パーツ交換でカスタムできるHyperXの軽量ゲーミングマウス「Pulsefire Saga Pro Wireless」と、75%キーボード「Alloy Rise 75 Wireless」を試す(3/4 ページ)
今回の両製品も、ゲームのみならず日常のPC操作で快適さと生産性向上に役立つポテンシャルを秘めている。その特徴と使い勝手を詳しく見ていこう。
16通りにカスタムできる「HyperX Pulsefire Saga Pro Wireless」
HyperX Pulsefire Saga Pro Wireless(以下、Saga Pro)は、HyperXが「最もカスタマイズ性の高いゲーミングマウス」と位置付けるワイヤレスマウスだ。価格は直販で1万8490円だ。
最大の特徴は複数のパーツが着脱可能なモジュラー構造を採用していること。交換用のパーツも付属しており、本体装着済みのパーツと、上面シェル(パームレスト部分)、左右のボタンカバー、サイドボタン2つの計4パーツを付け替えることで、形状を16通りにカスタマイズできる。全てのパーツがマグネットで固定されるため、用途や好みに応じて工具なしで気軽に交換して楽しめる。
交換用シェルはSTL形式とSTEP形式で3Dデータが公開されている。本体付属品の再現だけでなく、サムレスト付きのシェルや、本体形状に沿って内側をくり抜くためのモデルなどがあるので、3Dプリンタを使用すればとことんまでこだわったカスタマイズが可能だ。
ただ、このモジュール構造を採用した代償か、DPIスイッチは一般的なマウス上部ではなく、使いづらい底面に配置されている。ゲーム中にDPIを切り替える人はホイールボタンやサイドボタンに割り当てを変更するのがよいだろう。
DPIは200から26000まで50刻みで変更でき、最大5つのDPI設定を記憶させておくことができる。DPI切り替えボタンは順方向のローテーションのみで戻ることができないので、複数のDPIを行き来するような使い方のときは、高/低の2設定のみに絞るなど工夫をした方がよいかもしれない。
Saga Proの本体サイズは中型クラスだが、ハニカム構造のシャシーの採用などにより、複雑なモジュラー機構を備えながらも、重量はわずか約72gを実現している。
搭載するメインセンサーは最大2万6000DPIの高解像度に対応し、1インチ(2.54cm)で2万6000カウントもの読み取りが可能だ。極端な例を挙げれば、4K解像度のディスプレイ幅(3840ドット)をわずか約3.7mmの手首の動きでカーソルが移動できる計算になる。
さすがに実用的なレベルだとは言い難いが、センサーの精度の高さを示す指標といえるだろう。その細かさに加え、最大650IPS(毎秒650インチ=約16.5メートル)という高速な動きにも追従可能で、素早いスワイプ操作でも読み取りロストが起きにくい。
メインボタンにはHyperX光学スイッチを採用し、素早く正確なクリック検知を実現している。メカニカルスイッチで必要なデバウンス処理(チャタリングを防ぎ、一定時間クリック検出を無効化する処理)が光学スイッチでは不要なため、入力検知から信号送信までのレイテンシが短いおかげだ。
接続方式は2.4GHzワイヤレス(USBレシーバー)とBluetoothによるデュアルワイヤレス接続、それに有線USBケーブルでの接続も可能なトライモード仕様となる。
Rise75 Wirelessと異なり、Bluetoothで一度にペアリングできる機器は1台のみだ。2.4GHzワイヤレス接続時のポーリングレート(レポートレート)は標準で1000Hz(1ms間隔)だが、HyperX Ngenuityソフトウェアで設定を切り替えることで最大4000Hz(0.25ms間隔)の超高速レートにも対応する。
ワイヤレスによるバッテリー駆動時間は、公称値でポーリング1000Hz時に最大約90時間、4000Hz設定時でも約30時間は確保されており、長時間のゲームセッションでもバッテリー切れの心配は少ない。
なお、Saga ProはWindows PCだけでなく、USB接続や対応する無線経由でPlayStation 5やXbox Series X/Sといったゲーム機にも使用可能となっている。
Saga Proもワイヤレスとは思えない軽快な使い心地だ。まず約72gという超軽量と滑らかなマウスソールのおかげで、単純に長時間使用しても手首や腕が疲れにくい。
操作がない状態がしばらく続くとスリープ状態となる。Bluetoothの場合は復帰に1秒弱ほどかかるが、2.4GHzワイヤレスだと瞬時に復帰する。復帰が早いためか、2.4GHzワイヤレスの場合はわずか30秒でスリープ状態に入るようだ。
この細かな電力モードの制御も省電力に寄与しているのだろう。有線モデル「HyperX Pulsefire Saga」のメインボタン下に配置されていたLEDが省略されてホイール部のみになっているのも、電力消費を抑える狙いがあるのかもしれない。
センサー性能も非常に優秀だ。実際に段階的に設定を変えて動作を確認したが、どの感度においてもカーソルの挙動は終始安定している。加速や遅延にも癖はなく、思い通りの精密な操作が行える。
左右クリックの感触も非常に軽快で、交換可能なボタンカバーによる操作感の低下などは感じられなかった。接続方式によるレイテンシの違いはおおむねRise75 Wirelessと同様の傾向で、2.4GHzと有線はほぼ同等、Bluetoothは50ms程度の差が出た。もちろん、一般的なデスクワークで使用する分には気が付かないレベルだろう。
交換パーツについては面白いが、カジュアルユーザーは「どちらかに決めたらもう交換はしないかな」というのが正直なところだ。
マグネット固定でカシュッと収まる心地よさは高評価だが、交換パーツの違いは小さく、「こちらでなければダメだ」というほどの違いは(カジュアルユーザーである筆者にとっては)なかった。
また、3Dプリンタによるオリジナルシェルも魅力的ではあるものの、多数のモックを作成してミリ単位での使い心地を突き詰めるマウスメーカーに匹敵するレベルのことは個人では難しそうだ。
肉厚に作って、それをサンドペーパーで削って自分にぴったりに仕上げていくというやり方ならできるかもしれないが、その場合は超軽量というSaga Proの強みでは失われてしまうだろう。
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