「驚きがないPCメーカーになる」の真意 電撃退任したマウスコンピューター 小松社長の18年におよぶ歩みを振り返って分かったこと(1/3 ページ)
マウスコンピューターが株主総会を開き、同社の社長交代が明らかになった。18年続いた小松永門 代表取締役社長の歩みを、大河原克行氏がまとめた。
マウスコンピューターが、トップ人事を発表した。小松永門(こまつ ひさと)社長が退き、6月20日付けで新社長に軣秀樹(とどろき ひでき)常務取締役が就任する。18年間という長期に渡り社長を務めてきた小松氏は会長にはとどまらず、経営のバトンを完全に手渡すことになる。
小松氏はインテルを経て、2005年にマウスコンピューターの親会社であるMCJに入社した。2006年からマウスコンピューターの社長に就任し、同社の事業拡大を牽引してきた。小松氏自身、60歳の節目を迎えるタイミングでの決断となる。小松氏のこれまでの取り組みを振り返ってみたい。
顧客や社員を重視し、信頼を1つずつ積み重ねるという経営手法
マウスコンピューターは、2024年に創業31年目を迎えた。2006年に社長に就任した小松氏は、その約6割にあたる期間を、経営トップとして陣頭指揮を執ってきたことになる。
この間、取材をしていて感じたのは、小松氏の経営手法は顧客や社員を重視し、信頼を1つずつ積み重ねるというやり方を繰り返してきたという点だ。
象徴的ともいえるのが、30周年を迎えた2023年度に「新しいこと、マウスから」をキーメッセージに、年間30件を目標にして新たなことに「挑戦」したことだ。30周年という数字に合わせて、社外向けに30件、社内向けに30件の新たなチャレンジをしている。
具体的な成果として、PC購入者への送料無料化や3年間の無償保証サービスを標準化したのに加え、直販限定ブランドのゲーミングPC「NEXTGEAR」シリーズの投入、広島サービスセンターの本格稼働といった顧客向け施策の実施やサービスの拡充を行う一方、1時間単位で有給休暇を取得できるようにするといった柔軟な働き方改革の導入、厚生労働省の「くるみん」の認定取得など、社員にとって働きやすい環境作りにも取り組んできた。
これらの取り組みにおいて、小松氏は、「お客さまにとってプラスに働くことに新たに挑戦しようと考えた。また、社内向けの挑戦でも社員が変えたいと思うことから取り組んでいった」と振り返る。顧客の声を起点にアイデアを生み、そこから新たなサービスにつなげたり、社員の声を聞いたり、働き方の変化を捉えたりしながら、働きやすく、働きがいがある環境作りを進めていった。
例えば、3年間無償保証サービスを標準で提供するという挑戦も、顧客の視点から生まれたアイデアだ。
小松氏は「従来は1年間の無償保証だったが、PCを1年間で買い替える人はいない。最低でも3年は使う。それならば、少なくとも3年は安心して使ってもらえるようにすべきであるというのがサービス開始の発端となっている」と振り返る。
まさに、顧客を重視し、信頼を1つずつ積み重ねる小松氏の経営手法に合致した取り組みだったといえる。
そして、「重要なのはトップダウンで進めた挑戦ではなく、現場の社員が中心になって進めている挑戦であること」とも語る。30個の挑戦の中身は、全て社員が考えた。「30個やるということは決めたが、後は社員に任せた。私が口を出すことで、もっと膨らますことができる場合にだけ口を出した」と笑う。
新ブランド「NEXTGEAR」の投入に合わせて、ノートPCにブルーグリーンという斬新なボディーカラーを採用したことで話題を集めたが、これもユーザーの声を反映している。
このとき、これまでの製品企画からすれば、想定外の意見が集まったことで、現場の社員たちは、それを反映することにちゅうちょしていた場面があったという。そのときも、小松氏は「集まった声に沿ってやらないのならば、何のためにユーザーに聞いたのか。ユーザーの要望ならば、やってみたらどうか」と一押しし、現場の社員は自信を持って、ユーザーの声を製品化に反映したという。
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