「NASync DXP4800 Plus」は価格も手頃で初物にしては出来がよいNASだった 買い換えを検討中の筆者が実機を試して分かったこと(1/4 ページ)
スマートフォン向け周辺機器で知られる中国UGREENがNASをリリースする――そう聞いた時、筆者は「え、大丈夫なの?」と不安になった。しかし、実際に借りて使ってみると意外なことが分かった。
PCやスマートフォンの周辺機器メーカーとして知られるUGREENがNAS市場に新規参入する――そう聞いた時、筆者は少し“いぶかしんだ”目で見ていた。今まで主にスマートフォンでの利用を想定した充電器やバッテリーを作っていたメーカーが、OS開発も必要となるコンピュータでもあるNASを発売するというのだから。
しかし、そのスペックや機能は魅力的だった。米国におけるクラウドファンディングで注目を集めると、基本機能に磨きをかけて、米ラスベガスで開催された「CES 2025」にも出展。日本語への対応と日本市場への参入が発表された。評判も上々で、メインストリームとなる4ベイモデル「UGREEN NASync DXP4800 Plus」のクラウドファンディングは、日本円換算で累計10億円以上もの支援を集めたという。
セールスポイントは、スマートフォン用アプリを活用することでPCを使わない人やNAS初心者でも簡単に導入できる点にある。実機で評価してみると、確かに導入は簡単で、過去に使っていたどのNASよりも使いやすい。
しかし、このセールスポイントは本製品の“表層”を表しているに過ぎない。約1カ月間借りて使ってみたが、細かい使い勝手にはブラッシュアップが必要だと感じるものの、逐次行われるアップデートで少しずつ改善している。改善が進めば、PC向け周辺機器として古株となったNASに新しい流れをもたらす意欲作に化ける可能性も感じる。既存のNAS(NASキット)メーカーに刺激を与えうる存在にもなりうる。
今回は、DXP4800 Plusを使って感じたところを記していきたい。
UGREEN NASync DXP4800 Plusには、NASの新しい可能性を感じる。標準価格は9万9800円だ(ストレージは別売)。今回は、ウエスタンデジタル(WD)およびSanDiskのサーバ/NAS向けストレージ「WD Red」ブランドのHDDとSSDを組み合わせてレビューした
高性能なCPUを搭載 ネットワーク回りも高性能
UGREENは、中国・深センに拠点を置くスマホ/PC/タブレット周辺機器メーカーである。先述の通り、出自を考えると「NASを作る」と聞いた時に不安を感じたのは事実だ。
しかし、DXP4800 Plusのスペックはコンシューマー向けNASとしては魅力的だった。
CPUはIntelの「Pentium Gold 8505」を搭載する。このCPUはパフォーマンスコア(Pコア)1基と高効率コア(Eコア4基)の合計5コア6スレッド構成だ。CPUにはGPU((Intel UHD Graphics for 12th Gen Intel Processors))も内蔵している。第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)ファミリーのエントリーモデルではあるものの、コンシューマー向けの4ベイNASに搭載するものとしては性能が高い。
メモリはDDR5規格のSO-DIMMで、標準で8GBを備える。2基のスロットに32GBのモジュールを搭載すれば、最大64GBまで拡張できる。
ストレージは、4基のSerial ATA(SATA)ベイに加えて、PCI Express接続に対応するM.2スロット(Type2280)を2基備える。SATAベイは最大24TB、M.2スロットは最大8TBのストレージに対応しているため、最大で「24×4+8×2=112TB」という広大なストレージスペースを確保できる。どこまで拡張するかは、ユーザーの使い方次第だろう。
RAIDは0/1/5/6/10に対応しており、データ保護とパフォーマンスのバランスを取りやすい。M.2 SSDについては、ストレージではなくキャッシュとして使うことも可能だ。
ネットワーク接続は、10GBASE-T(10GbE)ポートと2.5GBASE-T(2.5GbE)ポートを1基ずつ搭載している。最近家庭でも普及しつつあるマルチギガビットネットワークへの備えも万全だ。2つのポートをまとめて1つの仮想ネットワークポートとして運用することもできる。
本体前面にはUSB 3.2 Gen 2規格のUSB Type-CポートとUSB Standard-Aポート、さらにSDメモリーカードリーダーを備える。また本体背面にはUSB 3.2 Gen 1 Standard-Aポート、USB 2.0 Standard-Aポート×2とHDMI出力ポートを備えている。
一人暮らしなどでコンパクトな生活空間を作っているなら、この製品をTVなどのディスプレイにつないでビデオプレーヤーとして運用したり、USB Audio規格に準拠したオーディオアダプターをつないで音楽プレーヤーとして運用したりすることも可能だ。
NASのスループット(実効性能)は、さまざまな要素に左右される。本機のようにハードウェア的にハイスペックなモデルの場合は「接続するネットワーク」と「ストレージの性能」がスループットに大きく影響するだろう。
今回は、ウエスタンデジタルとSanDiskからNAS向けストレージブランド「WD Red」のHDD/SSDを借りてレビューしている。HDDは25TBの「WD Red Pro」、SSDは4TBの「WD Red SN700」を利用したが、これらはNAS向けストレージとしては高速な部類だ。
一般的な1000BASE-T(1GbE)で構築されたネットワークなら、今回の構成においてネットワーク上限に張り付くようなパフォーマンスを発揮できる。2.5GbE環境でも同様だ。個人で“完全な”10GbE環境を構築している人は少ないかもしれないが、個人ユースであればネットワークの速度をシビアに計測する意味はない。
本機はコンシューマー向けの4ベイNASとしてはそこそこパワフルなCPUを備えている。システム負荷が高いRAID 6で構成したとしても、システムリソースを使い切るというシーンは想像しづらい。
……と、ここで改めて疑問が湧いてくる。コンシューマー向けのNASで、なぜここまで“高性能”にする必要があるのだろうか。
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