試して分かった新型「iPad mini」 欲張りすぎない進化で絶妙なコストパフォーマンスを獲得(3/3 ページ)
Appleから、最も小型なiPadとなる新型「iPad mini」が発売される。一見すると従来モデルから変わらないように思えるが、実際に試すと違いが浮かんでくる。林信行氏による先行レビューをお届けする。
欲張らない新型iPad miniがApple Pencil Proに対応した理由
全てがやや控えめな改善で、華やかな新機能の追加が少ない新型iPad miniにおいて、最大の華はApple Pencil Pro(2万1800円)への対応だ。
Apple Pencilは、もともと鉛筆のような自然な書き味で定評があるが、Apple Pencil Proはそこにスクイーズ(握る)と、バレルロール(回転する)という2つの操作を加えている。
例えば絵を描いている時、Apple Pencil Proを回転させる(バレルロールする)とペン先のブラシの向きもそれに合わせて回転する。それによって描き出しの太さを変えるなど、まるで本物のブラシで描いているような繊細な表現が可能だ。
本物のブラシなら、毛先がどの方向を向いているかを見て、描き出しが太くなるか細くなるかを判断するが、Apple Pencil Proの場合は、ブラシが着地しそうな位置にブラシの影が現れるので、これを見て描き出しの太さを判断する。
Apple Pencil Proに表現力の豊かさを加えてくれるのがバレルロールなら、利便性を加えてくれるのがスクイーズ(握る)操作だ。
これまでApple Pencilで絵を描いたりする際は、画面の隅にパレットを表示させて、そこからブラシやペンの種類、色などを選んで描いていた。これに対してiPadOS標準のメモアプリなどApple Pencil Proに対応したアプリでは、Apple Pencil Proを強く握る(スクイーズする)と、ペンのすぐ下に円形のパレットが現れる。このためパレットを画面上に表示しっぱなしにする必要がなく、その分、画面を広く使えるのだ。
まるで画面の小さなiPad miniを前提に作られたのではないかと思うほどに相性が良く、アップデートが控えめなiPad miniで、なぜApple Pencilだけ最上位のProモデルを採用したのかが良く分かる。
ただし、これは前モデルの第6世代iPad miniから乗り換える際のちょっとしたハードルにもなっている。前モデルで使っていたApple Pencil 2は使えないため、Apple Pencilごと買い換えないといけないのだ。ちょっと損した気分になるかもしれないが、それに見合う満足度を与えてくれるはずだ。
従来モデルからの更新が少ないように思える新型iPad miniだが、必要なところではちゃんと最新スペックを取り入れている、この絶妙な選択も新モデルの魅力になっている。
本格的な映像編集や写真の確認/レタッチをメインにしたい人、大画面で映像を楽しみたい人は迷わずiPad AirやiPad Proの方をお勧めするが、iPad miniはフィットする人にはものすごく高い満足度をもたらす製品だ。
価格的にiPad入門機としてもお勧めなら、数年前の大型iPadを愛用している人向けの携帯性重視の2台目のiPadとして選んでもらってもいいかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
人気の秘密は「何でも快適にできる魔法のガラス板」 Appleが語る新型iPadとiPad miniの変わらない魅力
発売が始まった新型iPadとiPad miniについて、Apple幹部がインタビューに答えた。
「M4チップ」と「第10世代iPad」こそがAppleスペシャルイベントの真のスターかもしれない
Appleのスペシャルイベントで華々しく登場した新しいiPad Pro/iPad Airシリーズだが、注目ポイントは他にあると林信行氏は語る。その心は?
新型「iPad Pro」が見せる未来の夢と「iPad Air」が見せたバランス感覚 実機を試して分かったiPad購入ガイド
話題を集めた新型タブレット「iPad Pro」と「iPad Air」の実機を、林信行氏がいち早く試し分かったこととは? そして従来モデルからの違いは何か、各iPadシリーズの購入ガイドをお届けする。
iPadOS 18配信開始 大画面向けの「計算機」追加 日本ではまだ利用できない「Apple Intelligence」も
Appleは9月17日(日本時間)、iPadOS 18の配信を開始した。これまでiPadで利用できなかった機能を新たに追加した他、トレンドの生成AIへの対応が主なアップデート内容となる。対応デバイスはiPad Pro(M4)やiPad mini(第5世代以降)など。
「Apple Vision Pro」を真っ先に体験した林信行氏が改めて考える「空間コンピュータ」の現在地
日本人で初めて「Apple Vision Pro」を体験した林信行氏が、今改めて同機の立ち位置を冷静に振り返った。

