Apple Intelligenceは「Copilot+ PC」や「Federated Learning」とは何が違う? 今後、デジタルデバイスの刷新が進むと考える理由:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
AppleのAIプラットフォーム「Apple Intelligence」が、まもなく日本語を含む多言語対応を開始する。それを前に、Apple Intelligenceの“真価”を改めてチェックしたい。
「プライベートなAI」が新たな価値観をもたらす
機密情報が社外のクラウドサービスに送信される――企業ユーザーにとって、このリスクは極めて深刻だ。ゆえに、ChatGPTのようなパブリックなクラウドAIの社内利用に制限を設けている企業もある。こうしたニーズに対して、企業向けのクラウドAIソリューションもいくつか提供されている。
しかし、社員個々の業務を効率化するためのソリューションとして、Apple Intelligenceのアプローチが生きるケースもあるだろう。機密性の高い金融機関や医療機関、知的財産を扱う研究開発部門などでは、使用するデバイスで安全に情報を扱いつつ、デバイスAIの恩恵を受けられる点は大きな訴求点となるはずだ。
もっとも、Apple製品の性質を考えるなら、個人ユーザーの日常生活を円滑にサポートしてくれる利便性が大きなポイントになるだろう。この場合、プライベートデータをどこまで活用できるかどうかが、利便性を向上させる上で大きなポイントとなる。
今後、スマートフォンやPCの多くがAIによって「新たな仕事のやり方」「コンピュータの使い方」を提案し、継続的に進化していくだろう。一方でデバイスに依存しないクラウドAIに着目すると、ネットの海から有益な情報を収集してまとめる「エージェント型サービス」の進化も著しい。これらのエージェントとプライベート情報を組み合わせた活用など、まだまだ広がる領域の余地は大きそうだ。
Appleの「プライバシーと利便性は両立しうる」というAI戦略が、昨今のAI業界全体のトレンドとどう交わっていくのか、今後にも期待したい。
「Apple Intelligence」がもたらす業界への波紋
Apple Intelligenceの取り組みは、まだ始まったばかりだ。今後数年間で機能が拡充されていき、私たちのデジタル体験は大きく変わっていくだろう。
だが、その意義はApple製品ユーザーの利便性向上にとどまらない。Appleの挑戦(ユニークで利便性も高いが成熟までには遠い)は、プライバシーを守りながらAIを活用するという新たなモデルケースを提示している。
これまでAI開発においては、「データ収集の量と質」が競争力の源泉とされてきた。しかし、AppleはApple Intelligenceを通して「ユーザーのプライベートデータを企業側が収集せずとも、別の角度、価値観から高度なAI体験を提供できる」ことを示している。
Googleもオンデバイス学習を活用する「Federated Learning(連合学習)」など、サーバにデータを送信せずにAIモデルの動作を変える仕組みを開発している。先述の通り、MicrosoftもCopilot+ PCにおけるオンデバイス処理の拡充を進めている。テック業界の巨人は「できるだけ多くのAI処理をオンデバイスでする」という意味で同じ方向を向いているのだ。
その点、Apple Intelligenceの“手法”が周知されると、ライバルはそれに対抗できるアイデアを見つけ出すに違いない。今後数年の競争の中で、デジタル端末は大きく刷新されていくことになるだろう。
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