「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり: IT産業のトレンドリーダーに聞く!(4/4 ページ)
ポストコロナ時代に入り、業界を取り巻く環境の変化スピードが、1段上がった。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。大河原克行氏による経営者インタビュー連載の日本IBM 後編をお届けする。
箱崎に続き虎ノ門の新本社でも社長室は廃止
―― 2024年1月30日に、東京・虎ノ門の虎ノ門ヒルズステーションタワーに本社を移転しました。この狙いは何ですか。
山口 お客さまやパートナー、社員が輝いて議論できる場所を用意しました。日本中から人が集まりやすいところに拠点を配置し、物理的に集まったり、バーチャルで結んで仕事ができたりする拠点になります。ここから議論やイノベーションが起き、アイデアが生まれるような拠点にしていきたいと考えています。
一方、これまでの本社である箱崎事業所は25フロアのうち15フロアを返却し、今後は上層階の10フロアを利用することになります。また、丸の内の永楽ビルディングのオフィスも継続的に利用できるようにして、虎ノ門新本社を含めた3カ所を都内主要拠点として、社員が働く場所を柔軟に選択できるようにしました。
この他にも、新宿/渋谷/品川などのサテライトオフィスや、時間貸しオフィスによるリモートワークスペース、自宅からの勤務も可能ですから、最も働きやすく結果が出しやすい場所を選び、時間の使い方も考えながら働くことができます。仕事によっては3週間連続で出社した方がいい場合もありますし、2週間自宅にこもった方がパフォーマンスが上がる場合もあります。仕事の内容や仕事のフェーズによって働く場所を自由に選択し、最大限のパフォーマンスを上げてもらうための選択肢を増やしたい。そのための1つの場所が、虎ノ門本社になります。
―― 社長室も、虎ノ門新本社に置くことになりますか。
山口 社長室は、2024年1月31日で廃止しました。虎ノ門本社に社長室を作るという提案は受けたのですが、会社は経営者のものではなく社員のものですから、社長室は作らずに、同時に役員室もなくしました。縦横の壁を排除し、コミュニケーションを活発化したいと考えています。
―― 2024年は日本IBMにとって、どんな1年になりますか。
山口 日本IBMの組織体制を変えて事業ポートフォリオが明確になり、テクノロジーを届けることができる体制も整い、取り組むべき価値共創領域も明確になってきました。足腰がしっかりしてきたともいえます。2024年は、5つの価値共創領域への取り組みをどこまで深められるかがテーマだといえます。
信頼される企業であることをベースに、誠実にビジネスに取り組んでいく姿勢も変わりません。もはや人工(にんく)で行うビジネスモデルだけでは厳しくなるのは明らかです。社会課題が山積している現在、いかにテクノロジーを活用して、社会課題を一緒に解決できるかが鍵になります。そうしたアプローチをすることができる会社になりたいと思っています。
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