有力IT企業は“ガレージ”から始まった――「アメリカ西海岸」の“IT名所”を巡る(1/5 ページ)
米国の西海岸(太平洋側)というと、シリコンバレーを思い浮かべる人も多いと思う。シリコンバレーの発祥の地と言われるのが、Hewlett-Packard(現HP)の創業の地でもある「HP Garage」だ。Windowsを作る「Microsoft」の本社も、西海岸に本社を構える。これらの「IT名所」を訪問してみよう。
2002年から2009年まで、筆者は「シリコンバレー」として知られる米カリフォルニア州サンフランシスコ市(SF)近郊の「SFベイエリア」に在住していた。主な居住地はサンフランシスコ市内だが、会見やインタビューなどがあれば当該の企業がある現地まで赴き、取材して記事を書くという生活をしていた。
自動車は所持していなかったので、必要があればレンタカーを借り、公共交通で移動できる場所であればバスや列車、徒歩を駆使して移動するわけだが、SFのベイエリアはなかなかに広く、シリコンバレーの南端に当たるサンノゼ市まで車で1〜2時間、列車であれば片道2時間はかかる。技術系カンファレンスは早朝から始まることが多いため、日の出前の始発列車に乗り、取材が終わって家に帰り着くのは午後9時とかだったりする。
そして、取材とは別に現地在住者ならではの仕事(?)もある。それは日本からやってくる訪問者を連れて、SFベイエリアの名所を案内することだ。IT関連の仕事でやってくる知り合いが多いため、「名所巡り」といっても映画やドラマなどで有名なアルカトラズ島のツアーに連れて行ったりとかではなく、シリコンバレー内に点在する「ITの名所巡り」だ。
Appleを始めとする地元の有名IT企業から始まり、Oracleの象徴的な外観の本社であったり(現在本社はテキサス州に移転済み)、Intel博物館、コンピュータ歴史博物館――といった具合だ。企業によっては訪問や入り口の写真撮影が厳しく制限されており、同行者が写真撮影をしようとしてYahoo本社前で警備員に追いかけられた思い出もある。
そんな中、「シリコンバレーといえばここ!」ということでさんぜんと輝く名所が「HP Garage」だ。この記事では、HP Garageを始めとするシリコンバレーの名所を幾つか紹介したい。
シリコンバレーのIT企業の多くは「ガレージ」から始まった
「Birthplace of Silicon Valley(シリコンバレー誕生の地)」と銘打たれているように、今日シリコンバレーと呼ばれるハイテク企業の集積地としてのSFベイエリアの“全て”が始まった場所が、住宅街の中に存在する小さなガレージ、現在のHP Garageだ。
1939年、米スタンフォード大学の卒業生で同級生だったデビッド・パッカード(David Packard)氏とウィリアム・ヒューレット(William Hewlett)氏の2人は、このガレージで電気計測器メーカー「ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)」を創業した。同社はその後世界トップクラスのコンピュータメーカーとしても知られるようになり、2015年にクライアント機器をメインとする「HP」と、エンタープライズ機器をメインとする「Hewlett Packard Enterprise(HPE)」の2社に分社され現在に至っている。
「スタートアップ」あるいは「ベンチャー企業」という言葉が市民権を得て久しいが、HP/HPEの歴史は「小さく始めて、大きなビジネスに育てる」という、一種のアメリカンドリームを体現したものといえる。
「367 Addison Avenue」にあるHP Garageの母屋の中には、ヒューレット氏とパッカード氏のポートレートが写ったパンフレットが置かれている。なお、ビル(Bill)はウィリアム、デイブ(Dave)はデビッドの“あだ名”となる
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