VRやハイスペックPCは教育をどう変えるのか? マウスコンピューターと大阪教育大学が「VR教材」セミナーを開催(2/5 ページ)
マウスコンピューターと大阪教育大学は、1月30日に包括連携協定を締結した。その協定に基づく取り組みを紹介するセミナーが6月11日に開催されたので、その模様を詳しくお伝えする。
次世代の「パソコン教室(パソコン室)」はどうあるべき?
本セミナーは2部構成で、第1部ではマウスコンピュータと大阪教育大学が実施した共同研究について紹介された。
第1部の冒頭であいさつに立ったマウスコンピューターの軣秀樹常務(※2)は、マウスコンピューターは2023年に創業30周年を迎えたことを紹介。その一環で「新しいことにどんどん取り組もうというスローガンを掲げている」と語る。
(※2)軣氏は6月20日付で社長に就任している(参考記事)
同社では2010年から夏休みに「親子パソコン組み立て教室」を開催しており、2024年も7月に開催する予定であることにも触れ、大阪教育大学と「教育関連全般で協力をさせていただきたい」とした。
続いて、大阪教育大学の鈴木剛理事(副学長)が、共同研究の背景と目的について説明した。
この共同研究は「次世代PC教室プロジェクト」という名称で、探教育現場で求められる学びを支えるために必要な「パソコン教室」の在り方を探ることを目的としているという。
鈴木氏によると、GIGAスクール構想でICT(情報通信技術)を活用した教育が一気に広がった反面、それに伴い校内のパソコン教室を廃止する学校も出てきているという。パソコン教室の廃止により、「探究学習」「STEAM教育(※3)」など、教育現場で必要な学びに支障が出る事例もあるそうだ。
(※3)Science(科学:理科)/Technology(技術)/Engineering(工学)/Arts(芸術:図工科や美術科)/Mathematics(数学)に関する教育の総称
ただ、こうした現状を踏まえて「次世代のパソコン教室はどうあるべきか?」「ICTを活用した学びの最適化を進めるには、どういうスペックのPCを整備すべきか?」といったことを検討するにしても、まだ分かっていない部分もある。今回の共同研究は、それを明らかにする目的もあるのだという。
研究に当たって、具体的には「教育機関に対するヒアリング」「360度視点移動が可能なVR映像の教育利用について、効果や教材作成に必要なPCの性能検証」「これからの教育現場で求められる学びを支えるために必要なPCの性能検証」の3つを実施した。その結果については、同大学の堀一繁教授(産学官イノベーション共創センター長)から報告された。
ヒアリング調査は、茨城県立竜ヶ崎第一高等学校と佐賀県立到遠館高等学校の2校で実施した。2校は共に文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定されており、竜ヶ崎第一高校では流体シミュレーションや「マインクラフト」、3Dプリンタでの印刷などに高性能PCを活用しており、到遠館高校では3Dプリンタによるプロペラやロケットの試作、ビッグデータ処理などに高性能PCを活用しているという。
PCの必要スペック検証に当たっては、「VR教材の編集(自作)」「動画編集」「3Dプリンタの利用」「マインクラフトの描画」の4ケースを想定し、さまざまな種類のPCを用意して臨んだという。VR教材の編集をする場合はハイスペックなPCが必要である反面、動画編集や3Dプリンタの利用にはミドルスペックが望ましいという結果となった。マインクラフトの描画については、GIGAスクール構想における最低スペック基準のPCでも十分に行えるものの、滑らかさに欠けた。
以上のことから、GIGAスクールにおける学習用端末の活用と並行して、パソコン教室の整備や活用を進める必要性があり、そのことが各教科の学びの質の向上や効果的な探究学習を後押しできると分かったとのことだ。
少し言い方を変えると、VR映像の作成や動画編集、3Dプリンタを活用するには、現状の学習用端末やパソコン教室の旧世代PCではスペック的に不十分ということになる。
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