一通り試してみた。総合スコアは以下の通りだ。
- Fire Strike(DirectX 11ベース:フルHD描画)
- 内蔵GPU:5485ポイント
- GPD G1装着時:1万8119ポイント
- Fire Strike Extreme(DirectX 11ベース:WQHD描画)
- 内蔵GPU:2707ポイント
- GPD G1装着時:1万874ポイント
- Fire Strike Ultra(DirectX 11ベース:4K描画)
- 内蔵GPU:1350ポイント
- GPD G1装着時:6136ポイント
- Time Spy(DirectX 12ベース:WQHD描画)
- 内蔵GPU:1616ポイント
- GPD G1装着時:8542ポイント
- Time Spy Extreme(DirectX 12ベース:4K描画)
- 内蔵GPU:906ポイント
- GPD G1装着時:4309ポイント
- Port Royal(DirectX 12ベース:レイトレーシングテスト)
- 内蔵GPU:実行不可
- GPD G1装着時:4302ポイント
テストにもよるが、GPD G1を接続するとスコアが3.3〜5.3倍に跳ね上がる。描画結果をPC側に戻すというオーバーヘッドがあるにも関わらず、ここまでパフォーマンスが向上するのはすごい。
これなら、スコア的にはフルHD(1920×1080ピクセル)はもちろん、WQHD(2560×1440ピクセル)解像度でも良い感じのパフォーマンスでゲームを楽しめそうである。
FF14ベンチマーク/FF15ベンチマーク
続いて、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」と「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」を試す。
FF14ベンチマークは比較的枯れたグラフィックスエンジン、FF15ベンチマークは比較的新しいグラフィックスエンジンを使っている。特にFF15ベンチマークは処理が重ためなので、設定次第では最新GPUでもスコア的に“苦戦”を強いられることもある。
今回は、全画質のテストをフルHD描画で実行している。結果は以下の通りだ。
- FF14ベンチマーク
- 標準品質(ノートPC)
- 内蔵GPU:7532ポイント(やや快適)
- GPD G1接続時:1万5197ポイント(非常に快適)
- 高品質(ノートPC)
- 内蔵GPU:5281ポイント(普通)
- GPD G1接続時:1万4171ポイント(とても快適)
- 最高品質
- 内蔵GPU:4059ポイント(普通)
- GPD G1接続時:1万3166ポイント(とても快適)
- 標準品質(ノートPC)
- FF15ベンチマーク
- 軽量品質
- 内蔵GPU:2644ポイント(重い)
- GPD G1接続時:9770ポイント(とても快適)
- 標準品質
- 内蔵GPU:2096ポイント(重い)
- GPD G1接続時:8437ポイント(快適)
- 最品質
- 内蔵GPU:1630ポイント(動作困難)
- GPD G1接続時:6455ポイント(快適)
- 軽量品質
FF14ベンチマークについては、内蔵GPUでもそこそこプレイできそうだが、GPD G1を接続することでワンランク上の評価を得られた。本機は「もっと画質を高めたい」あるいは「解像度をWQHDに上げてプレイしたい」という場合に活躍してくれそうだ。
一方で、FF15ベンチマークについては、予想通りIris Xe Graphics単体でのプレイは非常に厳しい。普通評価の軽量品質でも、たまに描画のカク付きが見られるレベルだ。その点、GPD G1をつなぐと、高品質でも描画のカク付きなくテストを完走できた。そこそこ重たいゲームを快適にプレイするためのアイテムとしても、本機は重宝しそうである。
ゲームはさておいて、筆者的に“本命”なのが、写真や動画の編集におけるGPD G1の活躍である。この点はどうなのだろうか……?
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