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有力IT企業は“ガレージ”から始まった――「アメリカ西海岸」の“IT名所”を巡る(2/5 ページ)

米国の西海岸(太平洋側)というと、シリコンバレーを思い浮かべる人も多いと思う。シリコンバレーの発祥の地と言われるのが、Hewlett-Packard(現HP)の創業の地でもある「HP Garage」だ。Windowsを作る「Microsoft」の本社も、西海岸に本社を構える。これらの「IT名所」を訪問してみよう。

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「パロアルト」「スタンフォード大学」「HP Garage」の位置関係

 前段で出てきた3つのキーワード「パロアルト」「スタンフォード大学」「HP Garage」を理解するためには、地図で位置関係を把握すると良い。

 米西海岸(太平洋側)のカリフォルニア州のうち、SFベイエリアは中部からやや北部に当たる。サンフランシスコ半島を筆頭に、有名な「ゴールデンゲートブリッジ」のあるゴールデンゲート海峡を太平洋側から渡ると、広大なサンフランシスコ湾が広がっている。東岸にはオークランド市、南岸にはサンノゼ市があり、これらを合わせて「SFベイエリア」と呼ぶ。

 SFの部分は省略されることが多く、米国から来た人物が「ベイエリアから来た」と言えば、たいていはSFベイエリアのことを指している。

 今回の話題の中心となるパロアルト市は、サンフランシスコ湾の最奥部よりやや手前側に位置している。その北西にはMeta本社のあるメンロパーク市が、南東にはGoogleと、その持株会社であるAlphabet本社のあるマウンテンビュー市がある。

 パロアルトの中心街は、市内を南北に貫く「El Camino Real」という通りと、「University Avenue」という通りの交差する付近だ。大きなショッピングモールやレストランなどの建ち並ぶ繁華街があり、人口密度が低くて人の比較的まばらなSFベイエリアとしては珍しく、多くの人でにぎわっている。

 El Camino Realは、かつてカリフォルニアにスペインが進出してきたころ、各地に建てた、キリスト教の伝導所をつなぐ道として整備された経緯がある。そのため、この通りは北はサンフランシスコ半島よりさらに北側のソノマ郡から、南はサンディエゴ市までつながった道として存在している。「国道101号(Route 101)」を始めとするフリーウェイが整備されるまでは、高速道路に代わる基幹道路としても活用されていた。

位置関係
SFベイエリアとパロアルトの位置関係(Google マップを加工して作成)

 パロアルトの歴史を解き明かすと、スタンフォード大学に付属する街として形成された1894年にさかのぼる。

 当時、鉄道事業などで大成功した実業家であり、政治家だったリーランド・スタンフォード氏と、彼の妻であるジェーン・スタンドフォード氏は、病気で早世した息子のリーランド・スタンフォード・ジュニア氏の“記念碑”として大学を創設することを思いついた。2人はビジネスパートナーと一緒に土地を買い集め、スタンドフォード大学を整備した。そして、スタンドフォード大学の整備に合わせて生まれた街がパロアルト市だ。

 当時、サンフランシスコからサンノゼ方面までの鉄道が開通しており、その南端はパロアルトに隣接する「メイフィールド」と呼ばれる街だった。後にパロアルトは市域を拡大する形でメイフィールドを吸収し、現在のパロアルト市が形作られた。

パロアルト市
パロアルト市のカントリーサイン

 その名の通り、University Avenueはスタンフォード大学の正門へと続く道で、そこに沿って繁華街が形成されている。El Camino Realとの交差点付近には「Caltrain(カルトレイン)」という地域鉄道のパロアルト(Palo Alto)駅がある。

 一方で、旧メイフィールドの中核となる「California Avenue」沿いには、昔からの繁華街と、Caltrainのカリフォルニアアベニュー(California Avenue)駅がある。都合、パロアルト市は2つの繁華街と2つの鉄道駅を持つ街となっている。

 パロアルト周辺の史跡を回る場合、国際免許証を持っているならレンタカーを借りて自分で運転するのが一番楽ではある。ただし、Caltrainやバスといった公共交通を駆使してサンフランシスコから移動することも可能で、現在なら「Uber」や「Lyft」といったライドシェアサービスあるので、レンタカー抜きでも周遊はできる。場所によっては「レンタサイクル」のようなサービスもあるので、うまく活用するといろいろな場所を回りやすくなる。

 ともあれ、Caltrainでパロアルトへとやってきた場合、拠点となるのはパロアルト駅だ。列車の運行スケジュールをよく確認した上で、旅を楽しんでほしい。

パロアルト駅
レンタカーを使わない場合は、Caltrainのパロアルト駅(写真)を拠点にして各地を回ることをお勧めする。なお、同駅は建設中の「カリフォルニア高速鉄道」のルートに組み込まれることになっており、周辺の線路は高規格化と電化が行われた(つまり、近年まで非電化だった)。列車も気動車(ディーゼルカー)から電車に置き換わった

 下図はパロアルト市における名所の位置関係だが、パロアルト駅からHP Garageまでは約1.5km(徒歩20分程度)、スタンフォード大学のキャンパスがある中心部までは約2.2km(徒歩30分弱)となる。スタンフォード大学の場合、University Avenueを往復するバスが1時間に2本程度あるので、「歩くのが辛い」と思ったらバスに乗るのもいいだろう。

 University Avenue沿いには人気のレストランもあり、散策やカフェでの休憩で半日程度を過ごすのがお勧めだ。

位置関係
パロアルト市内にある主な史跡の位置関係。Caltrainのパロアルト駅は、スタンフォード大学の中心部から北方向に伸びる道路と主要道(El Camino Real)の交差点付近にある。HPの本社はそこから少し離れている上、一般の来訪者が行くような場所ではないため、位置関係を把握するだけで充分だろう
ダウンタウン
パロアルトのダウンタウン。University Avenue沿いには多数の店舗が並んで賑わっている(撮影時期の都合で、行き交う人が夏の装いになっている)
入り口
スタンフォード大学の敷地への入り口。同大学は面積が広く、ここから大学の中心部まで徒歩で30分ほどかかる
中心部
歩いてスタンフォード大学の中心部へとやってきた。中心部の広場は学生のみならず、周辺住民の公園にもなっている
渡り廊下
大学中心部にある建物は、このような渡り廊下でつながっている
協会
大学の中心部にある「スタンフォード記念教会(Stanford Memorial Church)」。1903年に設立されたもので、平日の日中時間帯(午前9時〜午後5時)は内部に入ることもできる(金曜日は午後1時以降は予約優先)。ガイドツアーを希望する場合は、毎週金曜日の午前11時に来るとよい
親子連れ
敷地内への出入は自由なため、休日はこのような親子連れもよく見かける

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