AMDの新型CPU「Ryzen 9 9900X/9950X」の真価はどこで発揮される? 試して分かったこと:先行レビュー(4/4 ページ)
AMDが、「Ryzen 9 9900X」「Ryzen 9 9950X」の日本における発売日時と想定価格を公表した。同社から先行レビューキットをお借りできたので、その実力をチェックしてみよう。
クリエイター系アプリは多コアを生かしやすい
PCで行う「重たい処理」は、何もゲームに限ったことではない。写真や動画の編集でもCPUパワーが求められるシーンは多い。時間の都合で、今回は「Adobe Lightroom Classic」を使って写真(RAWファイル)の現像(書き出し)処理に要する時間のみ計測した。
本アプリでは写真の編集時にはGPUもフル活用しているが、写真の現像処理にはCPUを使っている。つまり、現像はCPUのパフォーマンスを見る上で有用なのだ。
テストでは、レンズ交換式カメラ「Nikon Z 7II」で撮影したRAWファイル100枚分を、解像度を維持したままJPEGファイルとして書き出すのにかかる時間を測定した。結果は以下の通りだ。
- Ryzen 9 9950X:30.1秒
- Ryzen 9 9900X:31.8秒
- Ryzen 7 9700X:33.4秒
- Ryzen 5 9600X:38.3秒
- Core i9-13900K:47.6秒
前回もRyzen 9000Xシリーズの下位モデルの現像スピードに驚いたところだが、Ryzen 9 9900X/9950Xは、CPUコアが増えた分だけさらに高速化していて一層驚いた。
筆者の現在のメインPCは「Core i7-12700F」なのだが、こちらは同じ書き出しに1分以上の時間がかかる。Ryzen 9 9950Xに乗りかえたら、半分以下の時間で書き出しを完了できてしまう――これは本当にビックリするしかない。
仕事柄、筆者は写真を100枚以上現像することが意外と多い。製品発表会などの後は、かなりまとまった数の写真の編集/現像を行う。プライベートでも、子供の学校行事などはベストな写真を数枚選んだつもりが気付けば100枚を超えているようなこともざらだ。
いずれにしても、「少しでも早くデータ(JPEG写真)を送らなければならない」ことも多いため、書き出し時間を大きく短縮できるRyzen 9000Xシリーズは、それだけで魅力的に感じられる。
「多コア」が必要かどうかで分かれる必要性
Ryzen 9000Xシリーズの中でも上位モデルとなるRyzen 9 9900X/9950Xだが、正直にいうとゲーム“だけ”ではその優れた性能を生かし切れないかもしれない。もちろん、1コア当たりの演算性能は高いので、ゲームのパフォーマンスも高めてくれることは間違いないのだが、それなら前回紹介した下位モデルでも十分に役割を果たせる。
ゲームだけでなく、クリエイター系アプリを使う機会が多いユーザーにこそ、Ryzen 9 9900X/9950Xはピッタリだ。まだまだ“余力”を感じるので、今後さらに重たいゲームタイトルやアプリが出てきたとしても、余裕で動かせるだろう。これからPCのアップグレードや新調を行う際に「長く使える1台」を目指すのであれば、両CPUは最有力候補となるのは間違いない。
ちなみに消費電力だが、今回のテスト環境ではアイドル時で「91W」、3DMark(Time Spy Extreme)実行中のピーク時でRyzen 9 9900Xで「546W」、Ryzen 9 9950Xで「573W」となった。さすがに、Ryzen 9 9950Xはやや“電気食い”だが、Ryzen 9 9900Xは思ったよりも消費電力が少ない(とはいえ、Ryzen 7 9700Xよりは大きい)。
Socket AM5に対応するマザーボードやDDR5メモリなど、Ryzen 9000Xシリーズを迎え入れるに当たり、環境を刷新する必要がある人も多いとは思う。しかし、先述の通り、Ryzen 7000Xシリーズから単純に置き換えるだけでもパワーアップを図れる。価格も、Ryzen 7000Xシリーズの登場時と比べると“落ち着き”を感じる。
Ryzen 9000Xシリーズは、先代や競合と比べても、魅力的な高性能コンシューマー向けCPUだと言っていいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AMDの新型CPU「Ryzen 5 9600X」「Ryzen 7 9700X」はエントリーモデルでも高コスパで魅力的! ライバルCPUと比較して分かったこと
Zen 5アーキテクチャを採用するCPU「Ryzen 9000シリーズ」のハイエンドモデルが、順次発売される。先行して登場するRyzen 5/7をレビューする機会を得たので、その実力をチェックしていこう。
AMDが「Ryzen 9000シリーズ」の発売を1〜2週間程度延期 初期生産分の品質に問題
AMDが、米国で7月31日に発売する予定だった「Ryzen 9000シリーズ」のハイエンドモデルの発売を延期することが判明した。初期生産分に品質基準を満たさない個体が見つかったことが原因で、正常品への交換をした上で8〜16日遅れで発売される。
AMDの新CPUアーキテクチャ「Zen 5」の採用でRyzen 9000/Ryzen AI 300は強くなった? 特徴や変更点を解説
AMDのデスクトップ向けCPU「Ryzen 9000シリーズ」とモバイル向けAPU「Ryzen AI 300シリーズ」では、新しい「Zen 5アーキテクチャ」のCPUコアが採用されている。同アーキテクチャの特徴をかいつまんで紹介していこう。
AMDがZen 5アーキテクチャ採用でPコア押し! デスクトップ向け「Ryzen 9000シリーズ」を発表 Ryzen 5000XTシリーズの新モデルと共に2024年7月発売予定
AMDが、新型デスクトップCPU「Ryzen 9000シリーズ」を発表した。Zen 5アーキテクチャを初めて採用する製品の1つで、まずはパフォーマンス重視の「X」プロセッサから登場する。Zen 3アーキテクチャの「Ryzen 5000XTシリーズ」にも新モデルが投入される。
Zen 4アーキテクチャの“実力”は? 「Ryzen 7000シリーズ」の性能を先行チェック!
AMDが、Zen 4アーキテクチャを採用する新型デスクトップPC向けCPU「Ryzen 7000シリーズ」を9月30日19時に発売する。それに先駆けて、今回の新製品を試す機会を得たので、その実力をチェックしていこう。
